新型「GRヤリス」、新開発8速AT「GR-DAT」を搭載しモータースポーツの視野拡大を目指す

TOYOTA GAZOO Racing(以下、TGR)は、東京オートサロン2024にて進化した新型「GRヤリス」を世界初披露した。新型GRヤリスは、マイナーチェンジの枠に収まらない大幅な進化を遂げて戻ってきた。クルマを操る楽しさを重視し、今回、新たに 8速AT「GR-DAT」トランスミッションも設定する。

新開発8速AT「GR-DAT」

GR YARIS 終わりなき挑戦と開発の軌跡(TOYOTA GAZOO Racing公開)

2020年に発表されたGRヤリスヤリスはモリゾウを含むプロ・アマチュアドライバーが様々なモータースポーツへ参戦し、「壊れては直す」ことを繰り返すことでマシンの信頼性と運転の楽しさが突き詰められている。今回の改良ではコックピットをラリーカーさながらの一体型インパネに仕上げることで、前方視界と操作性を大幅に改善。ドライビングポジションも下げることで、よりスポーティな姿勢で座ることができる。新型「GRヤリス」は、全国のトヨタ車両販売店を通じ、2024年春頃の発売が予定されている。

トヨタは、新型GRヤリスの開発にあたって「GR-DAT」ミッションをモータースポーツで鍛え上げた。全日本ラリーやTOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジ、スーパー耐久シリーズへ参戦し、「壊しては直す」ことを繰り返すことで、MTミッションのドライビングプレジャーをATミッションでも実現。幅広いドライバーが楽しめる速さと信頼性が実現されている。

GR-DATイメージ画像

AT制御ソフトウエアをスポーツ走行用に最適化。従来は減速Gや速度などの車両挙動を感知し変速させていたところを、ブレーキの踏み込み方・抜き方、アクセル操作まで細かく感知し、車両挙動の変化が起こる前に変速が必要な場面を先読みすることで、「ドライバーの意思を汲み取るギヤ選択」を実現。プロドライバーによるシフト操作と同じようなギヤ選択を可能にしている。

AT内部の変速用クラッチに高耐熱摩擦材を採用したほか、AT制御ソフトウエアの改良により、世界トップレベルの変速スピードを実現。6MTから8ATへ多段化した上で、クロスレシオ化することによりパワーバンドを活かした走りを実現し、RZ“High performance”にはアクセル操作による駆動力コントロール性能向上のためトルセンLSDが設定された。

プロドライバーと共に視認性と操作性を磨き上げた専用コックピット

進化型GRヤリス(日本仕様、プロトタイプ)

スーパー耐久シリーズ参戦車および全日本ラリー参戦車をモチーフに、操作パネルとディスプレイをドライバー側へ15度傾けて設置することで、視認性と操作性を改善。スポーツ走行時のみならず日常生活でも使いやすいスイッチ類の配置にもこだわって製作されている。

ドライビングポジションを25mm下げ、よりスポーティなドライビング姿勢に改善。また、インナーミラーの取り付け位置を修正し、前方視界を拡大させている。GRヤリスMTモデルのシフトレバーと同等の位置に配置し、操作性を向上。また、ラリーやジムカーナでの車両コントロール用途を視野に、GR-DATを搭載した車両にも手引き式パーキングブレーキを採用している。

縦引きパーキングブレーキをオプション設定
コックピット イメージ画像

Mモードでのシフトレバーによる変速操作の向きを、モータースポーツからの学びを活かし、従来から反転。車両挙動に合わせて引き操作でシフトアップ(加速)、押し操作でシフトダウン(減速)へと変更し、レーシングカーのシーケンシャルトランスミッションのような操作性を実現している。搭載される12.3インチフルカラーTFTメーターはダッシュボードに収まっているため(従来では上方にはみ出していた)、前方視界がかなり改善された。

出力、トルクを磨き上げた1.6Lターボエンジン

エンジントルク図

モータースポーツでの戦闘力向上を目指し、エンジン出力を200kw(272PS)から224kw(304PS)へ、トルクを370N・m(37.7kgf/m)から400N・m(40.8kgf/m)へ向上。

モータースポーツ現場の声を反映したエクステリア

進化型GRヤリス(日本仕様、プロトタイプ)
進化型GRヤリス(日本仕様、プロトタイプ)

ロアグリルには薄型・軽量化と強度を両立するスチールメッシュを、バンパーロアサイドには分割構造が新たに採用されている。サイドロアグリルは開口部の大きい形状に変更し、冷却性能を確保。さらに、バンパーサイドにアウトレットを設けることで、サブラジエーターおよびATFクーラーの熱を効果的に排出している。

リヤロアガーニッシュ下端に設けられた開口部より床下からの空気を抜くことで、空気抵抗を下げ、操縦安定性を向上させるとともに、マフラーの熱を排出。モータースポーツ参戦中の損傷回避と視認性を考慮し、上下リヤランプ類を集約。また、ハイマウントストップランプとリヤスポイラーを分けることで、リヤスポイラーのカスタマイズ性を拡張させている。

公道では味わえない非日常な躍動感「サーキットモード」を新設定

【緑点灯 : 認知】インジケーター点灯速度によりリズムを図る
【赤点灯 : 判断】シフト準備
【青点滅 : 操作】シフトアップ

GPSによる位置判定より、サーキットなどの利用可能エリアに入るとアンチラグ制御、スピードリミッター上限速度の引き上げなど、GRヤリスのポテンシャルを引き出す機能でサーキット走行を余すことなく楽しむことができる。また、各機能はスマートフォンアプリ上で好みにあわせてカスタマイズが可能だ。

進化型GRヤリス RZ“High performance”主要諸元

ボディサイズ(全長×全幅×全高)3,995×1,805×1,455 [mm]
ホイールベース2,560 [mm]
車両重量1,280(GR-DAT搭載モデルは1,300)[kg]
エンジンG16E-GTS 1.6ℓ直列3気筒インタークーラーターボ
最高出力224kW(304PS)/6,500rpm
最大トルク400Nm(40.8kgf・m)/3,250~4,600rpm
トランスミッションiMT(6速マニュアルトランスミッション)
GR-DAT(8速オートマチックトランスミッション)
サスペンションフロント/マクファーソンストラット式
リア/ダブルウィッシュボーン式
ホイールBBS製 鍛造アルミホイール 8J インセット45mm
タイヤ225/40ZR18 ミシュラン Pilot Sport 4S
進化型GRヤリス RZ“High performance”主要諸元(トヨタ社内)

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