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新型フェアレディZが発表された。
注目したいのはトランスミッションだ。新型になっても6速MTが設定されたこともニュースだが(公開された写真は6速MT仕様ばかり)、注目したいのは、2ペダルトランスミッションである。
ジヤトコ製9速AT JR913型
新型Zは9速ATを採用している。これはトランスミッションメーカーであるジヤトコのJR913E型だ。Motor Fan illustratedは同社にこのJR913E型について詳しく取材した。
ジヤトコのFR用の7速AT「JR710E/JR711E」をすでに保有、各車に搭載されている実績を持つ。Z34型(現行型)のATは、この7速ATだ。
今回の新型9速AT「JR913E」は、そのJR710Eの高機能改良版だと信じて疑わなかった。遊星歯車の構成はおそらく大きく変わらず、ブレーキ/クラッチの締結制御を高度に変更することで9速にしていると踏んでいたのである。ところが、取材が始まって開発陣の口からは「じつは違うんです」との言葉が発せられた。聞けば、ダイムラー社のステップAT「9G-TRONIC」を基礎としているという。
当時、日産とダイムラーはパワートレーン戦略で技術提携を図っていた。その流れで日産側にも9速ATを仕立てるとなった際に9G-TRONICが俎上に載せられたという。しかし奮っていたのはジヤトコのエンジニア勢、9G-TRONICを徹底的に分析し、社内基準や市場特性などと照らし合わせてさらなる最適化を図った。結果、4つの遊星歯車機構/6つの締結要素は9G-TRONICをそのまま用いながら、各部の徹底的なリファインを施すこととなった。
走行時のNVHや将来のハイブリッドトランスミッション化までを踏まえて歯車の仕様を見直し、変速比も変更。結果、レシオカバレージ(最低速段÷最高速段の値)は9. 087で、9G-TRONICよりわずかに小さくなったが、静粛性に優れた変速機にすることができた。また、JR710Eに対しては本体全長は同等、ベルハウジングなどを含めた総全長/重量では減らすまでの仕様としている。
当然、ドライバビリティの向上にも努めている。ステップ比を小さくしクロースレシオ化を図り、そのための変速速度は可動部の軽量化、油路の短縮化、油温の最適化などを積み重ねることで実現した。燃費/伝達効率の向上にストレートにつながるロックアップ制御については、スリップ量をJR710Eより減少させ、発進加速時にはダイレクトなフィーリングを醸し出している。ロックアップクラッチを締結したことによる振動騒音対策としては、トルクコンバータ内にペンデュラムダンパーを装備、NVHにうるさい北米の顧客も満足する性能となっている。
新型フェアレディZの9速ATのギヤ比は
1速:5.425(4.923)
2速:3.268(3.193)
3速:2.250(2.042)
4速:1.649(1.411)
5速:1.221(1.000)
6速:1.000(0.862)
7速:0.862(0.771)
8速:0.713
9速:0.597
後退:4.799(3.972)
最終減速比:3.133(3.357)
※カッコ内は現行フェアレディZのギヤ比
ギヤ比を見ると、ロー側もハイ側も大きく広がっていることがわかる。ターボ化されてパワーアップしているが、高速走行時のエンジン回転数を低く抑えられることで燃費性能も期待できそうだ。ちなみに、9速ATには、ダウンシフトレブマッチング(Downshift Rev Matchingがつく。
6速MTはどう進化したか?
6速MTは、前型から引き続き愛知機械製を使う。前型の型式はR31A型だったが、新型の型式はどうなるか。
従来のR31A型のトルク容量は450Nm。新型Zの最大トルクは475Nmである。この大トルクに対応するため、新型ではクラッチディスクとギヤトレーンを強化している。
新型の6速MTのギヤ比は
1速:3.795(3.794)
2速:2.325(2.324)
3速:1.625(1.624)
4速:1.272(1.271)
5速:1.000(1.000)
6速:0.795(0.794)
後退:3.446(3.446)
最終減速比:3.538(3.692)
※カッコ内は現行フェアレディZのギヤ比
日産の発表によれば、新設計のシンクロナイザーシステムの採用やシフトプロファイルの変更により、ドライバーの意のままのスムーズなシフトチェンジを可能となっているという。