川崎重工、水素取引を支援する『水素プラットフォーム』の実証試験を完了。大林組と江藤産業の協業で水素SCにおけるPoC(概念実証)を実施

川崎重工は、第三者認証機関であるDNV※1 の支援を受けて、水素の製造から利用者に届けるまでにいたるサプライチェーン(以下、SC)全体のGHG排出量を算定する水素プラットフォーム(以下、本PF)での実証試験(以下、本実証試験)が完了したことを発表した。水素製造などの実設備にて取得したデータを使用したGHG排出量を算定する方法が、水素の炭素集約度※2 算定方法論を示した国際規格(ISO/TS19870:2023)に則していることを検証する。
地熱発電所を含む水素製造サイト外観
移動式水素ステーションとFCV外観

大林組が取り組む「大分県九重町 地熱由来水素利活用事業」を対象に、水素製造サイトを管理する株式会社大林組と、製造サイトからの輸送およびFCV(燃料電池自動車)へ水素を供給する水素ステーションを管理する江藤産業の協力を得て、水素SCにおけるPoC(概念実証)が実施された。

本実証試験では、地熱発電所の電力から水素を製造し、カードル※3に充填後、トラックで大分市内の水素ステーションまで輸送、FCV(燃料電池自動車)に充填するところまでの、製造から消費手前までのSC全体が対象とされている。検証では、GHG排出源を特定し、電力消費量やカードル輸送の実走行距離などの排出源のデータに加えて水素量に関わるデータをセンサーや伝票などから取得し、GHG排出量および水素の炭素集約度の算定方法が、国際規格に則していることが確認された。

水素流通を「見える化」するデジタル管理システムを構築するために、まずはコア機能となる以下の2つのサービスから実証が行われた。

  • GHG排出量および炭素集約度評価および管理
  • 水素の所在地や炭素集約度等の属性情報管理によるトレーサビリティの確保

本実証試験で確認したコアとなる2つのサービスをベースに、今後は低炭素水素の認証支援や水素取引支援などの検討を行い、2028年頃の商用化が目指される。川崎重工は、本PFなどの事業を通して、低炭素水素の早期普及に協調する仲間づくりを進めていくとともに、水素の社会実装そして世界全体のカーボンニュートラル実現に向けて貢献していく。

※1 ノルウェー・オスロに本部を置く国際的な第三者認証機関・船級協会。世界最大級のサービス・プロバイダーで、オイル&ガス分野のリスクマネジメント、風力/電力送配電分野のエキスパート。

※2 炭素強度またはCarbon Intensity(CI)とも呼ばれる、製品(ここでは水素)1単位あたりのGHG排出量。

※3 水素ガスを充てんするための小型容器をまとめて固定した集合容器。

キーワードで検索する

著者プロフィール

Motor Fan illustrated編集部 近影

Motor Fan illustrated編集部