「510ブルーバード好き垂涎のチューンド、現る」独自にL18エンジンのDOHC化に成功!

輸出用KA24エンジンのヘッドをL型に搭載!

かつて夢見たレーシングパーツを現代に蘇らせる

510系のブルーバードに搭載されるL型4気筒エンジンはL13からL18まで計4種存在するが、これらは全てシングルカムのOHCモデルだ。

そんなL型4気筒エンジンの性能を底上げする必殺パーツとして当時存在したのが、OS技研のTC16や日産レース用のLZなどに代表されるツインカムヘッド。流通量が少なく高価だったため、チューニング好きの510乗りにとっては羨望のレーシングパーツだった事は言うまでもない。

その“幻のパーツ”を現代に蘇らせたいと考えたのが、“ビンテージガレージ・フリーク”の森村さん。とはいえ、当時モノのツインカムヘッドが手に入るわけもなく、個人やショップレベルで製作するなど不可能に近い。

そこで、L型4気筒と同系統の後継エンジンであるKA24(シルビアの輸出仕様などに採用)からツインカムヘッドを移植する事を考案。

このエンジンはL型4気筒エンジンとボアピッチなどが同じで、冷却水経路・オイル経路も少し加工すればヘッドとブロックが共用できる範囲内だったという。

簡単な気持ちでスタートさせたプロジェクトだったが、実際に作業を開始するとトライ&エラーの連続。カムの駆動チェーンの辻褄合わせなど、ひとつひとつ問題をクリアしながら、何とかL18改ツインカムヘッド仕様の完成にこぎつけたのだ。

ベースエンジンはL18で、エンジン内部はL14コンロッドとCPの89φカスタムピストンを使って2.0L化。そして、KA24ヘッドにはブライアンクロワーの264度ハイカムを投入し、吸排気効率を引き上げている。

当時のレーシングカーをイメージして加工したというカムカバーにはKA24エンジンの面影はなく、ブルーバード世代に馴染む仕上がりだ。

燃料系は旧車らしくキャブレターで制御。使用するのは今となっては貴重なウエーバーの45φ。当時は万人に調整できる便利さも謳われた機械式のキャブだが、現在ではカスタム&チューンに関わるメカニックであっても、そのセッティング技術を受け継ぐ人物は減りつつある。

排気系は、KA24DE用としてアメリカで市販されているEXマニにアルスター製のマフラーを合わせる。未レストアのボディに違和感なく溶け込むよう加工も施されている。

足回りは寄せ集めパーツで構築したためアピールポイントは無いと言うが、フロントブレーキは当時スポーツオプションでもあったMK63キャリパーが与えられている。ホイールは定番のRSワタナベで、タイヤサイズは175/65R14だ。

内装はノーマル然とした仕上がり。ドライバーズシートに与えられているのは、ダットサンバケットタイプ。当時風を求めるユーザーから根強い人気を誇るパーツのひとつだ。

ちなみに、ベース車は1972年モデル(L14エンジン搭載)。趣味的に製作したエンジンを搭載する実験車両という事もあって、本格的なレストアは行われておらず、部分的なリフレッシュ程度で留めている。

KA24をそのまま換装すればてっとり早い気もするが「それもアリですが浪漫がないじゃないですか(笑)」とはビンテージガレージ・フリークの森村さん。

そう、このブルーバードが製作された理由は『作りたかったから』、ただそれだけなのだ。技術者ならではの探究心こそが、チューニングの原動力と言うわけだ。

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●取材協力:ビンテージガレージ・フリーク 奈良県大和郡山市筒井町890-1 TEL:0743-25-5165

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