欧州勢に48Vシステムの採用が進んでいる。ここ日本では数百Vの高電圧をシステムとする、いわゆるストロングハイブリッドが主流を占めているが、ヨーロッパでは「さらにその上の」(と彼らが示す)電気自動車に力が注がれる。しかし電気自動車は猛烈に価格が高く車重も嵩むため、メーカーがねらうCAFE(企業別平均燃費基準)を満足させることができない。そこで彼らが着目したのが48Vシステムによる電動化である。
48という数字は、さまざまな検討から生まれた。直流電圧は60Vを超えると漏電時の人体影響を考え、万全の対策を施さねばならない。それ以下の電圧で、しかしできるだけ高い電圧値ということで弾き出された。「マイナス側がボディアース」という事実からしても、その安全性がご理解いただけるだろう。
従来の12Vシステム電圧に対して48Vとすると、何がいいか。答えは、ハーネスを細くできる、あるいは高出力化できる、である。たとえば、かつて隆盛を誇ったH4規格のヘッドランプ・55/60Wで考えると、12V電圧ならハーネスに流れる電流値は55÷12/60÷12で、それぞれ4.6A/5.0A。ハーネスは電流値によって太さを選択するため、かりにこのヘッドランプに110/120Wのバルブをセットしてしまうとハーネスには9.2A/10.0Aの電流が流れ発熱、最悪の場合には被覆から燃え出してしまう。
仮に、55/60Wを48Vで動かすとなると電流値はわずか1.1A/1.3A。ハーネスがmax.5A対応のものだったら240Wまでのバルブを発光させることができる計算だ(あくまでも例、実際にはヘッドランプには持ちられていない)。
ボッシュの48Vソリューション
その特質を生かして、48Vのリチウムイオン電池+ベルト駆動のスタータージェネレータ(BSG)をオルタネータの代わりに備え、力行回生によって高効率化を図るのがボッシュの48Vシステム。BSG部門は2018年1月にSEG Automotive社に売却しているものの、キーデバイスのリチウムイオン電池は内製とした。
BSGの出力は10kW。たったそれだけ?と思われる向きもあるだろう。しかしボッシュによれば10kWの出力であれば最大85%の回生が得られるという。力行についても発進時やターボラグの解消など、その一瞬を狙って発揮する出力だけに10kWといってもその恩恵は小さくない。
BSGアシストをOn-Offできるテスト車に試乗したことがあり、その効果を体験したことがある。On時の感想は正直「効いているのこれ?」なのだがOffを即座に体験するとその効果がありありとうかがえ、力行の自然さに舌を巻くという次第。また、アイドルストップからの滑らかかつ非常に早い再始動も、BSGのメリットとして挙げられる。
今回はボッシュのエンジニアである清田茂之氏に、48Vシステムの仕組みと効果についてあらためてヒアリングした。一台ずつの取り代は決して大きくはないものの、台数を普及させることで結果としてCO2削減に大きな効果を出す。日本のハイブリッド戦略とは大きく異なる戦略/戦術について、牧野茂雄さんが解説します。
特集:ELECTRIC POWER——電気のチカラ
Introduction ecoだけじゃない電気のチカラ
Analysis 「エレキ」はなにをもたらしたか
Chapter 1 パワートレイン
デンソー:モータージェネレーター
ボッシュ:BSG
ボルグワーナー:電動ウェイストゲート
Chapter 2 ダイナミクス
三菱自動車:S-AWC
日産:電動駆動4輪制御システム
コラム CANからイーサネットへ
Chapter 3 シャシー
スバル:電子制御ダンパー
コンチネンタル:ESP
電動パワーステアリング
モーターファン・イラストレーテッド Vol.180 [印刷版]
モーターファン・イラストレーテッド Vol.180 [電子版]