LIBは正極と負極の間にセパレーターを挟み絶縁する構造で、液体の電解質で満たされている。この電解液が可燃性の有機溶剤であり、そのためLIBは熱問題に悩んでいる。また、電解液中に異物が混入するなどしてセパレーターを破損させ、正負極が短絡すると異常発熱を起こし、発火や破裂の危険性がある。

 全固体電池とは、この有機系液体電解質を無機系固体電解質にしたもの。東工大・菅野教授×トヨタ加藤博士の研究により、Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3という材料が発見された。本材料は、有機電解質比2倍ものイオン伝導率を誇る超イオン伝導体だという。

各種二次電池との性能比較。急速充放電に優れるキャパシタを超える特性を持ち、エネルギー密度を眺めてもの各種電池いずれも凌駕している。耐久性についても確認、実用化済み電池と同等レベルと確保しているという。
有機電解質のイオン伝導率に匹敵するLi10GeP2S12(2 リチウム・ゲルマニウム・リン・硫黄)という材料について、ゲルマニウム低減を図ってさらに研究が積み重ねられ、その結果、Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3 が発見された。リチウムが連続して並んでいること(左)、結晶構造においても三次元での経路が確保されていることが見て取れる。

 固体電解質とすると、リチウムイオンだけが電荷を運ぶ化学反応になり、マイナスイオンが動かないことから熱の問題から解放される。幾重にも積層できるのもメリットで、そうすると電圧が上げられるとともにコンパクト化も実現する。加えて短絡の心配がないことから、負極に現在の黒鉛に代えてリチウムそのものを用いることができる。しかし、残念なことに上記材料では組み合わせ不可。課題が残るのである。

 とはいえ、道程はどうやら見えてきたようだ。電池に革命が起きれば、EVは激変する。それこそ、エンジンは危なくなるかもしれない。それほどの可能性を秘めているのである。続報を待ちたい。
(Motor Fan illustrated Vol.131)