従来から用いられてきたEGRは、エンジン排気管から排出ガスを取り出すハイプレッシャー方式である。そのままでは高温だから、EGRクーラーを通して温度を下げてから吸気側へと戻される。ちなみにEGR率は直接計測するのが難しいので、燃焼変動を検出してその量を限界近くに制御する方法も実用化されている。
ハイプレッシャー方式での進化は、排ガスを冷やすために水冷式EGRクーラーを追加して、より積極的に排ガスを冷やしたうえで吸気側に戻すという例だ。ターボチャージャーでのインタークーラーは、吸気を冷やすことで吸入空気の密度を高め、より多くの空気をシリンダー内に押し込むというものだが、EGRクーラーはエンジンの吸入空気全体の温度をある程度に抑え、酸素量が減ったぶんの効果と合わせてノッキング(不整着火)を防ぐ目的で使われる。
いっぽうロープレッシャー方式は、タービンを回転させた高熱の排気ガスが勢いを失った(温度低下)ところで収集し、それをコンプレッサーより手前に入れる方式である。低圧位置で収集し低圧位置で外気に混ぜるからロープレッシャーと呼ばれる。たとえば、通常のハイプレッシャーEGRでは、ウェイストゲートが閉じている低回転高負荷では、吸気圧>排気圧となって通常はEGRの導入ができなくなる。そこで、ロープレッシャーEGRを過給される外気にまぜ、過給によって通常よりも多くの混合気を取り入れれば、EGRで足りなくなったぶんの酸素を補うことができる。
ハイ/ロー併用のディーゼルエンジンではEGRがすでに50%を超えている。大量EGRによって燃焼温度を下げられるためNOxの発生を抑えられるだけでなくPM(微粒子状物質)を発生させないような低温燃焼を維持することができるのである。ガソリンエンジンでも、ノッキング防止効果が従来知られていたよりも大きいことがわかってきたので、高負荷のロープレッシャーEGRの採用が増えていくだろう。