足まわりの基礎からローダウンまで、30系アルファード&ヴェルファイア【FOOTWORK基礎講座】

知っていればホイール選びやローダウンがより面白くなる! 構造解説付き、30系アルファード&ヴェルファイアの足まわり全解剖|サスペンション構造

アルファード&ヴェルファイアが30系になってもっとも大きく進化した部分ともいえるのがリアサスペンションの構造。30系の足まわりの基礎から、装着可能な足まわりアイテム、ローダウンするにあたって知っておきたい重要項目までをピックアップ。これから足まわりの変更を考えている人は要チェックだ!

#1 サスペンションの構造 NORMAL SUSPENSION

30系アルファード&ヴェルファイアは、写真のようにフロントがストラット式、リアは20系までのトーションビーム式からより乗り心地を重視したダブルウィッシュボーン式に変更された。フロントのストラット式サスペンションは、ショックとスプリングが一体式で、多くのクルマに採用されている形式。リアのダブルウィッシュボーン式は走行性や快適性を重視するクルマに採用されるサスペンションで、車内スペースを有効的に使うためショックとスプリングが別体式となっているが、アッパーアーム&ロアアームを備えた独立懸架(サスペンションそれぞれが独立して動く)タイプとなり、高級ミニバンにふさわしい乗り心地を確保している。このダブルウィッシュボーン式の採用によって、乗り心地がアップされたと同時に、ドレスアップ面でもアッパーアームの変更などによってホイールの上級セッティングに有効なキャンバーセッティングがやりやすくなっているのもうれしいニュースだ。

REAR ダブルウィッシュボーン式サスペンション

REAR画像
Aアッパーアーム
Bロアアーム
Dコイルスプリング
Eスタビライザー
先代のトーションビーム式に比べ構造は複雑になったが、その分、快適性、走行安定性がアップしていると定評のリアサス。これによりセカンド&サードシートの乗り心地も高められている。

FRONT ストラット式サスペンション

FRONT画像
Aロアアーム
Bショックアブソーバー
Cコイルスプリング
Dタイロッド
Eスタビライザー
Fスタビリンク
フロントはスプリングとショックが一体式になったストラット式サスペンションを採用。構造がシンプルでサイズがコンパクトなことから、多くの車種のフロントサスペンションに採用されている。

#2 ネガティブキャンバーについて NEGATIVE CAMBER

30系になってリアサスペンションがトーションビーム式からダブルウィッシュボーン式に変わったのは、ハイレベルな乗り心地や走行安定性を求めての変更なのだが、ダブルウィッシュボーンという左右独立で動くサスペンションになったことで、ローダウンするとリアタイヤ上部が内側に傾くネガティブキャンバー(ネガキャン)が付くようになり、ホイールセッティングの自由度もアップしている。ただしサスペンションがノーマルだとネガキャンは少ししか付かないが、キャンバー調整用のアッパーアームなどもリリースされているため、20系に比べキャンバー調整がしやすくなっている。フロントはストラット式なので調整式アッパーマウントが付いたサスペンションへの交換やショックの固定ネジ交換でのキャンバー調整が可能だ。

ノーマル車高
ノーマル車高画像

ローダウン時
ローダウン時画像

ノーマル車高時ホイールは地面から垂直に立っているのだが、ローダウンさせるとホイール上部がフェンダーの内側に入り込んで行き角度が付く。この角度をネガティブキャンバー(ネガキャン)と呼び、ホイールのツライチやツラ内などのギリギリセッティング時に威力を発揮する。写真はノーマルサスペンションでのリアの場合で、より角度を付ける場合はアーム類を交換することでさらに調整できる。

リア調整式アッパーアーム

リア調整式アッパーアーム画像
リアサスがダブルウィッシュボーン式になった30系では、リアサスのアッパーアームを純正と交換することで、リアにネガキャンを付けられる調整式のアッパーアームも用意されている。

タイヤ交換も含め足を触ったらアライメント調整をしよう

アライメントとはサスペンションとタイヤ(車輪)とのベストな位置関係のことで、これがローダウンなどサスペンションの交換時だけでなく、タイヤ&ホイールを交換した時や、縁石に乗り上げた時など、ちょっとしたことで狂ってしまうことが多いのだ。このアライメントが狂うと、直進性が悪くなったり、ハンドルがブレる、タイヤの偏摩耗が多くなるなど、クルマにとっては良くない状況となってしまう。そこで、タイヤを替えたり、ローダウンした時には、必ずアライメント調整をしてやろう。
ローダウン時画像
最近では写真のような専用のアライメント調整マシンを導入しているショップも多く、作業時間は約30分程度。料金はショップによって異なるが1万5000円〜2万円程度。

#3 フットワークメニュー FOOT WORK MENU

車高調整式サスペンション

車高調整式サスペンション画像
車高調整式サスペンション(通称・車高調)は、任意の高さにミリ単位で車高を調整できるサスペンションで、低いフォルムのまま走りたい人や、乗り心地や走行性能を重視する人向きの人気の高い足まわりだ。
予算:約10万円〜
参考商品:シルクブレイズ アジャスタブルショックアブソーバー
こんな人にオススメ
低い車高のまま走りたい
低い車高と乗り心地の両立を望む
スポーティにも走りたい

ショック&スプリングセット

ショック&スプリングセット画像
車種専用に開発されたショックとスプリングのセットで、スポーティな走りや快適な乗り心地と適度なローダウンフォルムを実現する。装着後の車高変更はできないので、下がり具合など事前にチェックしておくことが大切。
予算:約8万円〜
参考商品:TRD スポルティーボサスペンションセット
こんな人にオススメ
適度なローダウンでOK
スポーティな走りがしたい
車高調整機能は不要

ローダウンスプリング

ローダウンスプリング画像
純正のスプリングと交換するだけで3〜5㎝程度ローダウンが可能。価格も約3万円〜とリーズナブルなので、手軽にノーマルよりちょっとカッコよくしたい人向き。
予算:約3万円〜
参考商品:サステック DF210
こんな人にオススメ
出費を抑えたい
軽いローダウンでOK
車高調整機能は不要

ボディ補強パーツ

空間の広い構造上、どうしても剛性の低くなりがちなボディを補強してやり、ボディのネジれを少なくすることで、コーナリング性能やステアリングレスポンスのアップを図るアンダーブレースなどのアイテム。
ボディ補強パーツ画像
予算:約2万円〜
参考商品:クスコ パワーブレース
こんな人にオススメ
多人数乗車が多い
カーブをスムーズに走りたい
ミニバンのフワフワした感じが嫌い

ジオメトリーパーツ

ローダウンによって変化してしまったサスペンションの位置を補正し、サスペンション本来の動きを取り戻すことで、快適な走行性能を取り戻すアイテム。サスペンションアームの角度補正などがある。
ジオメトリーパーツ画像
予算:約3万円〜
参考商品:ゲンブ RCジョイント
こんな人にオススメ
低い車高のまま走りたい
車高を下げたら乗り心地が最悪
車高を下げたらタイヤのグリップが落ちた

エアサス

スイッチひとつで地面スレスレのベタベタ車高からノーマル車高まで自由自在に変化できるのがエアサス。魅力的なアイテムだが、価格がアップするのがネック。究極のローフォルムを求める人向き。
エアサス画像
予算:約40万円〜
参考商品:イデアル エキスパート
こんな人にオススメ
低い車高を極めたい
車高を自由に変化させたい
実用性も重視する

#4 ローダウンによる乗り心地の悪化を改善する

ヴェル&アルに限らず通常クルマのサスペンションはノーマル車高時に正常に作動するようにセッティングされている。ローダウンすると、サスペンションのアーム類の角度や位置関係(ジオメトリー)が狂ってしまい、アーム類の動きにムリが生じることから、乗り心地が悪化すると言われている。そこで登場するのが、ローダウンによって適正値からズレてしまったアーム類の角度などを修正して、快適な乗り心地を取り戻そうとするジオメトリーパーツと呼ばれるアイテム。30系ヴェル&アル用としては、フロントのロアアーム角、タイロッド角、スタビライザー角を修正するパーツがある。快適な走りをキープしたいのであれば、極端なローダウンはせず、減衰力調整式のショックやジオメトリーパーツを使ってうまくセッティングすれば、見た目のカッコ良さと快適な乗り心地をバランスさせることは可能。そのあたりのセッティングは足まわりに強いショップで相談しながら煮詰めていくのがベストだ。

ローダウンによるアーム類の変化

イラスト画像
イラスト右がダブルウィッシュボーン式のノーマル車高状態、左がローダウン状態。ローダウンすると車高が下がった分、上下アームやスタビライザーにも角度が付くため、サスペンションが本来の動きをとりづらくなる。この角度をノーマルに近い状態に戻してやるためのパーツがジオメトリーパーツだ。

乗り心地を改善するためのジオメトリーパーツ

アジャスタブル スタビリンク
アジャスタブル スタビリンク フロント用画像
アジャスタブル スタビリンク リア用画像
ローダウンによってスタビライザー取り付け位置が持ち上げられ、本来の性能を発揮できなくなっている状態の時、リンクを調整式に変えてやることで、スタビライザー本来の動きを取り戻すパーツ。スタビライザーが本来の動きをすることで、サスペンションもよく動くようになり、ロールを抑え、快適な乗り心地を取り戻せる。写真上がフロント用、下がリア用。

RCジョイント
RCジョイント画像
ローダウンによってロアアームが本来の角度よりも上に持ち上げられた状態になることで起きる乗り心地悪化の原因であるロールセンターの狂いを修正するパーツ。ロアアーム先端部分のパーツを交換することで、ロールセンターの狂いを修正すると同時にサスペンション本来の動きを取り戻し、快適な乗り心地を取り戻す。

バンプアジャスト タイロッドエンド
バンプアジャスト タイロッドエンド画像
ステアリングと直結するタイロッドエンドもローダウンによって本来の角度よりも上に持ち上げられた状態になる。この持ち上げられた状態だと、サスペンションがストロークした時にトー角が極端に変化し直進性が悪化する。これを角度調整式のタイロッドエンドで修正してやれば、ステアリング特性もダイレクトになり、軽快なフットワークを取り戻せる。

タイヤサイズでも乗り心地は変わる!

17インチ
17インチ画像

22インチ
22インチ画像
写真上は17インチ60偏平、下は22インチ30偏平。偏平率はタイヤのサイドウォールの厚みの違いで、タイヤサイドが厚いほどタイヤ内部の空気量(エアクッション)が多くなるのでクッション性が高い。乗り心地を重視するなら偏平率の数値の大きいもの(30よりは35や40など)を選ぶ方が快適性がアップするので、タイヤを選ぶ時は、そのあたりも考慮して選ぶようにしたい。

30系アルファード&ヴェルファイア フットワーク Q&A

Q:乗車人数や荷物の量で乗り心地は変わる?
A:変わる。ヴェル&アルは、最大8人乗りも設定しているので、フル乗車状態でもサスペンションがきちんと働くように設定されている。つまり8人乗車でもショックが底付きしないような設定となっているはずなので、当然ながら1〜2人乗車時には、多少硬く感じる可能性はある。また、1〜2人乗車と8人フル乗車では、サスペンションへの負荷のかかり方も変わるので、乗り心地が変化するのはそのため。
乗車人数や荷物の量で乗り心地は変わる?画像

Q:ローダウンしたらロールが大きくなったのはなぜ?
A:上でも紹介しているが、ローダウンするとサスペンションのアーム類とともに、スタビライザーの取り付け位置も変化し、スタビライザー本来の働きをしなくなる(ロールを抑えられなくなる)ことがある。そのため長さ調整式のリンクを使ってスタビライザーの取り付け位置を元に戻してやれば、スタビライザー本来の働きをしてくれる。
ローダウンしたらロールが大きくなったのはなぜ?画像

Q:ローダウンしても車検は大丈夫?
A:ローダウンによる車高の変化は最低地上高とクルマの全高の2つがポイントとなる。最低地上高は10㎝以上あることが絶対条件。全高の変化は個体差を含めて±4㎝まではOKだが、4㎝以上変わるとNG(構造変更が必要になる)。
ローダウンしても車検は大丈夫?画像

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