「このR32スカイラインセダンはクリーンすぎる!」アメリカGReddyのスタッフが溺愛するR仕様

アメリカのセダン好きが手がけた4ドアGT-R

心臓部はRB26改GTX3582Rタービン仕様

数ある日本のアフターパーツブランドの中で、GReddyはアメリカでも特によく知られた存在だ。フォーミュラ・ドリフトやヒルクライムを通じて知名度を高めた成果は、約46万人に登るインスタのフォロワー数にも表れている。

アメリカにおけるGReddyブランドの運営会社である“GReddy Performance Products Inc.”は、カリフォルニア州アーバインにある。そのR&D/モータースポーツ部門で働くベン・シュワルツは、主にレースマシンのメンテナンスを担当するメカニックだ。シーズン中は限られた人数で全米各地を転戦するため、部品の修理から雑用に至るまで、仕事の幅は実に広い。

そんなベンの愛車は、1989年式のR32スカイライン。R32が正規輸入されていなかったアメリカではそれだけでもレアだが、さらに意外なことに4ドアセダンだ。1989年デビューのR32は、通称25年ルールと呼ばれる中古車の輸入規制からは順に解禁されてきたので、所有すること自体は昔ほど不思議ではなくなっている。だが、ベンのR32は、ありとあらゆる面からいってレアさの濃度が他と違うのである。

まず、ベンが購入した車両は、RB20E型直列6気筒OHCを搭載したGTEというグレード。4ドアでノンターボ、しかも4速ATという、スポーティさとは程遠い仕様だ。

アリストやチェイサー、4ドアのシビックやインテグラなどをフェイバリットとして挙げるほど、セダンが大好きなベン。R32の4ドアは旅行で日本を訪れたときに初めて見たそうで、「いつか手に入れてアメリカで乗りたい!」と胸を躍らせたそうだ。そしてその夢は意外に早く叶うこととなる。フォーミュラ・ドリフトの遠征で訪れたフロリダの地で、日本から輸入された走行4万5000km、フルノーマルのGTEと偶然にも巡り会ったのである。

「娘が二人いるんだけど、最初は普通にファミリーカーとして使うつもりだったんだ。でも、エンジンくらいは載せ換えようと思って日本の友人に相談したら、手っ取り早くドナーとなるBNR32を日本から輸入しようという話に発展したんだよ」。

ベンがそう語る通り、パワートレインにはBNR32から移植されたRB26DETTと、HCR32用の5速MTを搭載。タービンはギャレットのGTX3582Rを使用し、インタークーラーやインマニ、タイプFVブローオフバルブなど、吸排気系や冷却系にはGReddyのハイパフォーマンスパーツを惜しみなく投入している。

燃料系は、オリジナルのフレックスフューエルシステムを導入することでエタノール系燃料も使用可能とし、デッチワークスの大容量インジェクターなどを採用。制御にはハルテックのエリート2500を使用している。φ3.5インチのダウンパイプとエキゾーストパイプは、オーナーのベンが自らファブリケートした。

タイヤ&ホイールはアドバンレーシングRG-D2とアドバンネオバAD08Rの組み合わせ。リヤのサブフレームはS15シルビアから移植されている。

サスペンションにはKWの油圧式リフトシステムであるHLSが投入され、ストリート走行向けとショー向けの車高を自在に調整可能。ブレーキはブレンボがストリート向けに開発した6ポットのグランツーリスモBBKキットを贅沢に使用する。

エクステリアは、スカイラインGT-Rニスモのフロントバンパーとカーボン製フロントスプリッターを装備。ヴェルテックスのサイドスカートとリヤバンパーも装着され、グッとスポーティなスタイリングを生み出している。SEMAショーに出展された際に貼られていたステッカー類は剥がされ、街の風景に溶け込むスリーパー感が高まった。

街乗り仕様というのに、まったく生活感を感じさせないインテリア。GReddyのプロフェックOLEDブーストコントローラーやシフトノブ、RacepakのIQ3ダッシュメーターなどが備わり、スポーティなムードが高められている。

GT-Rから純正バケットシートを移植しているところも、いかにもスリーパーっぽいメイキングポイントだ。

トランクルームにはハイドロサスのポンプ、バッテリー、燃料のコレクタータンクを装備する。

「当初はプライベートなプロジェクトだったんだけど、会社の同僚とディスカッションしていたら、いつしかそれをSEMAショーに出そうということになって、もう大変(笑)。本当に時間がない中で仕上げたんだけど、結果的に良い形でGReddyのアピールもできてハッピーだったよ」。

そう、RB26DETTに換装されたベンの美しいR32スカイラインセダンは、2016年のSEMAでGReddyブースの顔として展示されたのだ。もちろん、生きるショーケースとして数々のGReddyパーツも装着され、全米の注目を集めた事は言うまでもない。

現在は、当初の予定通りストリートカーとして地元カリフォルニアを走り回っているベンのスカイライン。右ハンドルの運転にも慣れてきたところだ。街行く人が「あのクルマはなんだ?」という表情で振り返る様子を見るのが、今ベンにとって至上の喜びとなっている。

PHOTO:Akio HIRANO/TEXT:Hideo KOBAYASHI

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