本設備は、川崎重工独自のCO2回収技術であるKawasaki CO2 Capture(以下、KCC)を活用し、大気からのCO2回収を行うDirect Air Capture(以下、DAC)※1と神戸工場に設置している高効率のガスエンジン発電所の排ガスからCO2を回収するPost-Combustion Capture(以下、PCC)の技術実証を行うものである。実証においては、新開発の低濃度CO2を吸収する固体吸収剤を使用するとともに、CO2を脱離するための蒸気生成にはガスエンジン排ガス等の未利用熱が利用される。
KCCは、川崎重工が長年培ってきた潜水艦や宇宙ステーション等の閉鎖空間における呼気由来のCO2を除去する技術を応用している。また、川崎重工が独自に開発した固体吸収剤を用いることで、従来の吸収液法よりも低い温度(60℃)でCO2を分離することが出来るため、CO2分離回収におけるエネルギー消費が削減できる。
今回の神戸工場での実証設備は、川崎重工の日本国内および米国の事業用発電所におけるKCCの実証成果を活かしたものである。PCCは、川崎重工の分散型発電設備の排ガスからのCO2回収に初めて適用される。DACは、将来の大型化に対応可能なモジュール構成を初めて採用し、今回整備する設備は国内最大級となる。これら2つの設備を用いて、今後の大規模展開に向けた技術的検証が行われる。また、設備の改良や吸収剤開発を自社で実施し、より迅速かつ確実な開発・製品化を進めることで、今後のCO₂回収事業の推進が加速される。
| KCC型式 | DAC | PCC |
| 回収元 | 大気 | ガスエンジンからの排ガス |
| 回収量 | 100~200 ton-CO2/年/モジュール | 360 ton-CO2/年 |
| 脱離蒸気温度 | 60℃ | |
【注釈】
- DAC:CO₂濃度の低い大気中からのCO₂分離回収技術。大気からのCO₂を回収して貯留や材料に固定化することでネガティブエミッションを実現する
- PCC:排ガスに含まれるCO₂の分離回収技術。
