ジヤトコは1997年に世界で初めてとなる2リッタークラス金属ベルト式CVT「F06A」の量産を開始してから、CVTのパイオニアとして、これまで累計5,000万台以上のCVTを生産してきた。新開発のCVT-Xは、同社がトランスミッション専門メーカーとして技術の限界に挑んだ商品で、環境性能と運転性を飛躍的に進化させた。そして、CVTとしては難しいとされていた伝達効率90%の壁を越え、これまでにないレベルの完成度を実現した。なお、CVT-Xの“X”には「究極」や「無限の可能性」「未知への挑戦」の意味が込められている。
CVT-Xの主な特長
・ターボエンジンにも最適なCVTとして商品化
CO2排出量を抑え、高い燃費性能を実現するダウンサイジングターボエンジンとの組み合わせにも対応している。エンジンの効率の良い領域を積極的に使いながら、ターボ加給時のトルクに瞬時に追従する油圧応答性やトルクコンバーターのロックアップ応答性など、ターボエンジンにより適したCVTに仕上げている。
・徹底的なフリクション低減を実現
オイルポンプやシールリング、ベアリングなどメカフリクションを徹底的に見直し、従来の同クラスCVT(同社CVT8)比で約30%のフリクション低減に成功した。また、変速機構として新たに採用したチェーンは、ピン間のピッチを現行に対して10%短くすることで巻き付き径が小さくなり、変速比幅8.2を実現した。これにより高速走行時のエンジン回転数をより低回転化することに成功している。さらに、トルクコンバーターのロックアップ構造を見直し、スリップロックアップ領域を拡大することなどにより、同クラスCVT(同社CVT8)比で燃費が8%向上した。
・優れた運転性を実現
ショートピッチチェーンの採用により8.2を実現した変速比幅や、トルクコンバーターに多板ロックアップ機構を採用しロックアップ完了までの時間を大幅に短縮したことで、発進からの優れた加速性能を実現している。また、変速ではフィードフォワード制御とフィードバック制御の双方を組み合わせ、変速時間の短縮と変速ショックを高次元で両立し、ドライバーのアクセル操作から車の挙動までの応答スピードを極限まで高め、意のままの走りを実現している。
・快適なNVH※2性能を実現
ピン間の距離に従来のピッチとショートピッチの両方を配置したランダムピッチチェーンと、新形状の高剛性チェーンガイドを採用することで弦振動を抑えている。これによりチェーンCVTでありながら、静粛性の高い快適な走りを実現している。
なお、CVT-Xは、2021年6月に欧州で発売された日産キャシュカイに搭載されている。
※1: Continuously Variable Transmission
※2: Noise, Vibration, Harshness