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50%近いパワーアップを達成!
E07AエンジンにGTS4015HPをセット
ビートのデビュー当時、ボルトオンターボチューンを手がけた実績のある“エスプリ”。今回もオーナーのリクエストによって過給機チューンでいくことは決まっていたが、「エンジンルームに走行風が入りにくく、しかも抜けにくいリヤミッドシップ車では、ターボ装着による熱害の影響が大きくてトラブルの原因にもなりかねない。そんな時、HKSのGTスーパーチャージャーに新しいサイズが追加されたんよ。じゃあ、それを使ってみようとなったわけ」と前川代表。
選ばれたのはGTスーパーチャージャーシリーズ中、最小サイズとなるGTS4015HP。すでにGTS8550を軸としたJZA80(2JZ-GE)用キットを完成させ、ワンオフでUCF30(3UZ-FE)への装着も行っていたエスプリでは、ビートスーパーチャージャー仕様の製作は、軽自動車とHKS GTスーパーチャージャーのマッチングをテストする…という意味合いもあったそうだ。
ところが、いきなり大きな問題に直面。ビートに搭載されるE07A型エンジンは、クランクシャフトの回転方向が他の一般的なエンジンとは逆なのだ。つまり、クランクプーリーとスーパーチャージャープーリーを同一線上に配置したのでは、スーパーチャージャーが逆回転してしまうから過給できない。
そこで、両端にプーリーを設けたカウンターシャフトを追加。その上で、ワンオフブラケットを介してクランクプーリーとスーパーチャージャープーリーが背中合わせになるようにGTS4015HPをセットすることで、クランクシャフトとは逆回転(正転)でのスーパーチャージャー駆動を実現しているのだ。
左リヤタイヤの奥に見えるクランクプーリーはワンオフ品。その上にカウンターシャフトのプーリーが設けられ、ベルトを介して駆動される。
中央の黒いプーリーがスーパーチャージャー用。その奥が、カウンターシャフトのもう一方のプーリーになる。この構造によって、クランクシャフトの回転方向を逆転させてスーパーチャージャーを駆動しているのだ。
エンジンを真後ろから見たところ。中央はアルミ製ワンオフチャンバーで、3連スロットルボディに固定される。
右リヤサスペンション付近に装着されるのは、スーパーチャージャーのトラクションオイル用クーラー。HKS GTスーパーチャージャーは、ターボのようにエンジンオイルで軸受けを潤滑&冷却する必要がないため、エンジンオイルに対する熱的な攻撃が皆無というのが大きなメリットのひとつだ。
スーパーチャージャー化に合わせてインジェクターはNSX純正を流用。容量は公表されていないが、350cc前後と推測される。
ノーマルでDジェトロを採用するE07Aだが、正圧域の燃調をコントロールするために圧力センサーを追加。制御はF-CON iSが担当する。奥に確認できるHKSパワーフローは、助手席側サイドダクトから走行風を取り込む。
ちなみに、エンジン本体はフルノーマル。プーリー径によって最大ブースト圧は0.45キロに設定され、ノーマルの実測58psから86psへと50%近いパワーアップを果たしている。
リヤオーバーハングに吊り下げられたインタークーラーは、CR-Z用GTスーパーチャージャーキットのコアを流用。マフラーはビート用オリジナルパーツを取り扱うS,S,I製で、とても軽自動車とは思えない爆音系のエキゾーストサウンドが刺激的だ。
前川代表いわく「排気量が660ccしかないエンジンでスーパーチャージャーを駆動するとなると、結構パワーを食われるんやないか? と思ってたけど、全く問題なかった。特性も、4000rpmからの伸びが気持ちよくて8000rpmを超えても頭打ち感はないよ」とのこと。
圧倒的なパワーフィールを求めるビート乗りは、チューニングの選択肢の一つに加えてみてはいかがだろうか。
TEXT:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)
●取材協力:エスプリ 三重県鈴鹿市住吉3-19-1 TEL:0593-70-8080