【海外技術情報】スカニア:オスカーシュハムンの車体工場で行なっている循環的な生産

2019年以降、スウェーデンのオスカーシュハムンにある車体工場にて、スカニアは循環的な生産を行っており、大きな成果が得られている。2020年以降、生産は化石燃料フリーであり、より多くの材料がリサイクルされ、エネルギー消費量は数千MWh減少した。
TEXT:川島礼二郎(KAWASHIMA Reijiro)

『グリーングラス』を装備したオスカーシュハムンの従業員は、多くの分野で持続可能性の改善に焦点を当てている。スカニアが設定した科学に基づく二酸化炭素削減目標(Science Based Target)のスコープ1および2を達成するために、様々な活動をしている。スカニアの運用とサプライチェーン内において、2015年から2025年の間に少なくとも二酸化炭素を50%削減する。

緑の考え方

その責任者はサステナビリティマネージャーのペルニラ・ザクリソン氏。彼女は、プロセスに入るすべての物と、出て行くすべての物を視覚化するためにGreen Acceleratorメソッドを導入した。

「考え方は単純です。緑の改善を毎日行うのは自然なことです。誰もがすべてを行うことはできませんが、誰もが何かを行うことができまるのです」

オスカーシュハムンの工場は、ヨーロッパ中の組み立て工場にトラックキャブを供給する、大規模工場である。スウェーデン国内のセーデルテリエ、オランダのズヴォレ、フランスのアンジェの最終組立ラインに、1日に数回配送している。従業員は生産だけでなく、エネルギーと廃棄物の削減においても業界の最先端に位置していることを誇りに思っている、とザクリソン氏は説明した。

「私達のサステナビリティ活動の最も重要なのは、全体としてより循環的な運営を行うために、すべてのレベルで自発的であることでした」

測定可能な結果

ターゲットにした改善作業は良好な結果が得られたが、その改善を測定するために、新しい主要業績評価指標(KPI)が追加された。一例として、水のリサイクルによりキャビン当たりの水使用量が0.8m3に削減されたことがあげられる。廃水量が大幅に減少し、コストも削減された。

廃棄物部門では、過去数年間、サプライヤーから工場までのチェーン全体で軟質プラスチック包装の使用を減らす取り組みを行ってきたが、これも非常に良い結果が得られた。

ザクリソン氏は以下のように説明した。

「最大のエネルギー節約は、プレスショップと塗装工程で行われました。強力なヒートポンプを使用することで、プレスにおける余分な熱をリサイクルできます。ペイントショップでは現在、その過程で空気をリサイクルしています。これらの2つだけで、年間のエネルギー消費量は約7.000 MWh削減されました。これは素晴らしいことです!」

化石燃料フリーとデジタル化

生産は依然として、加熱や輸送のための燃料に依存している。しかし、過去2年間で、再生可能燃料のみが使用されるようになった。暖房用のRME燃料は、地元で調達された菜種油をベースにしている。輸送車両の走行には水和植物油(HVO)のみが使用されている。これによりスカニアの世界的な生産およびロジスティクス業務のCO2排出量は12%削減された。

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著者プロフィール

川島礼二郎 近影

川島礼二郎

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系…