「いすゞ魂の最後っ屁!」激レアなピアッツァ181XE/Sハンドリングバイロータスを捕獲

4灯セミリトラ採用なのにまるで垢抜けないスタイル!

生い立ちからしてややこしい!いすゞ最後の乗用車

真横のフォルムから“マヨネーズ(の容器)”などと陰口を叩かれた初代に代わり、1991年8月に登場したJT221F型2代目ピアッツァ。ルーツはJT15/19系3代目ジェミニに端を発し、乱発が美徳だった(?)バブル期のこと、様々な枝分かれモデルが存在する。非常にややこしいのだが、そこを理解しないと2代目ピアッツァの立ち位置が見えてこないので解説しよう。

当初、4ドアセダンのみで展開してた3代目ジェミニの2ドアクーペ版として、まずアメリカのGMブランドから『ジオ・ストーム』が登場。これには、アメリカのいすゞブランドで販売された『インパルス』というバッジ違いのモデルがある。その日本仕様こそ、1991年8月に発売された2代目ピアッツァの正体なのだ。

さらに、ジオ・ストームの日本仕様がヤナセ扱いの『PAネロ(1990年5月)』、フロントマスク違いが『ジェミニクーペ(1990年9月)/ハッチバック(1991年3月)』になる。

そんな生い立ちの2代目ピアッツァは、普及モデルXEと上級モデルXE/Sの2グレードで展開。いずれもエンジンは150ps/17.5kgmを発生する1.8L直4DOHCの4XF1型で、ミッションには5速MTと4速ATが用意された。

また、メカニズム面での注目はロワアームにパラレルリンクを採用したストラット式リヤサスで、横Gに対して後輪がステアするパッシブ4WS機構を搭載。これが開発者・西堀さんの名を冠した、有名な“ニシボリック・サスペンション”だ。賛否両論のシステムだが、2代目ピアッツァの変態度をより高めるスパイスになっている事は間違いない。

それと足回りでは全モデル“ハンドリングバイロータス”である点にも注意! 先代まではサスチューンを施した特別モデルだったが、開発初期段階からロータスが絡んだことで“ハンドリングバイロータス”が標準になってしまったわけ。

結局、いすゞは1993年に乗用車(SUV除く)の生産を終了するのだが、最後の新型車として世に放たれたのが2代目ピアッツァで、生産期間はわずか1年7ヵ月という短命モデルだったのだ。

初代はジウジアーロデザインのスタイリングが特徴で、大きな話題にもなったのだが、その面影をまるで残さなかった2代目ピアッツァ。これでカッコ良ければ問題はないが、ご覧の通り非常に微妙なのだ。

ヘッドライトは丸目4灯のセミリトラクタブル式を採用。カバーは中途半端な開き方しかしない。ゆえに「だったら、普通の固定式ヘッドライトでも良かったのでは」と思えなくもない。

4つのタイヤに対してボディ全体が若干前進してるような、見る者が思わず不安な気持ちになる真横からのアンバランスな眺めもまた、2代目ピアッツァで熱く語られるべきポイントだ。

それをよく表してるのが、やたら長いフロントオーバーハングと、極端に短いフロントフェンダーアーチ後端~ドアパネル前端の実にアンバランスな比率。ウエストラインから上だけを見れば、ABCピラーや前後ウインドウの傾斜角など非常に美しいデザインなのに、タイヤの配置を間違えてしまった(?)がゆえ、全てが台無しになってしまっているのだ。

ドアノブも凝っていて、パネル内側にレバーが。これだけで真横から見た印象は、随分とスッキリしたものになる。ただ、オーナーいわく「初めての人はドアを開けられませんね(笑)」とのことだ。

181XE/Sの標準装着ホイールはBBSだが、取材車両はワークEWINGに交換。タイヤは標準と同じ205/50-15サイズのトーヨーDRBが組み合わされる。

80年代後半から90年代前半にかけて流行った、メータークラスター両脇のサテライトスイッチが特徴的なインパネ。右側にスモール&ヘッドライト関係、左側にワイパーの各スイッチが設けられる。メーターはスピードメーターの右側に水温&燃料計、左側にタコメーター、その上に電圧計と油圧計が配置される。また、上級グレードXE/Sはオートクルーズも標準装備。

センターコンソールは上段にオートエアコンの操作パネル、下段にAM/FMチューナー付きカセットデッキが備わる。オートクルーズを含め、XE/Sは当時のテンハチクラスとして装備が充実してたと言っていい。

ミッションは写真の4速ATと5速MTが用意されていた。ATはサイドブレーキ脇のスイッチによって、各ギヤを固定してスポーティな走りに対応するマニュアルモードと、燃費重視のエコモードを選ぶことができる。

前席にはサポート部をレザー、それ以外をモケットとしたレカロシートが標準装備。もう30年選手だが、硬めで芯のある座り心地は、さすがレカロである。

ブレーキペダルには、ご丁寧に「BRAKE」の刻印が。

一方の後席はプラス2的なスペース。背もたれは低いし、リヤウインドウがすぐ頭上に迫ってるしで、大人が長時間乗るにはかなり厳しい。

ラゲッジスペースは後席を起こした状態でも、前後&左右方向、深さともに十分でかなり実用的。一体型の後席背もたれを前倒しすれば、さらに容量を稼ぐこともできる。

エンジンは、JT19系2代目ジェミニに搭載された1.6L直4DOHCの4XE1型をベースにストロークを11mm伸ばし、φ80.0×90.0mmのロングストローク型となる1.8Lの4XF1型。ハイオク仕様で、圧縮比も4XE1の10.0から10.3に高められている。

7000rpmで最高出力を、5000rpmで最大トルクを発生するスペックを見る限り、結構な高回転高出力型を想像していたが、実際は低中速トルクがたっぷりあって、100km/h前後での巡航(取材車両は4速ATで2400rpm)や、そこからの加速が気持ち良かったりする。

それより感心したのが、走行安定性の高さ。車重は1100kg台半ばと、今時の基準に照らし合わせれば軽量な部類に入るが、その車重からは想像できないほどの安定感を見せながら、ビタリと走ってくれるのだ。それは、今や国産車並みによく見かけるVWポロだったり、時代を遡ればキムタクと常盤貴子のドラマでブレイクしたオペルヴィータだったり、つまりはドイツのコンパクトカーに近い感覚でもある。

これは、ボディ剛性がしっかりしてることの証に他ならないわけで、生産から30年経った今でもそれを体感できるのは、当時いすゞがいかに真っ当なクルマ作りをしていたのかという事を物語っている。

生い立ちも見てくれも、かなりおかしなことになっているのに、クルマとしては至って真面目。そのギャップの大きさに魅力を感じるのであれば、2代目ピアッツァのオーナーになる資格は十分ありだ。ただし、中古車のタマ数が激少だから探すのは相当苦労するが…。

■SPECIFICATIONS
車両型式:JT221F
全長×全幅×全高:4225×1695×1315mm
ホイールベース:2450mm
トレッド(F/R):1430/1405mm
車両重量:1160kg
エンジン型式:4XF1
エンジン形式:直4DOHC
ボア×ストローク:φ80.0×90.0mm
排気量:1809cc 圧縮比:10.3:1
最高出力:150ps/6400rpm
最大トルク:17.5kgm/5000rpm
トランスミッション:4速AT
サスペンション形式(F/R):ストラット/パラレルリンクストラット
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ(FR):205/50-15

●TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

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