アイシンの開催した「電動化新技術試乗会」では、現在の製品ラインアップに加えて次世代の提案品を数々展示、さらにはそれらをクルマに載せた試験車の試乗の機会も設けられた。ラインアップについては、つい先日登場を果たしたばかりのトヨタbZ4X/クラウンクロスオーバーが積むeAxleはすでに第1世代という位置付けで、会場には第2世代にとどまらず第3世代までもが実機として展示されている。当然主役は第3世代のeAxleで、繭というかピーナッツというか、見た目からも非常にフレンドリーな小型の筐体が非常に目を引いた。
小さい理由のひとつは、同軸型のレイアウトとしていること。減速機は間違いなく遊星歯車機構を用いているはずで、会場のエンジニアにその旨を訊くも当然はぐらかされる。ただし、インバーター/コンバーターの制御部はこの筐体には含まれず、それらを収めれば当然サイズや容量は拡大する。しかし、同軸構造で小さくするという目的は、第3世代として訴求したい大きなポイントだ。搭載した車両に試乗して驚いたのが、ペダルを戻した瞬間のなめらかさ。力行と回生という真逆の動きにもかかわらず、反転時のショックがまったくない。この穏やかさは電動車の次の魅力になるのではないか。
注目をやや集めにくくなってしまった格好の第2世代群だが、これらも意欲的に展開を図る様子。会場には大中小の3カテゴリで試作品を展示、さらに中カテゴリについてはフロント用とリヤ用の2種を用意していた。すでに市販化している第1世代に対して10%以上の電費向上を目指すとしていて、その達成にはアイシンが長年培ってきた歯車の効率向上が存分に発揮される。「これまでも歯車技術を得意としてきた御社においても、これ以上の高効率追求の余地があるのか」と訊いてみたところ、電動アクスルでは従来の世界とは異なる点が多々あり、それを解決することで「できることがまだまだある」という回答を得られた。このほか、従来の回転領域からさらに上を担うことになる軸受について、最新世代を適用していく。
お詫び:『モーターファン・イラストレーテッド』vol.193-P013において、第2世代eAxleの写真の掲載順が間違っておりました。正しくは下のとおりです。
このほか、アドヴィックスも新システムを提案した。「なめらかブレーキ」と称するそれは、前後の制動力を独立でコントロールすることで、制動時のノーズダイブや停止直前の「カックン」を回避するという。システム搭載車に試乗すると、まるで大きなクラスのクルマに乗っているかのようなフィーリング。制動時全体で生じるエネルギー量は同じながら、突出したところをまず抑えて穏やかなところにそれをもっていき平滑化し――というような印象を受けた。なめらかなブレーキはドライバーのみならず、乗員全員が享受できる挙動。「日本車は総じて乗り心地がいい」と世界から羨望の眼差しを集めることも可能なのではないか。
絶対性能の追求は必要である。しかしそこに至るまでの変化量をいかに急峻にせず、穏やかに遷移するか。アイシンの最新製品群に触れ、彼らは「なめらかさ」を大切にしているのかもしれないと感じた試乗会だった。