日産サクラからの給電でマンション向け自動給水ユニットの稼働を実証。V2Xシステムの普及に向けた協創第3弾

日立ビルシステムと日産自動車は、日立産機システムと共同で電気自動車からの給電でマンション・ビル向けの自動給水ユニットを稼働させる実証実験を実施した。本実証実験は、電気自動車からの給電で停電時のビル設備利用を可能にするV2X※1 システムの普及に向けた日産と日立ビルシステムの協創※2 第3弾の取り組みとなる。

実証実験の背景

この実証実験では電気自動車「日産サクラ」のバッテリーをフル充電状態から、外部給電が可能なバッテリー残量10%まで利用し、日立産機システム製の自動給水ユニット「ダイレクト・ウォータエース」を稼働させ、21,171リットルの給水を実証※3 した。これは8,468人分の1日の水分摂取量※4、またはトイレ4,234回分の水量※5 に相当する。昨今、自然災害が頻発する中で、その影響で停電が発生した際にも、社会生活を継続できるようにするための対策に注目が集まっている。日立ビルシステムは、電気自動車をビルの非常時電源として活用できる可能性に注目し、停電時に電気自動車と建物をつなぐV2X技術により、電気自動車からエレベーターに給電を行い、継続利用を可能とするシステムを開発し、2023年7月に発売開始※6しました。

今回の実証実験では、停電時にマンションで水道が使えなくなる不便を解消するために、マンション・ビル向け自動給水ユニットを製造する日立産機システムの協力の下、軽の電気自動車「日産サクラ」のバッテリーを使用して自動給水ユニットを動作させる実証実験を行った。

実証実験の概要

実験目的:電気自動車の電力を利用した自動給水ユニットの実稼働データ計測
実験環境:自動給水ユニットの稼働電力を電気自動車からの給電に切り替え、
 電気自動車のバッテリーが放電限界を迎えるまで給水を実施※7
使用車両:軽電気自動車「日産サクラ」(バッテリー容量20kWh)
使用ポンプ:日立産機システム製の自動給水ユニット「ダイレクト・ウォータエース」
測定項目:自動給水ユニットの連続運転時間および送水量、電気自動車のバッテリー残量

実証実験の結果

連続稼働時間:1時間31分※8
送水量:21,171リットル
 (8,468人分の1日の水分摂取量※4またはトイレ4,234回分の水量※5
バッテリー残量:100%⇒10%

今後の展望

日立ビルシステムと日立産機システムは、今回の実証実験結果を踏まえ、V2Xシステム対応の自動給水ユニットの詳細仕様の検討を進めていく。また、日立ビルシステムと日産は、V2Xシステムの普及に向け、取り組みを推進する。

【注釈】

※1 V2X(Vehicle to X):自動車とさまざまなモノとの接続や相互連携を行う技術の総称。エネルギー分野においては、電気自動車と、住宅やビル、電力網(グリッド)などをつなぎ、電力の相互供給を行うことを可能にするV2Xシステムの実用化が進められている。

※2 2023年1月27日付ニュースリリース「日産自動車と日立ビルシステムが、電気自動車からの給電で停電時のエレベーター利用を可能にするV2Xシステムの普及に向けて協創を開始」

※3 建築仕様によっては、排水のための排水ポンプの稼働が必要なケースもある。今回の実証は排水ポンプを必要としないケースが想定されている。

※4 人間が飲食等から1日に摂取することが必要な水量を2.5リットルとして計算。出典:厚生労働省

※5 一度に流す水の量を5リットルとして計算。出典:一般社団法人日本レストルーム工業会ホームページ「トイレQ&A」

※6 2022年5月23日付ニュースリリース「電気自動車からの給電で停電時のエレベーター継続利用を可能とするV2Xシステムの実証を開始」

2023年7月23日付ニュースリリース「電気自動車からの給電で停電時のエレベーター継続利用を可能とするV2Xシステムを販売開始」

※7 定格出力7.5KWの自動給水ユニットを使用。20階建てのマンション(高さ75m)への送水と同等の水圧で実施。

※8 同条件で「日産リーフe+」(バッテリー容量60kWh)を用いてバッテリーの放電限界まで自動給水ユニットの連続稼働を行った場合の理論値は、連続稼働時間4時間33分となる。

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