マツダSKYACTIV-Xの「M Hybrid」なぜ48Vではなく24Vなのか

マツダの虎の子「SKYACTIV-X」は、ハイブリッドシステム「M Hybrid」を搭載している。システム電圧は24V。なぜ48Vではなくて24Vなのか。
LAショーで展示されていた車両。SKYACTIV-Xエンジン搭載車である。

 ロサンゼルス・モーターショーで衝撃のデビューを飾ったMazda3(マツダ3=アクセラ)。注目度がもっとも高いのは、SPCCI燃焼という革新的な燃焼技術を投入した「SKYACTIV-X」エンジンで、マツダが「M Hybrid」と呼ぶハイブリッド・システムを搭載している。

 現在、マイルドハイブリッドとして主流を占めるのは、欧州のボッシュやコンチネンタル、ヴァレオなどのメガサプライヤーが提案し、実際に搭載が始まったのは「48Vシステム」を使ったシステム。現在、メルセデス・ベンツなどが搭載を開始し、今後も続々と48Vマイルドハイブリッドシステム搭載車が増えてきそうだ。しかし、M Hybridは48Vではなく24Vだという。なぜ「24V」なのか。

 まず、24という数字の意味である。これは大型商用車で用いられている電装と同値であり、信頼性に富んでいる。すなわち欧州勢が採用を急いでいる48Vが完全に新しいシステムであり、今なおデバイス群の研究開発が進んでいる状況に対して、ここは大きなアドバンテージである。しかしM Hybridについては、ここには大きな意味はないかもしれない(理由は後述)。

 ちなみになぜ大型商用車が24V電装を用いるかといえば、スタータモーターの駆動力を得るのが理由のひとつだったと聞く。大排気量+高圧縮比エンジンにおいてスタータモーターを回転させるためには大トルクが必要となり、当然、大きなモーターとなり、12V電装ではハーネス径が大きくなり──というスパイラルに陥るからだ。負荷が同じ消費電力とするなら、12V電装に対して24Vシステムならば電流値を半減することができる。同じハーネス径とするなら消費電力を高めることができる。バッテリーはふたつを直列に接続すればいい。こうして大型商用車の24Vシステムが成立した。

 ならば24Vを生み出す装置についてはいかがか。ご存じの方もいらっしゃるかもしれないが、一般的に乗用車用のオルタネーターは発電時におよそAC16Vを生み出し、それをレギュレートレクティファイアによって整流降圧してDC12Vとしている。ところがマツダのオルタネーターは、もともとオルタネーターでおよそAC25Vを発電している。これはi-ELOOPがデビューしたときにエンジニアから直接お訊きした話で、だとすると今回の24Vハイブリッドシステム:M Hybridの構築にあたっても、最上流のデバイスはもともと開発が済んでいるということになる。

デミオのi-ELOOPシステム。回生エネルギーをキャパシタに蓄電する。

 先行するi-ELOOPは、回生エネルギーをキャパシタに蓄電し、各種負荷への給電とオルタネーターの駆動停止による抵抗低減を図るシステム。いわば一方通行である。ならば「M Hybrid」とはどのようなシステムなのかといえば、駆動力をアシストすることからHybridの名称を冠している。オルタネーターをアシストモーターとしても使えるものとし、ベルトを介してメインシャフトを回転させる方式である。蓄電装置はキャパシタを継続採用──ではなく、リチウムイオンバッテリーを使う。

 たとえばボッシュが48Vシステムにおいて開発を進めるブースト・リパキュレーション・システムや、さらに身近な例で言えば日産のSハイブリッド、スズキのエネチャージに見られるようなエネルギーフローだ。

 

i-ELOOPに用いるキャパシタ。M Hybridでは蓄電装置としてリチウムイオン電池を使う。

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