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川島礼二郎の海外技術情報

美しくシンプルなインテリアデザイン

『VISION EQXX』では従来のデザインアプローチとは異なり、インテリアレイアウトは、わずか数個のモジュールと軽量デザインの美しくシンプルさに焦点を置いた。複雑な形状がなく軽量な構造が有機的にインテリアとして統合されており、従来のトリム要素が不要になっている。

車内に足を踏み入れると、自然の存在に気付かされる。インテリアの軽量で贅沢な感触は、軽量かつ持続可能な素材の広範な使用と、有機的なデザインを有するディテールから醸し出される。基本原則は、最小限の重量で最大限の快適さとスタイルを実現することであり、動物由来の製品は一切使用していない。

インテリアには、世界中の新興企業から調達した革新的な素材が数多く使用されている。ドアレバーはAMsilk社製Biosteelファイバーで作られている。この高強度かつバイオテクノロジーベースの認定ビーガンシルクのような生地は生化学的に合成されたもので、自然由来品と区別がつかない。革命的な科学と真の環境保全を組み合わせたこの素材の適用は、自動車分野では初となる。

インテリアで採用された、もう一つ持続可能性を高める素材として、Myloをあげておこう。これは菌糸体から作られた認定ビーガンレザーであり、キノコの根に似た構造をしており、主に自然に存在する再生可能成分から作られている。この素材はシートクッションに使用されている。

デザートテックスと呼ばれる動物を含まない革の代替品は、持続可能なバイオベースのポリウレタンマトリックスと組み合わせた粉砕されたサボテン繊維から作られた持続可能な生体材料である。この革の代替品は非常にしなやかな仕上がりであり、手触りも柔らかい。今後は、よりサボテン含有量を増やすことで、エコロジカルフットプリントを従来品の半分にできる可能性がある。

カーペットは100%竹繊維だ。この天然原料は、成長が速く再生可能であり、非常に豪華な外観を提供する。またフロアとドアトリムの強化には、リサイクルPETボトルなどのリサイクル廃棄物を多用している。インテリアのより高い位置で38%リサイクルPETから作られたDINAMICAを使用。ワンピーススクリーンの上端をドアとヘッドライナーにリンクするラップアラウンド効果を実現した。また、家庭や都市の埋め立てごみから作られた持続可能なプラスチック代替品であるUBQ素材も使用されている。

自然に触発された持続可能な先端材料の使用はバイオニックエンジニアリングと呼ばれ、バイオニックメッシュデザインと呼ばれるデジタルプロセスによって促進された。メルセデス・ベンツは2005年に開始されたバイオニックカーコンセプト研究にまで遡るバイオニックエンジニアリング技術適用の歴史を誇る。

BIONEQXXの鋳造

現在、メルセデス・ベンツで最大のアルミニウム構造鋳造品である『BIONEQXX』は、『VISION EQXX』の後端、後部フロアの主要な構造コンポーネントとして使用されている。これは完全にデジタル化された技術と独自のソフトウェアアプローチを使用して、メルセデス・ベンツ社内で開発された。その結果、利用可能なスペースのコンパクトな寸法に最適な機能がパッケージ化された。この印象的で製造可能な鋳造品をわずか4か月で作成した。

開発エンジニアは、有機的な形態からヒントを得て、荷重がかかる部分にのみ、この材料を使用した。自然の法則に沿って、負荷がない場合、材料は必要ないのである。

構造基準の中で最も重要なのは、極めて高い剛性と優れた衝突性能である。このワンパーツ『BIONEQXX』鋳造のメリットは、複数のパーツを結合して組み立てるのではなく、これを非常に軽量な単一コンポーネント内の機能統合として実現していることである。

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