JFEスチールは今回、製鉄主原料である鉄鉱石について、製鉄所内の物流計画を最適化するシステムを開発した。本システムを導入し、鉄鉱石ヤード(置場)の運用計画を最適化することによって、物流効率の大幅な向上と安定操業の両立を実現した。
製鉄所に到着した鉄鉱石は、ヤードに山状に積まれた状態で一時的に保管され、所定の品質を満たすよう配合された後、次工程の焼結機や高炉に送られる(タイトルイラスト)。鉄鉱石は産地によって品質や成分が異なるため、それぞれの産地の鉄鉱石が混ざらないように保管される。
ヤードを効率的に運用するためには、同じ種類の鉄鉱石をまとめて集積し、ヤード内の山数を少なくする必要がある(図2)。一方で、過度に山数を減らしてしまうと、日常のメンテナンスやトラブル等で運搬設備を使用できない時に、必要な産地の鉄鉱石を払い出せないリスクが高まり、操業安定性が低下してしまうため、ヤード運用の効率性と操業安定性を高度に両立させる必要がある(図3)。また、鉄鉱石が産出国から製鉄所に船舶で入荷するには、往復で約1~3か月もの時間を要するため、頻繁に発生する入荷タイミングのずれにも、柔軟に対応することが求められる。
従来は現場の担当者が、原料受入・払出計画、在庫状況、および船舶の運航状況などを確認しながら、当日から数週間先のヤード運用計画を手作業で作成していたが、ヤード全体で扱う一日の鉄鉱石の量が数十万トンにも上り、鉄鉱石の種類や置場などの組み合わせ数が膨大に存在するため、運用計画のさらなる精度向上が課題となっていた。
そこでJFEスチールは、ヤードの最適な運用を可能とする「山配置計画システム」(図4)を独自に開発した。本システムでは、配合する頻度が高いなど、操業安定性に対する影響が大きい産地の鉄鉱石を分散して保管しながら、膨大な山配置のパターンから山数が最小となるパターンを日単位で選択するアルゴリズムによって、数十秒の計算で、数か月間にわたるヤードの最適な運用計画を作成することができる。これにより、安定操業を確保しながら、物流効率を大幅に向上させることが可能となった。
既に西日本製鉄所(福山地区)に、本システムの導入を完了している。今後は、原料炭や他地区への展開を進めるだけではなく、原料購買から次工程への払出に至る原料管理全体について、全社レベルでの最適化を推進していく。