日本国内では、人気の「モデル3」に次いで 「モデルY」のデリバリーもスタート! 乗用BEVの先駆け、TESLAについてもっと知りたい!

2003年創業、その社名は発明家「ニコラス・テスラ」に由来 、BEVの先鞭つけたTESLA(テスラ)の全容を紐解く!  #そこが知りたいEVのことPART8

BEV専業メーカーのTESLAは、イーロン・マスク氏の下、独自のクルマ作りやユニークな販売スタイルで話題を集めている。BEVを取り上げて8回目となる今回は、改めて乗用BEVの先駆けとなったテスラに注目する。

そこが知りたいEVのことまとめはこちら

TESRAって一体どんな企業なの?

まさか、TELSLAがここまで急成長するとはまったく予想できなかった」。そんな声が、自動車業界の中で数多く聞かれます。また、テレビや経済系ネットニュースではTELSLAのCEO(最高経営責任者)であるイーロン・マスク氏を自動車産業のみならず、IT業界を含めた“時代の寵児”として扱うことも少なくありません。一体、TELSLAとはどういった企業なのでしょうか? 筆者は、TELSLAが誕生した2003年からこれまで、TELSLAを世界各国で定常的に取材してきました。こうした経験から言えるのは「TELSLAはけっして、特別な企業ではない」という点です。

それでもTELSLAが、IT業界でよく使われる「スケール(事業が急激に成長する様)」した背景には、さまざまなチャンスがあったと思います。ひとつは、大手自動車メーカーや大手電気メーカーの多くが、BEVの早期普及に懐疑的だったということです。

2010年代に入ってからも「現在の技術ではユーザーの利便性を十分に確保できるBEVを、多くのユーザーの手に届く価格で提供し、またしっかりと整備を続けることは、当分の間は難しい」という経営判断をしていた大手企業が数多くありました。

実はTELSLAも、創業間もない頃はそうした技術的なハードルに直面し、当時は唯一の量産車だった「ロードスター」の生産台数はかなり限定的でした。当時の社屋は米西海岸シリコンバレーの一角にある、旧GMオールズモビルのディーラーの居抜き物件を間借りした小規模な企業に過ぎませんでした。

そもそもTELSLAは、EVの普及を夢見たふたりのエンジニアが創業し、イーロン・マスク氏は、スタンフォード大学の学生時代にオンライン課金システムである「ペイパル」を立ち上げ、そこで得た資金をTELSLAに投資する立場でした。

イーロン・マスク氏がCEOに、TESLAの快進撃がスタート

それが2000年後半、事業不振から何度かTESLAのCEOが入れ替わり、最終的にマスク氏がCEOとして経営の先頭に立つことになります。ここでTESLAに神風が吹きます。当時のオバマ政権が重要政策として推進した、グリーンニューディール政策に関連して、米エネルギー省が実施した大型の補助金を得ます。これは、アメリカ国内で次世代自動車関連の製造を行う場合、償還期間10年の低利子融資です。

これを機にTESLAは独メルセデスベンツやトヨタとの関係を深めていきます。

製造工場については、トヨタが90年代に米GMと合弁で立ち上げた北カリフォルニア州内工場を米政府の補助金を元手に買い上げました。こうして、やっとビジネスの基盤が出来たTESLAでしたが、自社100%製造モデル第1号となる「モデルS」量産に向けては、部品調達や生産設備の最適化などの面でハードルは高く、ビジネスが軌道に乗ったのは2010年代半ば過ぎとかなり遅れたのが実状です。

それでもマスク氏は社内外に向けて、TESLAはあらゆる面で自動車分野で新しい挑戦を行うという夢を語ります。

モデルSに次いで「モデルX」、さらにエントリーモデルの「モデル3」と商品ラインアップが増えるにつれて、TESLAの企業方針に賛同するファンが世界で拡大していきました。

さらに、TESLAにまたも神風が吹きます。2010年代後半からグローバルで急拡大している、ESG投資がその背景です。従来の財務状況に応じた経営に対してではなく、E(エンバイロンメント:環境)、S(ソーシャル:社会性)、G(ガバナンス:企業統治)を加味した投資を指します。

こうした株式市場での劇的な変化により、TESLAの株価は急上昇。生産台数世界一のトヨタを大きく超えてしまうまでに資産価値が急騰。ただし、欧州を中心に大手メーカー各社のBEVシフトが鮮明となってきた今、これまでのようにTESLAが独り勝ちを続けるのは難しいと思います。

それでも、マスク氏が語るさらなる夢が実現されれば、TESLAブランドはより強固なものになるのではないでしょうか。

自動運転技術

TESLAのオートパイロットは、いわゆる自動運転技術を活用した高度な運転支援システムです。運転中にハンドルから手を放しても走行可能など、近年の自動運転技術はかなり進歩してきました。もちろん、自動運転技術はTESLAだけではなく、日産のプロパイロットや、トヨタのセーフティセンス、スバルのアイサイトなど、さまざまな技術革新によって量産化されています。それぞれのシステムには特長がありますが、概ね同じなのは、位置情報とクルマ側で行うセンシングをマッチングさせることです。位置情報については、カーナビゲーションやスマートフォンでも活用されている、GPSなどの衛星測位を使います。そして、クルマ側ではカメラやレーザー、そしてライダーと呼ばれる機器等を複合的に使います。そのうえで、キモとなるのがカメラの画像認識システムです。テスラの場合、カメラなど機器のコストパフォーマンスを最大限に活用する独自システムを搭載しているとされています。

走るモバイル

テスラの車内に入った瞬間、「なんだか、普通のクルマと違うみたいだ」と感じる人が少なくないでしょう。ダッシュボードの大型タッチパネルでさまざまな操作をこなすことができるからです。これは、単なるインテリアデザインという考え方を超えており、クルマそのものの概念を変えようというテスラの思想の現れだと感じます。

簡単に表現すれば、クルマを走るモバイル(スマートフォンのような通信機器)として捉えているのです。これは通信によるコネクテッド技術が発展することで、クルマがクラウドを介して外部とデータのやり取りをすることを意味します。具体的にはハンドル・アクセル・ブレーキなどの操作の状況、エンジンまたはモーターの駆動状態、さらにはラジオ、音楽、映像、そしてSNSなどの車内エンターテインメントなど、個人情報保護を十分に加味した個人データも含みます。TESLAの思想によって、今後さらに高度なモバイルサービスが実現するかもしれません。

充電インフラ

TESLAでは、スーパーチャージャーという独自の充電インフラを展開しています。これは、BEVとしては極めて珍しい存在です。TESLAと同じくBEVの市場拡大の可能性に早くから着目し、「リーフ」を世界的に販売してきた日産、また欧州大手ではメルセデス・ベンツやVWグループなどBEVシフトを強く打ち出しているメーカーでも、独自に充電インフラを整備するという戦略を打っていないからです。BEVと充電インフラとの関係は「鶏と卵」と言われ、相互に支え合っていくことがBEV普及のための必要条件だと言われてきました。それでも、TELSA以外の自動車メーカーのほとんどが、「充電インフラは社会インフラ」という建前から、東京電力など大手電力企業や、充電インフラ専門企業に充電機器の開発や設置を委ねてきました。現在、日本を中心にCHAdeMo(チャデモ方式)、欧米ではCCS(コンボコネクター方式)、中国ではGB/T方式があり、TESLAはこれらに対してアダプターを介して充電可能としています。

OTA

クルマを走るモバイルとして考える場合、気になるのがOTAです。これは、オン・ザ・エアーの略称で、通信によってソフトウエアを書き換える機能のことです。スマートフォンの場合、システム事業者から「ソフトウエアのアップデート」を勧めてくることがあります。ユーザーは、それに同意をすると数十秒から数分間でソフトウエアが最新バージョンに書き換えられる経験をしたことがあるでしょう。これをクルマのソフトウエアでも採用しようという考え方を、自動車業界ではOTAと呼びます。一般的なクルマの場合、ソフトウエアの書き換えは、販売店の整備工場内で専用機器、またはSDカードなどの媒体を使って行ってきました。OTAを採用する議論はかなり以前からあったのですが、サイバーセキュリティ対策などを考慮して、大手メーカーはOTAになかなか踏み出せませんでした。それをTESLAはサイバーセキュリティ体側を講じた上で、大手メーカーに先んじてOTAを導入しています。

著者PROFILE●桃田健史
1962年8月、東京生まれ。日米を拠点に、世界自動車産業をメインに取材執筆活動を行う。インディカー、NASCARなどレーシングドライバーとしての経歴を活かし、レース番組の解説及び海外モーターショーなどのテレビ解説も務める。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

そこが知りたいEVのことまとめはこちら

[スタイルワゴン・ドレスアップナビヒェんSYUUBU]

著者プロフィール

stylewagon 近影

stylewagon