帝人:ゴム補強用ポリエステルナノファイバー短繊維の開発

帝人フロンティアは、タイヤ、ホース、ベルトなどに使用される従来のゴム補強材よりも補強性能に優れ、環境負荷低減に貢献するゴム補強用ポリエステルナノファイバー短繊維を開発した。

 ゴム製品には、繰り返される変形と摩耗に耐える強度などが求められることから、補強効果を高めることを目的に短繊維をゴムの補強材として用いることが一般的である。ゴム補強用短繊維の補強効果は、使用する繊維が持つ強度のほかに、長さによって補強効果が高まるとされており、一般的には数ミリから数十ミリの長さにすることが求められている。
 しかし、繊維が長ければ長いほどゴムへの練りこみ工程において絡みやもつれが発生しやすくなり、繊維の分散性が低下して補強効果が低減することが課題となっていた。また、近年の環境配慮への高まりから、温室効果ガス排出削減を目的に、高分子量化や表面処理などの工程削減ニーズが急速に高まっている。
 こうした中、帝人は、ゴム補強用短繊維の断面をポリエステルナノファイバーとポリエチレンの2種類のポリマーを配した海島複合断面(*1)とすることで、少量の添加であっても従来品と同等以上の補強効果を発現し、かつ環境負荷低減を実現するゴム補強用のポリエステルナノファイバー短繊維を開発した。

*1)海島複合断面:2種類のポリマーを「海」部分と「島」部分に配置した複合断面

開発品の特長

 このたび開発された製品は、「島」部分に高い補強効果を発揮する直径 400nm または 700nm のポリエステルナノファイバーを配置し、「海」部分にはゴムと混ざりやすいポリエチレンを配置している。ポリエチレンがゴムと分子レベルで混合するため、数千倍の本数のナノファイバーがゴムの中で均一に分散する。そのため、従来品に比べて少量で同等以上の補強効果を発現する。開発品の繊維の長さは 1mm 以下と非常に短いが、直径が非常に小さいことからアスペクト比(*2)が高くなり、補強効果は大きくなる。また、繊維の長さが短いことから絡みやもつれが無く、ゴムと繊維が均一に分散した複合体を形成することができる。これにより、繊維が連続相(*3)となり、ゴム部分ではなく繊維に応力がかかりやすくなることから優れた補強効果を発現し、さらにはゴム製品の高い耐久性を実現する。

*2)アスペクト比:長さ/直径の比率。アスペクト比が大きければ大きいほど補強効果は高い
*3)連続相:点状で分散したものではなく線上または面上に連なる状態のもの

表1)参考データ

 従来品と比較して高い補強効果を発現することから、繊維の強度を高める高分子化工程を削減することができる。また、繊維の長さを短くしたことから、繊維が綿状になることを防ぐ表面処理も不要。これらの製造プロセスの削減によって環境負荷低減や温室効果ガスの削減に貢献することができる。タイヤの用途においては、高弾性化と転がり抵抗の低減に寄与するため、燃費向上や騒音低減の効果が期待できる。また、ホースやベルト用途においては、従来困難であった高弾性率と優れた耐久性の両立が可能となる。

今後の展開

 帝人は、このたび開発されたゴム補強用短繊維を2023年より生産を開始し、ゴム製品を展開する企業に向けて販売をすすめていく。その結果、2027年度10億円の売上を目指す。タイヤ、ホース、ベルトをはじめ、多種多様なゴム製品や樹脂製品を幅広く展開していくために、ナノファイバーに用いるポリマーの種類の拡充に向けた開発を進めていく。また、環境負荷のさらなる低減を目指し、リサイクル原料を活用した製品の開発を進めていく。

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