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後席の居住性よりスタイルを重視。バブルが産んだ4ドアハードトップ
ピラードタイプでボディ剛性を確保!
もしかしたら、至近距離でマジマジと見るのは初めてかもしれない。初代PR10型プレセアを前にしてつくづく思ったのは、「人間の感覚は歳とともに変わるんだなぁ…」ということだ。
本来、クルマというものには必ず備わっているはずのフロントグリルが見当たらず、横長な楕円形のヘッドライトは表面を刃先の丸い彫刻刀でさらったような凹形状。横長ヘッドライトとグリルレスの組み合わせは、デザイン的にインフィニティQ45にも通じるものがある。
当時、それらが織りなすフロントマスクは異質以外の何者でもなかったのに、登場から30年以上が経った今見ると、本気で「カッコ良い!」と思ってしまうのだからどうしようもない。
初代プレセアは、当時流行ってた全高低めの4ドアハードトップとして1990年に登場。初代カリーナED/コロナEXiVやペルソナ/ユーノス300がセンターピラーレスだったのに対し、初代プレセアはボディ剛性を確保しやすいピラードハードトップだった。
グレード構成はシンプルで、装備充実のCt.IIとベーシックなCt.Iの2つ。それぞれに2.0LのSR20DE型(140ps/18.2kgm)、1.8LのSR18Di型(110ps/15.3kgm、1992年にSR18DEを追加)、1.5LのGA15DS型(94ps/12.8kgm)と3種類のエンジンが搭載され、ミッションは全てに5速MTと4速ATが用意された。
取材車両はCt.IIの1.8Lモデルで4速AT仕様。純正オプションの13インチアルミホイールを装着する。全高が1320mmに抑えられているが、その分、座面も低いため、少し気になっていた天地方向の圧迫感はなし。
エンジンはP10プリメーラやU12ブルーバードなどにも搭載されたシングルポイントインジェクション仕様のSR18Di。カムカバーとバルクヘッドの間に設置された大きなエアクリーナーボックスが特徴だ。
4速ATとのマッチングも良く、街中をキビキビ走ってくれる。それでいて吹け上がりも軽快。回していったところでパワー感には乏しいけれど、1060kgという車重に対して110psは過不足なく、少なくとも動力性能に不満を覚えることはない。
ブラウン基調で落ち着いた雰囲気のインテリア。ダッシュボードは曲面を多用した凝ったデザインで、ステアリングホイールのセンターパッドには車名ロゴが入る。
メーターは、スピードメーターとタコメーターが中央に配置され、右側に水温計、左側に燃料系が並ぶ。
センターコンソール中段に設けられたプッシュオープン式のカード入れ。開けてみると、当時、販促品として配られたと思われるテレホンカードが! こういう“隠し球”を用意しているオーナーは変態確定だ。
個性的な外装と並んで、内装もプレセアの大きなセールスポイントだった。それをよく表してるのがシート。主力グレードのCt.IIでは表皮にツイードとモケット、オプションで本革&専用クロスのコンビが用意され、カラーと合わせて7タイプから選ぶことができた。
スタイル重視のセダンゆえ、後席は座面をえぐることでヘッドクリアランスを確保。全高が低いわりに、居住性は悪くない。
足元を飾るのは車名ロゴ入りセンターキャップを持つ純正アルミホイール。そこに185/70R13サイズのエナセーブEC202が組み合わされる。
居住性よりスタイリング重視の4ドアセダン。本末転倒と言えばそれまでだが、セダン人気がガタ落ちしたのは、こうした個性的なモデルが無くなったのも大きな理由のひとつだと思う。
■SPECIFICATIONS
車両型式:PR10
全長×全幅×全高:4395×1690×1320mm
ホイールベース:2500mm
トレッド(F/R):1445/1425mm
車両重量:1060kg
エンジン型式:SR18Di
エンジン形式:直4DOHC
ボア×ストローク:φ82.5×86.0mm
排気量:1838cc 圧縮比:9.5:1
最高出力:110ps/6000rpm
最大トルク:15.3kgm/4000rpm
トランスミッション:4速AT
サスペンション形式(F/R):ストラット/パラレルリンクストラット
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ドラム
タイヤサイズ(FR):185/70R13
TEXT&PHOTO:廣嶋ケン太郎