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優れた処理速度は旧車の潜在能力覚醒にも寄与!
街乗りマシンから競技車両までこなす実力派ショップのセッティング術!
今を遡ること10年前。チューニング界で“LINK(リンク)”という言葉が聞かれ始めた当初からその潜在能力の高さに目をつけ、フルコン化を行う際のメインユニットとして使用してきた熊本県の“オートワークスバンディット”の山口さん。
「当時はフルコンと言っても制御を純正ECUに委ねる部分も多く、アイドルコントロール一つ取ってもハーネスの作り替えが必要でした。これに対しLINKは単体できめ細やかなセットアップが可能で、バルタイやブーストコントロールも1つのボックス内で完結できるから車内もスッキリ。使い手側の立場で考えられたソフトウェア類も大きな美点ですね」。
この他、LINKのメリットとして山口さんが挙げるのが、秀逸なデータロガー性能。競技車両の開発現場では、限られた時間内でテスト走行と問題点の分析を行う必要があるが、LINKはデータの引き出しが非常にスピーディ。しかもロガーの監視範囲が広く、空燃比のズレなどウィークポイントが明確に表示されるため、迅速かつ適切な対処が可能となっている。
ここで、オートワークスバンディットが仕上げたLINK制御マシンのサンプル例を見ていこう。このBNR32は街乗りからサーキット走行までこなす500ps仕様となるが、「多連スロットルのターボチューンにもLINKは大きなメリットを発揮します」とは山口さん。
というのも、負圧制御だけでは補正に手間がかかる他、マップもピーキーな設定になりがちだが、LINKでは燃料はスロットル軸、点火は圧力軸というように分割し、常に空燃比基準で修正を加えていくことができるため、パーフェクトなセットアップが可能になる。
フォーミュラDジャパンに参戦している田中友紀選手のJZX100も、バンディット山口さんがエンジンメイクを担当。プライベート的な体制ながら、2023年シリーズはランキング18位と大健闘した。
「オーバーホール無しで2シーズンを戦い抜かなければならないため、耐久性を重視した仕様となっています。現在のエンジンがちょうど2年を終えたところ。来季はLINKをKUROFUNEからG4Xエクストリームに変更して、NOSを追加するなど900ps以上のパワーを狙います」。
腰下はHKSの3.4Lキャパシティアップグレードキットで排気量を底上げ。そこにブライアンクロワーの276度ハイカムやG35タービン、レクサス用74φ電子制御スロットルなどを投入しながらパフォーマンスを高めている。
ラジエターは車体後部にマウント。電動ファンコントロールはLINKのPWM制御を使い、冷間時はスロー回転に設定するなど、ファンの回り過ぎによる電圧低下や燃調への影響を排除している。
ブルーのシリコンホース付きがウォーターポンプ。左側はラジエターやオイルクーラーのウォータースプレー用ポンプだ。
LINKのボックスはシフトレバー前方(ミッションはOS88シーケンシャル6速)に装着。CAN対応のためAEMのダッシュロガーとの連携も可能だ。
「定番チューニングベースも、大半が年式的にガタがきている時期。何がなんでもオリジナルで…と言われるなら話は別ですが、純正ECUの修理に費用をかけるより、LINK制御にした方が電装系のマイナートラブルも防げるし、結果的にご満足いただけるかと思いますよ」と山口さん。
オートワークスバンディットでは、実走状態と同等の負荷を掛けながらセッティングを煮詰めすためにダイノコム製ダイノXを新たに導入するなど、ECUチューンに注力するための設備投資も怠らない。
あいにくピットは現在、来季のフォーミュラD用エンジンの製作を始め、他のLINK案件で作業予約待ちの状態が続いているが、心から納得できる完成度を求めるなら、その列に並ぶ価値は絶対アリだ。
●問い合わせ:オートワークスバンディット 熊本県熊本市東区戸島町557-2-2 TEL:096-201-2783
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