トヨタのクリーンエネルギー戦略ってどんなコト? 代表的なクルマで紐解いてみた!

BEV/PHEV/FCVについて、トヨタの電動化モデルシリーズを総点検  #そこが知りたいEVのこと PART9(2)

長くハイブリッドを中心に展開してきたトヨタは、2022年5月にbZ4Xを投入しBEV市場に参入。一方、日産は早くからリーフを市場へと送り出し国産乗用BEVをリードしてきた。そんな両社の動向をチェックし、日本のBEVのこれからを考察します。

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【BEV】bZ4X

トヨタが掲げるBEV戦略のベースとなるのが、bZ(ビージィ)シリーズです。2019年12月のBEV事業戦略に対するトヨタの発表会では、セダン、SUV、クロスオーバーなど5種類のbZシリーズモデルがコンセプトモデルとして一気に公開されました。そのうち、量産計画が正式発表されていたのが「bZ4X」です。製品コンセプトは、アクティビティ・ハブと名付けられました。ボディサイズは全長4690㎜×全幅1860㎜×全高1650㎜、そしてホイールベースが2850㎜。駆動方式はFWD(前輪駆動)をベースに4WDの設定もあります。車体は、トヨタがガソリン車やハイブリッド車で構築してきた、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)の考え方をBEVに応用した、e-TNGAを初採用。モーターは、FFの場合は最大出力150kW・最大トルクが266Nm。4WDでは前後それぞれが80kW・169Nmとしています。停止状態から時速100kmまでの加速性能は、FWDで7.5秒、4WDでは6.9秒とスポーツカー並みの俊足です。

電池パックの容量は71.4kWhで、普通充電の場合、電圧200V・電流30Aの出力6kWだと満充電まで約12時間。また、急速充電では最大150kWまで対応する設計を施しています。

実際の乗り味ですが、4WDで一般道や高速道路での長距離移動をしてみたところ、静粛性の高さや出足の良さはもちろんのこと、ワインディング路では旋回性が高く、とても扱いやすい印象を受けました。価格は4WDで650万円、FWDで600万円ですが、日本では当面、サブスクリプションモデルのKINTOのみでの提供となります。

【PHEV】RAV4 PHEV

bZシリーズの開発が進む中、プラグインハイブリッド車もラインアップしています。売れ筋SUV「RAV4」の製品イメージが、先代までの都会派から今回はアウトドアへと変貌したことをきっかけに、PHVも設定しました。トヨタではプラグインハイブリッド車のモデル名称を、三菱や欧州車のようなPHEVではなく、PHVとこれまで表記していました。プラットフォームは通常のRAV4と共有。駆動方式は、前輪に排気量2.5Lの直列4気筒ガソリンエンジンとハイブリッドシステムを搭載し、また後輪をモーター駆動させるE-Fourとしています。搭載する電池パックの容量は18.1kWh。EVモードでの航続距離は95kmで、国際基準の燃費計測方法WLTCモードでの燃費はリッターあたり22.2km。価格はエントリーモデルのGグレードを469万円に設定しています。トヨタとしては、プリウスPHVで培った電動化技術をよりボディサイズが大きく、ユーザー層が各年代で幅広いRAV4に採用することで、PHEVの存在価値を高める狙いがあるように思えます。

【FCV】MIRAI

2代目となった燃料電池車「MIRAI」。2014年後半に登場した初代モデルと比べ、クラウンやレクサスのような上質感を備えた高級車に生まれ変わりました。燃料電池本体の燃料電池スタック、また水素を貯める高圧タンクなど主要部品をトヨタ自社で開発し、初代モデルの実走行データを基に改良を加えています。実際に走行させると、燃料電池車という特殊なクルマという感覚ではなく、高級BEVといった走り味があります。そもそも、燃料電池車は水素を使って自車発電するEVで、こうした走行感は当然だと言えるでしょう。水素の充填時間は約3分間で、上級グレードでの航続距離850km。水素ステーションの整備は2015年以降、国の政策が着実に進んでいるものの、現在国内で新車購入できる燃料電池車はMIRAIの他、韓国ヒョンデのみです。ホンダが2040年までに新車100%をBEVまたは燃料電池車にすると宣言しており、ホンダを含めさまざまな燃料電池車が市場に登場することを期待したいと思います。

著者PROFILE●桃田健史
1962年8月、東京生まれ。日米を拠点に、世界自動車産業をメインに取材執筆活動を行う。インディカー、NASCARなどレーシングドライバーとしての経歴を活かし、レース番組の解説及び海外モーターショーなどのテレビ解説も務める。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

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[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]

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