近年、脱炭素社会の実現に貢献するキーデバイスとして、電力を効率よく変換するパワー半導体の需要が拡大・多様化する中、電力損失の大幅な低減が可能なSiCパワー半導体への期待が高まっている。特に自動車分野では、温室効果ガス低減を目的とした自動車の電動化を背景に、モーター駆動におけるインバーターなどの電力変換機器に使用されるパワー半導体モジュールの需要が拡大している。xEV用パワー半導体モジュールは、自動車の航続距離の延伸に加えて、バッテリーやインバーターの小型化を可能にする小型で高出力・高効率な製品が求められている。また、自動車は安全基準が高く、モーター駆動に用いるパワー半導体には一般産業用途以上の信頼性も求められる。
三菱電機は業界に先駆け、1997年にxEV用パワー半導体モジュールの量産を開始後、ヒートサイクル耐性等の信頼性を向上し、インバーター小型化などの課題を解決するxEV用パワーモジュールをこれまでに多数提供し、さまざまなEV・HEVに搭載されてきた。
今回、自動車市場で多くの採用実績がある三菱電機製T-PM※3の最新世代として、小型のモジュールサイズを実現したxEV用SiC/Siパワー半導体モジュール「J3シリーズ」のサンプル提供が開始される。新たにSiC-MOSFETを搭載した製品や、RC-IGBT(Si)を同一パッケージに搭載した製品をラインアップすることで、xEV用インバーターの小型化に貢献する。また、豊富なラインアップにより、幅広い電気容量帯のインバーター設計にも対応し、EVやPHEVの航続距離の延伸や電費改善にも貢献することで、さらなる自動車の電動化の普及に貢献する。
【注釈】
※1 Silicon Carbide:炭化ケイ素
Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:金属酸化膜半導体製の電界効果トランジスタ
※2 RC-IGBT(Reverse Conducting IGBT):IGBTとダイオードを1チップ化したもの
※3 Transfer molded Power Module:トランスファーモールド型パワー半導体モジュール