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開発背景
ガス拡散層（GDL）とは、燃料電池の内部に使用する部材で、水素や酸素を供給、電極の化学反応で生じた電子の集電、および生成水の排水などを担う 。帝人は、長年培ってきた繊維加工技術を用いて、繊維長が長く高い結晶性を有する極細の繊維状炭素「ポテンシア」を開発しており、その特徴である導電性や熱伝導性などを活かすことのできる用途を探索してきた。そうした中、帝人は燃料電池の小型化や高性能化、低価格化のニーズの高まりに伴い期待される、燃料電池の使用部材であるGDLの薄型化やコストダウンに着目した。
従来のGDLには、導電性や耐久性を有する炭素繊維シートが使用されているが、炭素繊維シートを用いることで生じる燃料電池内部の触媒層への傷つきや不均衡なガス拡散、電極の化学反応に伴う生成水の貯留といった問題を防ぐために、撥水剤などを用いた微多孔構造のマイクロポーラス層（MPL）をGDLに付与することが一般的とされている。
しかし、MPLを付与したGDLは、全体の厚みが増すため、燃料電池の電力性能に関わるガス拡散能力が低下するという課題が残っていた。また、炭素繊維シートの製造に加えてMPLを付与する工程があるため、コストを下げることが困難だった。
帝人は、こうしたGDLが抱える課題の解決に「ポテンシア」と「トワロン」が活用できると考え、新たなGDLの開発をすすめていた。
開発されたGDLの概要
今回開発されたGDLは、帝人が特許を持つ紙すき技術を用いて「ポテンシア」と「トワロン」を少ない製造工程で組み合わせた微多孔構造のGDLである。このGDLは、「ポテンシア」を使用したことで導電性に優れており、また、「ポテンシア」特有の柔軟性により燃料電池内部の触媒層を傷つけることはない。さらに、「トワロン」を使用したことでGDLの耐久性を維持しつつ、撥水加工が落ちづらい特徴により撥水性にも優れている。
これにより、MPLを付与することが不要となり、厚さ50マイクロメートルのGDL開発が実現された。これは、一般的なGDLの約半分以下の薄さであり、「業界最薄クラス（帝人調べ）」となっている。製造工程の短縮化と、大幅な薄型化に伴う使用原材料の削減により、製造コストや環境負荷の低減に貢献する。
今後の展開
帝人は、今回開発したGDLのガス拡散性や導電性など、燃料電池の性能向上に欠かせない項目の検証を進める。また、製造工程の短縮や使用する原材料の削減に伴う環境負荷低減への貢献度に
ついても検証を進めていく。今回開発された新たなGDLの提供に留まらず、燃料電池の小型化や高機能化を目指す企業と共に、GDLを用いた新たな電極膜などの共同開発を目指していく。
帝人グループは、本年3月15日から17日まで東京国際展示場（東京ビッグサイト）で開催される「第 19 回 FC EXPO 国際 水素・燃料電池展」に今回開発されたGDLを出展・展示する。
（ブース番号：1-40）