配電用変圧器は、発電所から送られる電気を工場、ビルで安全に使える電圧に変える機器。近年、地球温暖化を背景に、脱炭素社会の実現に向けて、日本政府は「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、2030年に向けた温室効果ガスの削減を2013年度比で46%減を目標としており、企業によるESG経営の取り組みなどから、配電用変圧器にも省エネ、環境への配慮が求められている。
配電用変圧器は社会を支える電力インフラの一部として24時間使用され、大きな省エネルギー効果が期待されている。日立産機では、夜間など待機時でも省エネルギー性能に優れるアモルファス鉄心を採用したアモルファス変圧器の開発に取り組んできた。また、一般的な配電用変圧器の絶縁には鉱物油を使用しているが、カーボンニュートラル*1の植物油(エステル油*2)採用を積極的に取り組んでいる。
今回、高圧配電用アモルファス変圧器のフラッグシップ 「SuperアモルファスZero Pシリーズ」は、省エネルギー性能を向上し二酸化炭素排出量を2013年度の「第一次トップランナーのエネルギー消費効率基準値」と比べて46%低減*3を実現した。また、特別高圧用「特高Superアモルファス 奏(かなで)」は、アモルファス鉄心により同社従来器から消費電力を46%低減*4 するとともに、ライフサイクルでの大気中の二酸化炭素の増減に影響を与えないカーボンニュートラルの大豆を原料とした植物油(エステル油)を採用した。
主な特長
高圧配電用変圧器 「SuperアモルファスZero Pシリーズ」
——高圧配電用変圧器として業界トップクラスの高効率
アモルファス変圧器は、アモルファス合金を鉄心に採用した高効率な変圧器である。新型Zero Pシリーズは、最適な高効率設計をおこない、2013年度のエネルギー消費効率基準値と比較し損失電力量を大幅に低減することで二酸化炭素排出量を46%削減することを実現した。これは、2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現をめざす日本政府の2030年度に向けた温室効果ガスの削減目標と同レベルの実現となる。例えば、1000kVAの場合、2013年度エネルギー消費効率基準値との比較で年間の二酸化炭素排出量は13.4トンから46%以上削減の7.0トンになる。
特別高圧配電用変圧器 「特高Superアモルファス奏」
——環境に配慮した安全なカーボンニュートラルの絶縁油採用
環境配慮及び防災性の観点から、本製品では絶縁に使用される絶縁油に大豆由来のエステル油を採用しました。採用する絶縁油はアメリカ大豆サステナビリティ認証プロトコル(SSAP)*5に基づき、温室効果ガス削減や生物多様性に配慮し生産された大豆から精製したエステル油を採用している。このエステル油は高い生分解性(微生物などにより分解される性質)を有し、万一、災害などで漏油しても土壌や河川、海洋への汚染の懸念が少なく、高い安全性が確認されている。またエステル油の原料となる大豆は成長過程での光合成により二酸化炭素を吸収するため、焼却や処理をしても、大気中の二酸化炭素増減に影響を与えずカーボンニュートラルに貢献している。
——省エネルギー性能と防災性向上
アモルファス合金を鉄心に採用し無負荷損を低減することで、同社従来機と比較し損失電力量を46%削減となる省エネルギー性能を実現している。また、本製品で採用しているエステル油は引火点が320℃以上と鉱物油に比べて高く、世界水準の火災予防規格であるFM規格*6の認証を取得している。そのため、一般的な変圧器の絶縁油は消防法で危険物の扱いになるが、本製品で採用しているエステル油は指定可燃物として取り扱いできる。
*1 カーボンニュートラル:一連の人為的活動を行った際に、排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素が同じ量になること
*2 エステル油:有機化合物から生成された油
*3 三相 1000kVA,50Hz,等価負荷率50%時の比較
*4 特高需要家での変圧器の年間平均等価負荷率40.5%での、三相5000kVA、50Hzの場合の当社従来機比
*5 アメリカ大豆サステナビリティ認証プロトコル(SSAP):アメリカ大豆輸出協会(USSEC)が開発した大豆生産のサステナビリティに関するプロトコル
*6 FM規格:米保険会社(FM Global社)を中心に立ち上げた、米国で最も一般的な火災防止に関する承認規格