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童夢の新しい動きからカーボン(CFRP)の新潮流を読む 童夢は少量試作品を高レベルでスピーディに開発製作できる体制へ

  • 2019/03/03
  • Motor Fan illustrated編集部
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滋賀県米原にある童夢の社屋

CFRP(カーボンファイバー強化プラスチック)は、オートクレーブ、RTM、PCM、SMCなどさまざまな工法が開発、実用化されている。しかし、カーボン=高コストという図式は崩せず、なかなか一般的な素材とはなっていない。レーシングカーコンストラクターとして有名な童夢は、高レベルなCFRP製品の開発・製造ができる会社だが、ここ数年、カーボンへの取り組み方を変えてきた。そこには、CFRPを巡る業界の流れが垣間見える。童夢の新しい動きから、CFRPの新潮流を探ってみる。

TEXT◎大串 信(OGUSHI Makoto)PHOTO◎童夢(DOME)

童夢の新しい動き

 童夢が、新しい動きを見せている。童夢は、古くは伝説のオリジナル・スーパーカーである童夢零を開発してスーパーカーブームを牽引し、その後はル・マン用スポーツプロトタイプカーやホンダ系SUPER GT GT500など先端のレーシングカーを開発する日本のトップレーシングカーコンストラクターとして活動、さまざまな話題を振りまいてきた。
 レーシングカー開発の過程では、カーボンファイバー工作を通し技術を蓄積し、童夢は国内におけるカーボンファイバー強化プラスチック(CFRP)及びコンポジット成形加工業者の草分けとして国内屈指の企業に成長した。子会社として設立した童夢カーボンマジックでは航空機をはじめとする各種CFRP製品の開発・製造を手がけ、関連事業を拡大した。
 しかし創業者の林みのるは、2013年に童夢カーボンマジックを株式会社東レへ売却すると、15年には童夢本体の株式も新オーナーへ譲渡、第一線を退いた。以降、童夢は米原駅近くに社屋を移転し、髙橋社長率いる新体制で活動してきた。

CFRP製品自社製造施設の建設

オートクレーブの搬入時の様子。手前の一角が増築部分。シャッターのある一角は、これまでオープンエアのトレーラーヤードを作業場所として改築した部分

 新しい童夢の社屋には、設計室と必要最小限の作業スペースがあるのみで、新体制の業務は旧体制と同じ形ではなく、ある意味これまで蓄積した技術的ノウハウを活用する頭脳集団として活動する意向を見せていた。
 2016年5月の新社屋完成式典では席上、髙橋社長はCFRP事業について、台湾に大規模な量産工場を持つKCMGコンポジットインターナショナルとの業務提携を発表、製品の製造はKCMGが担当し、童夢は技術開発パートナーとして設計・エンジニアリング、及び日本含むアジア全般における営業拠点としての機能を担うと発表した。以降の童夢は、旧体制下で開発されたSUPER GT GT300用マザーシャシーや、FIA-F4用童夢F110の熟成及びユーザーサポートは行ないながら、各種の受託業務を進めてきた。
 ところが2018年半ば、突然社屋の増築工事が始まると、既存の社屋にも改築工事が加えられ、2019年の今年になって竣工した。今回行なわれた工事による延床面積は785.73㎡に及んだ。工事は新たにCFRP製造部門を設けるために行なわれた。新工場には2m級のオートクレーブや最新の大型NC工作機が搬入され、作業室や塗装室など一連のCFRP製品製造工程がすべて設けられた。つまり、これまでKCMGに委託していたCFRP製品の製造を再び童夢自身で行なう用意が整えられたのだ。
 これにともない、KCMGとの提携関係は見直されることになる。髙橋社長によれば、海外にあるKCMGと国境を越えた技術と製品のやりとりに障壁があったという。炭素繊維製品は安全保障に関連した貿易管理の対象となる品目で提携関係があるとはいえ円滑なやりとりが難しかったようだ。また、KCMGは自動車や航空宇宙分野でCFRP製品の「量産」を指向しており、品質にこだわる童夢の望む関係を確立できなかったという面も否定できない。

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