ブリヂストン、ENEOS:使用済タイヤからタイヤ素原料を製造するケミカルリサイクル技術の社会実装に向けた共同プロジェクトを開始

ブリヂストンENEOSは「使用済タイヤの精密熱分解によるケミカルリサイクル」※1技術の社会実装に向けた共同プロジェクトを開始した。

自動車・交通需要の増加に伴い、将来もタイヤ需要の拡大※2が見込まれている。現在、タイヤの主な材料の一つとして、石油由来の合成ゴムが使用されている。また、使用済タイヤの多くはサーマルリカバリー(熱回収)※3により燃料として有効利用されているが、その際にCO2排出を伴う。

本プロジェクトでは、ブリヂストンがタイヤ・ゴム事業を通じて培ってきた高機能ゴムなど高分子素材の設計技術と、ENEOSが有する原油精製技術や基礎化学品製造に関する基盤技術を最大限融合させ、使用済タイヤのケミカルリサイクル技術の確立を目指す。
具体的には、使用済タイヤを精密熱分解して得られる分解油を石化原料(ナフサ※4等)化し、この石化原料から合成ゴム※5の素原料であるブタジエン等の化学品を高収率に製造するケミカルリサイクル技術の社会実装に向けた実証実験を行う。2030年までに量産を想定した大規模実証試験を実施し、その後、早期の事業化を進める。

ブリヂストンGlobal CEO 石橋秀一氏のコメント
ブリヂストングループでは、サステナビリティを経営の中核に据え、将来にわたって社会価値・顧客価値を創出し続けるサステナブルなソリューションカンパニーへと進化するため、様々なパートナーとの共創に取り組んでいます。その中で、石油・石油化学産業におけるリーディングカンパニーであるENEOS社との共創は、タイヤ・ゴム産業の資源循環性の向上とカーボンニュートラル化に向けた大きな一歩であり、大変嬉しく思います。本プロジェクトを通じて、使用済タイヤを原材料に「戻す」リサイクルを事業として確立し、社会実装することは、当社グループの「サステナビリティビジネス構想」の実現につながるものと確信しています。ブリヂストングループは、今後も、持続可能な社会の実現へ向け、様々な共創活動を推進していきます。

ENEOS代表取締役社長 大田勝幸氏のコメント
当プロジェクトは、当社グループの2040年長期ビジョンで掲げる「低炭素・循環型社会の形成への貢献」につながるものです。今回、タイヤ・ゴム業界のリーディングカンパニーであるブリヂストン社と共同開発を実施することで再生可能資源の利用促進が更に進むものと確信しています。当社が長年培ってきた技術を十分に生かしながら、循環型社会実現に向けてサプライチェーン全体で協力し、取り組んでまいります。

なお、本プロジェクトは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業/CO2等を用いたプラスチック原料製造技術開発」に採択された実証事業「使用済タイヤからの化学品製造技術の開発」における2つの研究開発項目のうちの一つ。※6※7

※1 使用済みの資源を、そのままではなく、化学的に処理し、他の化学物質に転換してリサイクルすること。
※2 公益社団法人新化学技術推進協会「化学産業が紡ぐ30年後の未来社会とイノベーション戦略
個別戦略編 基礎化学品製造分野の技術戦略(1)ゴム編」
http://www.jaci.or.jp/public/page_03.html#rubber
※3 使用済みの資源から熱エネルギーを回収すること。
※4 主に原油から得られるガソリンに近い油を指す。ナフサを熱によって分解することで、プラスチック、合成ゴム、合成繊維、塗料、合成洗剤などの原料が作られている。
※5 タイヤの主材料の一つで、現在は主に石油から製造されているゴム。
※6 ブリヂストンとENEOSが実施する「使用済タイヤからの化学品製造技術の開発」がNEDOグリーンイノベーション基金事業に採択
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101517.html
※7 グリーンイノベーション基金事業に採択された実証事業「使用済タイヤからの化学品製造技術の開発」における、もう一つの研究開発項目「使用済タイヤの低温分解解重合による高収率リサイクル法開発」の詳細は、こちらのニュースリリースから。
https://www.bridgestone.co.jp/corporate/news/2022021802.html

キーワードで検索する

著者プロフィール

Motor Fan illustrated編集部 近影

Motor Fan illustrated編集部