三菱総研DCS:熟練技能者の暗黙知をAIに代替させる実証実験を開始

三菱総研DCSは、中島合金とともに、純銅鋳造製造工程における、熟練者の暗黙知を学習させたAIの実業務への適用可否を検証する実証実験を開始する。

 純銅鋳物にはCAC100番台のJIS規格が定められ、品質を一定水準に揃える必要がある。一方で、その製造工程には原材料の状態や環境条件など制御しきれないものが存在しており、このような製造条件のばらつきが純銅鋳造の難しさの一因となっている。

 中島合金は、製造工程の途中段階でばらつき具合を測定し、その値に応じて調整用の添加剤を適切量投入することで製品の最終品質を均一化する、熟練の技能を持っている。しかし、この技能を若手が継承するには長い時間がかかるという課題があった。そこで、中島合金とDCSはこの課題解決に着手し、AI技術を活用して「製造時のばらつき状態」と「添加剤の投入量」の関係を学習することで、熟練者の判断を再現できることが確認できた。本実証実験では、このAIの判定精度を向上させるだけでなく、予測時間が実用に足るか、また製造の現場技術者が利用するシステムとして操作性に問題はないかなど、システム全体としての業務適用可否を検証する。

■ 実証実験の概要
期間 2021年12月
対象業務 純銅鋳造製造における添加剤の投入量判断
対象視点 AIによる判定値の妥当性、現在の業務への適合性、システムの使いやすさ

■ 期待される効果
熟練技能継承の実現
 若手へ継承させることが難しい「調整具合の判断」を熟練者の頭脳から抽出し、若手でも活用可能なノウハウ資産へと昇華させることが期待できる。

熟練者活躍の場の拡大
 熟練者がその調整作業から解放されることで、より難度の高い業務(例えば別の製造作業の標準化等)に集中することが可能となる。

製造業の事業継続への貢献
 熟練者が持つ技能は、中小製造企業が他社との差別化を生む重要なノウハウであり、競争力の源泉。このノウハウを絶やすことなく次世代に引き継いでいくことは、製造企業にとって事業継続性の観点からも重要な課題と言える。

・本取り組みの詳細:https://www.dcs.co.jp/technology/report/manufacture/index.html

■ 技術の特徴
「難しいAI操作を難しく感じさせない」を製品コンセプトに開発している。多くのデータ分析ソフトウェアが統計学や機械学習の深い知識を前提としており、製造の現場技術者が使うには操作の習得に時間がかかるなど導入のハードルが高いのが実情。そこで、AIのオートチューニングアルゴリズムとUXデザインを駆使して、データサイエンスの知識がない現場技術者でも高いハードルを感じずに利用可能なデータ分析ツールとして開発している(特許出願中)。

■ 取り組みの背景
 製造業は、全産業の付加価値額の47%(※)を占める我が国を支える重要産業。その製造業における現状の大きな課題は、コロナ禍や働き方改革の流れもあり、生産性向上となっている。実現手段としてAI技術の利活用に注目が集まっているが、設備や体制の整備など多額の投資を伴うことからその取り組み状況は一部の巨大企業にとどまっている。
 DCSはこの状況を打開するべく「すべての製造企業にデータ分析のチカラを!」をビジョンに掲げ、サービスを企画・検討している。
※2020年経済産業省企業活動基本調査(2019年度実績)より
https://www.meti.go.jp/press/2020/03/20210331011/20210331011-1.pdf

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