【海外技術情報】GM:クアルコムの新たなコンピューティング・アーキテクチャが『ウルトラクルーズ』のドア・トゥ・ドアのハンズフリー運転を可能にする

GM’s next-generation hands-free driver assist system, Ultra Cruise, will be powered by a scalable compute architecture featuring system-on-chips developed by American semiconductor company Qualcomm Technologies, Inc.
GMは同社の次世代ハンズフリードライバーアシストシステムである『ウルトラクルーズ』に、アメリカの半導体企業クアルコムが開発したシステムオンチップを搭載したスケーラブルなコンピューティング・アーキテクチャを搭載することを発表した。業界をリードする5nmのSnapdragon SA8540PSoCとSA9000P人工知能アクセラレータを備えた先進運転支援技術にクアルコムのSnapdragonRideプラットフォームを使用するという。
TEXT:川島礼二郎(KAWASHIMA Reijiro)

『ウルトラクルーズ』コンピューターがドア・トゥ・ドアのハンズフリー運転を実現する

2台のラップトップを積み重ねたサイズの『ウルトラクルーズ』コンピューターは、2023年には超高級車のBEVであるキャデラック『CELESTIQ』などで利用できる予定である。高性能センサーインターフェースとメモリ帯域幅を備えたこのモデルは、GM自社製『ウルトラクルーズ』ソフトウェアスタックと組み合わせることで、機能性、信頼性、予測可能性、そしてドア・トゥ・ドア・ハンズフリー運転(運転シナリオの95%)を実現するための鍵となる。電気・自律運転・燃料電池自動車プログラム担当のGM副社長であるケン・モリス氏は以下のように述べた。

「比較的小さいサイズにもかかわらず『ウルトラクルーズ』コンピューターは、数百台のパーソナルコンピューターと同等の処理能力を備えています。2017年以来、GMの先進運転支援システムを際立たせてきた品質を、ドア・トゥ・ドアのハンズフリー運転で次のレベルに引き上げるでしょう」

『ウルトラクルーズ』コンピューターにはクアルコム製品が採用される

『ウルトラクルーズ』コンピューターは、検知、計画、ローカリゼーション、マッピングなど、GMが開発したADASソフトウェアと機能を強化する。これら『ウルトラクルーズ』機能は、イスラエル、アメリカ、アイルランド、カナダのGMエンジニアリング施設において社内で開発された。遅延がなくロバストで予測可能なシステムを構築するため、GMは『ウルトラクルーズ』のソフトウェアを最適なハードウェア設計に統合して、カメラ、レーダー、LiDARをオーバーレイした。データの優れた検出と分類とを提供するセンサー融合とソフトウェアスタックはGM独自のものであり、アフターマーケットでは利用できない。

『ウルトラクルーズ』コンピューターは、2つのSnapdragon SA8540PSoCと1つのSA9000PAIアクセラレータから構成され、16コアCPUで主要な低遅延制御機能を提供。カメラ、レーダー、LIDAR処理で毎秒300テラオペレーションを超える高性能AIコンピューティングを実現する。Snapdragon SoCは5nmプロセス技術で設計されており、優れたパフォーマンスと電力効率を実現する。Snapdragon SA8540P SoCは『ウルトラクルーズ』の検知、認識、計画、ローカリゼーション、マッピング、それにドライバー監視に必要な帯域幅を提供する。クアルコムのシニアバイスプレジデントのナクル・ドゥガル氏は以下のように述べた。

「キャデラックのSnapdragonRideを搭載した『ウルトラクルーズ』は業界にとって技術的な飛躍となるでしょう」

複数の冗長性が組み込まれた自動車システムの安全基準を満たすように設計されたSnapdragonRide SoCに加えて、コンピューティングにはシステムの安全性を完全にするためのInfineon AurixTC397プロセッサが含まれる。Aurix TC397は自動車安全完全性レベル最高のASIL-Dに分類される。

GMはコンピューターの複雑さを最小限に抑えたが、それはSnapdragon Rideの高性能、高効率設計が可能にした空冷システムの選択により実現した。『ウルトラクルーズ』のコンピューティングは将来の拡張性に加えて、GMが開発中の『アルティファイ』ソフトウェアプラットフォームと、GMのVehicle Intelligence Platform電気アーキテクチャを通じて可能になる無線ソフトウェアアップデートを活用することで、時間の経過とともに進化する機能も備えている。

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著者プロフィール

川島礼二郎 近影

川島礼二郎

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系…