日立 Astemo は、自動運転の進展を見据え、操舵系と転舵系のアクチュエーター(※1) を電気信号で連携させて、安全性・快適性の向上に加え、レイアウトの自由度を高めるステアバイワイヤの実用化に向けた取り組みを日立グループの総合力を結集して推進している。従来のハンドルを維持したステアバイワイヤに加えて、このたびの従来のハンドルを排したステアバイワイヤの新たな操舵デバイスの提案により、自動車メーカーにおける次世代車両の車室空間開発に貢献する。
操舵系と転舵系のアクチュエーターを電気信号で連携させるステアバイワイヤの開発においては、従来のハンドルを排するなど、車室空間を広げるために操舵デバイスを小型化する場合、少ない操作量で転舵系のアクチュエーターをコントロールする必要があり、ドライバーの操作に対し車両が過敏に動いてしまうことが課題であった。日立 Astemo では、2021年に経営統合した旧ショーワの長年にわたる研究から得られた高度なステアリングフィール(※2) 技術や、日立製作所の研究開発グループと共同開発した路面から伝わる情報を検知する情報制御技術などが活用されている。車速に応じハンドルを操作した角度とタイヤの舵角の比率であるギヤレシオの適切な制御や、ハンドル操作に対する反作用としてドライバーがハンドルから得られる操舵反力特性、路面の凹凸や傾斜などの走行を乱す外乱を検知し抑制する制御技術などにより、転舵側アクチュエーターを最適に制御することができるようになり、車両の動きを過敏にさせず、スムーズな運転を可能にします。ハンドルの小型化が可能になることで、自動運転車両などの次世代車両の車室空間を広げることが可能となる。
このように、小型の操舵デバイスによる操作に対しても、転舵アクチュエーターの制御を最適にすることができれば、通常、操舵デバイス側にも必要となる制御装置などを排し、操舵反力を得られるシンプルな機械的な構造とすることができ、ステアバイワイヤとしての緊急回避や挙動補正制御などの運転支援制御が可能となるため、コストを抑えながらステアバイワイヤ化を図ることができる。
ステアバイワイヤで懸念される万一の故障に対しては、フェイルセーフ機能として、転舵側のアクチュエーター内にあるハンドルの舵角を検知する舵角センサー含めアクチュエーターの電源を2系統にするなど、万一の故障や回路欠損時にも、動作継続を可能とし、安全性が高められている。
※1:動力やドライバーの操作による力を何らかの動作に変換する装置。
※2:ドライバーがハンドルを通して感じとる操作に対する車両動きの反応。操舵感。