ジェイテクト、超幅狭軸受「JTEKT Ultra Compact Bearing」の開発にモデルベース開発を取り入れ、世界最速レベルの高速化を実現

ジェイテクトは新規設計した転がり軸受にモデルベース開発(以下、MBD※1)を取り入れて活用していることを発表。そのメリットと、今後の製品計画などを解説している。

JUCBの開発経緯とMBD活用事例

2022年10月、ジェイテクトは電動化対応における一つのソリューションとして、超幅狭軸受「JTEKT Ultra Compact Bearing(以下「JUCB」)」をリリース。本製品の開発では、MBD技術を活用することで軸受の幅寸法を極限までコンパクトにすることができ、同軸タイプや3軸タイプeAxleユニットの小型化・軽量化に貢献している。加えて、世界最速レベルとなるdmn200万※2の高回転速度対応も実現された。

従来の標準サイズの軸受では、片持ち形状の冠形保持器が採用されていたが、コンパクト化の観点では構造上の限界があった。JUCBでは、2016年9月にリリースされた合わせタイプ保持器のノウハウを活用することで、その課題を解決した。

高速回転で軸受を使用する場合、大きな遠心力や玉の進み遅れによる影響で、保持器の破損や軸受内部の急激な温度上昇が懸念される。ジェイテクトでは、MBD技術によって高速回転中における軸受内部の負荷状態と温度分布を予測し、耐久性を担保しながら昇温を抑制することができるバランス設計が実現された。従来の標準サイズ軸受の冠形保持器に対して、合わせタイプにすることによって非常に小さな断面積ながら遠心力による保持器の変形を抑制することが可能となり、保持器と他部品との接触による発熱量を従来比で80%削減できることが確認された。通常、高速回転用軸受の保持器には、剛性や耐熱性、耐久性に優れる高価な樹脂材料を採用する必要があるが、開発品では保持器材料の変更を行うことなく、省スペース化と高速化の同時実現に目途が立てられた。

実際に軸受を高速回転させる評価試験において、JUCBは標準サイズ軸受よりも高速回転時の温度上昇を抑制することができ、世界最速レベルのdmn200万の高速性能が実現された。本結果により、JUCBはeAxleをはじめとした幅広い駆動ユニットの小型化・軽量化への貢献が期待されている。

ジェイテクトグループのシナジーでeAxleの小型化・軽量化に貢献

今後はJUCBのみならず、発表済みのJTEKT Ultra Compact Diff.(JUCD)やJTEKT Ultra Compact Seal(JUCS)といった、ジェイテクトが有する技術によって顧客に電動化貢献技術が提供される。上述3製品を、BEV電動駆動システムで特に需要拡大が予測される出力150Kwの同軸タイプeAxleに適用した場合、eAxleのユニット長を約50mm短縮、重量を約5kg低減すると算出され、eAxleの幅寸法短縮をはじめ、前後寸法や高さ寸法の短縮、それらに伴う小型化・軽量化への貢献が期待されている。

※1 MBD:Model Based Development
開発したいモノのモデルを製作し、そのモデルをベースにシミュレーション技術を活用することで、開発期間の飛躍的な短縮と製品品質を向上させる効率的な開発手法。

※2 dmn:ベアリングの回転性能を表す値 ピッチ円直径(mm)×回転速度(min-1)

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