IoT/DX/GX時代の通信環境においては、今後ますます無線技術が利用され、接続される端末数が増大していくことが予測される。それに伴い、機器同士の干渉が問題視されており、干渉を軽減できる通信方式が望まれている。 今回開発した技術では、これまで培ってきたWavelet OFDMにループアンテナを適用して磁界で通信を行うことで、通信範囲を簡単に制御できるようにした。Wavelet OFDMを用いた通信方式には、誤り訂正、ダイバーシティ、伝送路推定技術や暗号などロバスト通信に必要な機能とともに、CSMA/CA*3利用のキャリアセンスによる干渉回避機能も入っている。また、複数のモードおよびチャネルがあるため、無線LAN通信方式のように複数のチャネルを形成して干渉回避ができ、例えば隣接機器との距離が極端に近く、相互に干渉させたくない環境での利用などに最適。
さらには、Wavelet OFDMを用いた通信方式はもともと有線通信方式として開発されたもので、例えば幹線には有線の通信ネットワークを構成し、末端においてはPaWalet Linkとして無線接続するためのアクセスポイントを設置することで、有線通信/無線通信のハイブリッド通信環境を簡単に構築することが可能。
具体的な活用イメージとしては、ワイヤレス電力伝送と併用することで、移動体が駐車スペースで停車したところで、PaWalet Linkでネットワークに自動接続される。次に、認証&登録が行われ、正常に接続完了後に移動体へ充電が開始されるとともに、高速通信が可能となり利便性が広がる。
特徴
・近距離無線通信技術を用いた無接点での通信接続となるため、従来のコネクタ接続からの取り換えで保守メンテナンス性が向上。
・通信範囲や対象を狭く特定できることに加えて暗号機能も装備していることで、高セキュリティな無接点でのコネクションが実現可能。
・複数のモードおよびチャネル設定による干渉回避ができるため、相互に干渉させたくない環境での利用などに最適。
さらには上記特徴を生かした、水中や海中での通信方式としての活用も可能で、Beyond5Gなどに向けての新たな展開が期待できる。
通信方式 | Wavelet OFDM |
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最大通信帯域 | ~110 MHz |
最大通信速度 | 1Gbps(PHY) |
最大通信距離 | ~数十cm |
最大モード/チャネル | 9モード/15チャネル |
パナソニックは九州工業大学と共に情報通信研究機構(NICT)の「Beyond 5G研究開発促進事業 令和3年度新規委託研究」の一般課題について「海中・水中IoTにおける無線通信技術の研究開発」が10月4日に採択された。
*1 2021年11月10日時点 Waveletを利用し、モード/チャネル選択可能でセキュアな無線通信技術として世界初。
*2 Wavelet OFDM:Waveletとは、局在する波(有限長で速やかに減衰する波)の関数のことを指す。データに対してWavelet変換を施すことで周波数解析などに用いられる。本技術では、離散Wavelet変換の一種をOFDMに活用。
*3 CSMA/CA:Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidanceの略称。同一のチャネルに複数のユーザーがアクセスする際の競合を回避する方式。