スタワゴ的にミニバンやSUVの歴史を振り返るこの企画。今号から、装いも新たに1車種集中講座で展開していくぞ。記念すべき第1回はSUV絶対王者のランクルだ。いよいよ250系正式発表も目前に迫り注目度は◎。70年以上の歴史を誇るトヨタのフラッグシップSUVを、前編・後編の2回に分けてご紹介します。
いまもマニアの間で人気が高い、1980年登場の60系
24年間にわたって世界中で愛された40系。その後を継いだのが、1984年に登場する「ナナマル」と呼ばれる70系ランクルだ。このモデル、日本では2004年に一旦販売が終了。昨年再導入されたが、海外ではその間も販売され続けていた。つまり40年にわたって現役なのだ。これはなにを意味するか?
変わることはある意味進化であり、重要なこと。一方で、変わらないことの意味を70系は教えてくれるのではないだろうか。
ランドクルーザーはきわめて過酷な条件下での使用を想定している。ガレ場、泥濘地、ジャングル、道なき道などだ。そんな条件下でも高い信頼性と走破性が求められ、ランドクルーザーというクルマはそれに応えてきた。だがあまりにも過酷ゆえ、ランクルでも壊れることがある。ある意味仕方がない。
そんなとき、修理することになるのは自明。整備性の高いクルマが求められ、さらに交換するパーツの入手も容易でなければならない。長く愛されるということはこういうことなのだ。
またランドクルーザーはこの頃から3タイプに分かれていく。ひとつがトヨタ・ジープから70系へと続く系譜である「ヘビーデューティ」。1967年のFJ55→60系→80系以降、現行の300系へと至る「ステーションワゴン」。そしてプラド系列の「ライトデューティ」。この3タイプとなる。
FJ55の後を継いで1980年には60系が登場。登場以来40年以上経過しているが、いまだにマニアの間で人気があり、高値で取引されている。このこともランクルがいかに普遍的人気があるのかを証明している。1989年にはさらに走破性と上級車志向を強めた80系(通称ハチマル)が登場。高級クロスカントリー4WDとしての性格に磨きがかかってきた。
さらに新しい価値観として加わったのがSUVだ。スポーツ・ユーティリティ・ビークルの略で、1980年代後半にアメリカで広まった言葉だ。SUVは北米で人気を呼び、それはヨーロッパへと飛び火。そのうち、ラダーフレーム構造を持たない、乗用車ベースのSUVが続々と登場する。駆動方式も4WDにこだわらないSUVが増えた。
ここがランドクルーザーと決定的に異なる点だ。ランクルはプラドであっても、頑丈なフレーム構造のたくましいボディを持つ。信頼性が高く圧倒的な悪路走破性の4WDを全モデルが採用している。上級車志向を高めてきたとはいえ、中身は極めて質実剛健だ。このあたりの塩梅がランクルが「陸の王者」と言われるゆえんである。
2000年代に入ると、クルマに新たな価値観が導入される。それは安全性と環境性能だ。もちろんランドクルーザーにもそのような要素が求められる。100系、200系と安全&環境面に配慮しながらランクルは進化を遂げてきた。
ランクルは世界中で販売され、累計販売台数は約1200万台にもなり、今や4WDの世界的なベンチマークと言える。
ヘビーデューティなイメージが強かった40系から脱却し、本格的なステーションワゴンを目指したモデル。フロントシートはベンチタイプから現在のようなセパレートタイプとし、バックドアも当初は観音開きだったのを上下開きタイプを追加している。エアコンやパワステも用意され、使いやすさは格段に向上。重厚感あふれるボディもあって、現在も根強い人気を誇るモデルだ。
1984年・70系ランドクルーザー
40直系の後継モデルといえるのが70系。ただしこちらも快適性をプラスしている点に注目だ。頑丈なフレーム構造と信頼性の高い4WDを継承しながら、操作性を大きく向上させるなど、一般ユーザーでも扱いやすくした。ショートボディのみだったが、1990年に5ドアロングボディを追加。そのワゴンモデルをプラドというサブネームを付けて、当時のヨンクブームに呼応した。
1989年・80系
ランドクルーザー
1989年・80系
ランドクルーザー
60系をさらに発展させ、より高級なSUVとして登場。ボディはさらに大きくなって全長は5m近い。インテリアの豪華さも増している。動力性能もバンの一部グレードを除いて4WDはフルタイムへと進化。ワゴンには4ℓガソリンエンジンを搭載し、1992年には215psの4.5ℓに変更した。トルクフルで街乗りも快適にこなしつつ、さらに過酷な使用にも耐えるタフさを併せ持つ。
1988年・100系
ランドクルーザー
1988年・100系
ランドクルーザー
80系からバージョンアップし、さらなるタフさと高級感を両立。現在の絶対王者的なイメージはここから始まったと言っていい。ワゴンは235psの4.7ℓV8エンジンを搭載。電子制御化されたフルタイム4WD、走破性と快適性を高めるAHC(アクティブ・ハイト・コントロール・サスペンション)、電子制御サスであるスカイフックTEMSなど、ハイテク装備を満載している点にも注目したい。
2007年・200系
ランドクルーザー
タフさを併せ持った最上級SUV路線を継承して、誕生したのが200系のランクル。伝統のフレーム構造はさらに強化され、288psまで高められた4.8ℓV8エンジンを搭載する。悪路で極低速を自動的に維持し、ドライバーがハンドル操作に集中できるクロールコントロールを世界初採用した。高級車と比べても遜色ない贅沢な車内など、陸の王者と呼ぶにふさわしい高級SUV。そのコンセプトは2021年に登場となった現行の300系に受け継がれている。約14年振りのフルモデルチェンジで一時は納車5年待ちというほどの人気っぷりだ。
復活! 再販されたナナマル
驚くべきことに70系ランクルは海外では今も現役。そのおかげもあって、2014年、国内でも70シリーズ生誕30周年を記念して期間限定で復活した。4ドアバンに加え、国内初のダブルキャブピックアップトラックも登場。すでに激レアだ。また250系の発表に併せて、70系の国内再販も決定。2023年11月から発売開始された。
ランドクルーザーもうひとつの系譜
70系から派生したのがプラドだ。弟分的な存在で、高級な車内と高い走破性を継承。このプラドは新しく発売される「250」に継承。「プラド」の名称は無くなっている。
1990年・70系
初代プラド
1985年、70系に3ドアワゴンが設定されるが、その後、1990年に5ドアロングボディを追加。これが初代プラドとなる。
1996年・90系
2代目プラド
独自の丸みを帯びた乗用車的スタイル。3ナンバーサイズに大型化したボディは、5人乗りのショートと8人乗りのロングを設定した。
2002年・120系
3代目プラド
先代同様3ドアショートと5ドアロングの2本立て。新設計の高剛性フレームやハイテク装備、内外装の高級感も大幅にアップした。
2009年・150系
4代目プラド
兄弟車のハイラックスサーフの消滅もあって、国内向けは5ドアロングのみとなった。高級感もあり、まさにランクルの弟分だ。
▷スタワゴ的名車ヒストリー「ランドクルーザー編」 まとめはこちら
STYLEWAGON(スタイルワゴン)5月号より
[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]
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