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走行可能距離を左右するバッテリー容量
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EVの車両諸元で、電池容量という項目があります。単位はkWh(キロワットアワー)での表示です。例えば、日産リーフでは標準モデルが40kWhで、ハイグレードの「e+」が60kWhとなっています。ガソリン車で例えるならば、ガソリンタンク容量に相当します。電池容量が大きいほど、満充電での航続距離が長くなります。40kWhに対する60kWhでは、単純計算では航続距離は1.5倍になりますし、同じ出力の充電器を使えば満充電までの時間も1.5倍かかります。ここがガソリン車やハイブリッド車との大きな違いです。ガソリン車はタンク容量が1.5倍になっても、そもそも給油時間が数分なのでさほど長く感じません。それがEVの場合、普通充電ならば数時間に及んでしまいます。
充電時間は、電池容量(kWh)を出力(kW)で割ることで分かります。電気容量40kWhを出力10kWで充電すると4時間かかるということです。そのため、電池容量が100kWh級の大きな上級EVは高出力の急速充電が必要になるのです。
km/Lに対してのWh/km
燃費は1Lあたり何㎞走れるかとして「km/L」なのに対して、電費は1km走るのに何Wh必要かとして「Wh/km」です。こうした効率に対する根本的な違いは、気象や走り方、そしてエアコンなど使用状況による差が大きいことが関係していると考えられます。欧米や日本の運輸関連の研究所や関係省庁などが協議した結果、多くの人が電費を実感しやすくするために考案された基準です。
一充電走行距離とは?
EVの電費は交流電力量消費率で表示することが自動車メーカーに対し義務付けられています。日産アリアB6(2WD)が166Wh/㎞、バッテリーの電気容量が66kWhということは、66kWh(66000Wh) ÷166Whで航続可能距離は397kmという単純計算になります。しかしカタログでの航続距離は470kmと少し増えています。これは、エアコンなどの利用によるエネルギー損失や、回生ブレーキによるエネルギー補足などを考慮したテスト数値です。
軽BEVの充電について
急速充電の場合、満充電の80%を目途に充電速度を弱めるような仕組みがあります。リチウムイオン二次電池の特性と安全性を踏まえた対応方法です。そうなると、電池容量が少ないEVの場合、少ないのだからパンパンに充電したいと思っても、やはり80%がひとつの目途になります。日産「サクラ」や三菱「eKクロスEV」は、電池容量が20kWh。その80%だと16kWhとかなり限定的な数値です。だから、自宅でじっくり充電がお勧めなのです。
バッテリーの寿命と劣化、その1
EVの電池もスマホの電池のようにドンドン消耗していくのでしょうか。答えはYESですが、スマホの電池と比べると消耗、つまり劣化の速度はかなり緩やかです。EVもスマホもリチウムイオン二次電池を採用していますが、EVはスマホに比べて電池搭載量が大きく、また電池の消耗に対して重要な温度管理についてキメの細かい制御を施しています。特に最新のEVでは、寒い時には電池の温度を上げ、暑い時には冷却する仕組みを装備しています。
バッテリーの寿命と劣化、その2
EVに搭載しているリチウムイオン電池の劣化について、2010年代に発売されたモデルでは使用条件によりかなり劣化する場合もありました。最新EVでは10年利用しても新車時の8割から9割近い容量維持率を実現しているモデルも出てきています。それでも、トヨタはbZ4Xに関する技術資料の中で「お客様の使用環境(気象や渋滞等)や運転方法(急発進、エアコン使用等)に応じて容量維持率は低下する場合もあります」と補足説明しています。
交流電力量消費率って何?
電費(でんぴ)という言葉。ガソリン車やハイブリッド車での燃費に対して、こうした表現を使います。電費を数値で表したのが交流電力量消費率です。例えば日産アリアB6(2WD)の場合、国際基準のWLTCモードで166Wh/kmです。1km走行するのに使う電気量を示しています。ガソリン車と同じく走行状態によっても当然変化しますので、市街地モードで159Wh/km、郊外モードで170Wh/㎞、また高速道路モードで176Wh/㎞となります。
kWhという単位
これまでの自動車の話ではユーザーが気にしてこなかった電気の単位が、EVの場合には色々出てきます。電池容量で用いられる、kWh(キロワットアワー)という単位。出力(kW)で何時間(h)充電するのかという考え方に基づきます。同じ出力でも時間数によって蓄えられる電気の容量が変わるということです。また、出力(kW)は、電圧(V)×電流(A)によって算出されます。その他、kWのk(キロ)は、kgやkmとおなじ1000を表します。
クルマの性能で充電速度が違う?
充電の速度は、EV側と充電器側がお互いに通信しながら決めます。つまり、お互いのソフトウエアを通じて情報をやり取りする仕組みです。そうしたベースがある上で、EV側のソフトウエアは自動車メーカーによって当然、違いがあります。電池に対する充電での負荷を最小限にして、安全性と耐久性を持たせる考え方が、自動車メーカーによって違うからです。また、モデルによっても設計思想の中で充電の制御が変わることも考えられます。
ある一定まで充電すると充電速度は鈍化する?
EVのカタログを見ると「満充電の80%までの充電時間」という表現が出てくることがあります。これは、現時点で量産されているリチウムイオン電池の特性を考慮したものです。満充電の80%までは急速充電器で一気に充電ができるのですが、80%から残り20%までは充電速度がかなり緩やかになります。そうした電池が持つ本来の性質を踏まえて、さらに安全性を考慮した形で、充電速度をソフトウエアで制御しているということになります。
テスラなどの個別充電方式
テスラは独自にスーパーチャージャーという充電網を日本国内や世界各地で展開しています。こうした自動車メーカーやブランドが独自に展開する充電インフラは極めて珍しい存在です。世界的に見て現状で急速充電方式は、日本が主導するCHAdeMO、欧米主導のCCS、中国が主導するGB/T、そしてテスラのスーパーチャージャーという4つ巴の状態です。テスラはこうした各地の充電方式に対してアダプターを使った対応をしているのが特徴です。
著者PROFILE●桃田健史
1962年8月、東京生まれ。日米を拠点に、世界自動車産業をメインに取材執筆活動を行う。インディカー、NASCARなどレーシングドライバーとしての経歴を活かし、レース番組の解説及び海外モーターショーなどのテレビ解説も務める。日本自動車ジャーナリスト協会会員。
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[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]