アンモニア(NH3)は、炭素(C)を含まないことから、燃焼時にCO2を排出しない燃料として、既存発電設備で利用することが可能。また、肥料や化学製品の原料として既に広く利用されており、製造・輸送・貯蔵といった供給インフラ構築のノウハウが蓄積されていることから、早期に社会実装が可能で、カーボンニュートラルの実現に向けた有望なエネルギーと期待されている。
このたび採択された事業では、ガスタービンコジェネレーションシステム(*2)から温室効果ガス削減に向けて、2MW級ガスタービンにおいて液体アンモニア専焼(100%)技術を開発するとともに、実証試験を通じた運用ノウハウの取得や安全対策等の検証を行い、早期社会実装を図るもの。また、発電事業におけるアンモニア利用の課題、適用性についてフィージビリティスタディを行い、社会実装の確度をさらに高めていく。事業期間は2021年度から2027年度までの約7年間。
液体アンモニアを燃焼器内に直接噴霧して燃焼させるガスタービンは、貯蔵タンクからガスタービンまでの供給システムの簡素化や制御性向上など、社会実装に向けた利点を有する。一方で、液体アンモニアは、天然ガスやアンモニアガスよりも燃焼性が低いため、液体アンモニア専燃では火炎の安定化と排ガス中の有害物質の低減が課題。液体アンモニア専燃ガスタービンの研究開発では、これらの課題を解決する燃焼技術の開発を実施する。
(*1) グリーンイノベーション基金事業:
「2050年カーボンニュートラル」に向けてエネルギー・産業部門の構造転換や,大胆な投資によるイノベーションといった現行の取組を大幅に加速するため、NEDOに2兆円の基金を造成し、官民で野心的かつ具体的な目標を共有した上で、これに経営課題として取り組む企業等に対して、最長10年間、研究開発・実証から社会実装までを継続して支援する基金制度。グリーン成長戦略において実行計画を策定している重点14分野を中心に支援が行われる。
(*2) ガスタービンコジェネレーションシステム:
燃料を利用してガスタービンで発電し、その際に発生する廃熱も同時に回収するコジェネレーション(熱電併給)システム。回収した廃熱は蒸気等で利用される。