目次
各部にワンオフパーツが奢られた拘りのBG8Z型GT-X
ミッションはアテンザ用ギヤを使って強化!?
レアな7代目ファミリアGT-X(BG8Z)の走行会仕様だ。このGT-Xというモデルは、マツダがWRC参戦を狙って市場(1989年)に送り出したフルタイム4WDのホットモデル、心臓部は180psを発揮するBP型の1.8Lターボを搭載。後に、タービンの大型化やチタンコンロッドの採用などによって210psまでパワーを高めた“ファミリアGT-R”がデビューし、世のクルマ好き達を歓喜させたのだ。
ボディ形状は3ドアハッチバックと4ドアセダンが用意されていたが、今回の取材車両は3ドアハッチバックだ。チューニング&メンテを担当するのはロードスターチューンを得意とする“メカドック”、細部を見ていこう。
まずタービン。純正はIHIのC7サイズで、通常なら3.0Lクラス等に組み合わせるシロモノだ。そのため、ブーストアップで軽く250psを超えるポテンシャルを持っているが、反面ブーストの立ち上がりが唐突でいわゆるドッカン特性。
そこでこの車両は、純正EXマニにT25フランジを溶接して、GT2530タービンへのサイズダウンを敢行。同時にインタークーラー周りもワンオフで製作し、ブーストレスポンスに優れるパワーフィールに導いた。
腰下はオーバーホールと同時に、ファミリアGT-Rのコンロッド&クランク、そしてスーパーテックの85φローコンプ鍛造ピストンを導入してボアアップ。
さらにヘッドは、吸気ポートが大きいNA8Cロードスター用を加工装着。縦置きエンジンのヘッドを横置きで使うため、ヒーターホースに繋がるバイパスパイプの打ち替え等の加工が必要になるが、効果は絶大とのこと。カムは272度。制御はモーテックM4が担い、ブースト1.0キロで286psを発生させている。
点火系は、TMワークス製の“IgniteVSD alpha 16v”で16Vまで昇圧。イグナイターはNA6用を使い、イグニッションコイルは永井電子の強化タイプだ。
ミッションはGT-Ae(限定300台の競技ベースモデル)の5速クロスを組んでいるが、3速ブローを機に3速のメインとカウンターギヤをGH型アテンザ用に変更。「歯数や内径が同じギヤを探しまくって、やっと見つけたんですよ。シャフトとギヤを焼き入れした上でメッキ加工して強度も上げてます。シンクロもダブルコーン化できるため、シフトフィールが劇的に改善されました」とは、メカドック大槻代表。
クラッチはファミリア用の強化品がほぼ存在しないため、選択肢を広げるためにオリジナルのレリーズカラーを製作。これにより、ロードスター用の強化クラッチを組めるようにしている。この車両はORC-309をチョイス。
駆動系はフロントが純正ビスカス、リヤがカーツの1.5ウェイ。ドライブシャフトは非等長のままではトルクステアが強いため、ワンオフのジョイントカラーを介してNA6の等長ドライブシャフトを流用している。
足回りは、アメリカのBCレーシング製(F14kg/mm、R10kg/mm)を軸に構築。国内のアフターメーカーからも車高調は販売されているが、そのどれもが正立式。
それではロッドが曲がる恐れがあるため、本来ファミリアには倒立式がベターだ。そこでメカドックは世界中から情報を集め、倒立式でお手頃価格のBCレーシング製に辿り着いた。「価格は15万円+送料4万円くらいでしたね」とのこと。
ボディはオーナーが好意にしている鈑金屋で製作した、渾身のワンオフオーバーフェンダー仕様となる。そこに組み合わせるホイールは15インチのボルクレーシングTE37で、タイヤにはプロクセスR1R(225/45-15)をセット。
その他、オイルポンプにはギヤ厚が0.5mm大きいNB2用を加工して使っていたり、トランクパネルをワンオフで製作していたりと、各部にメカドックらしい独自のチューニング&カスタムが満載。「2009年にモーテックのセッティングをお願いされてからの付き合いなので、もう10年以上ですね」と、トランクパネルの型を手に大槻代表が語る。
チューニング手段が少ない上に廃盤パーツも多く、維持するのにも一苦労のファミリアGT-X。しかしメカドックのようなショップが存在する限り、オールドマツダがこの世から消滅する事はないだろう。
●取材協力 メカドック 埼玉県富士見市下南畑661-1 TEL:049-265-4987
記事が選択されていません【関連リンク】
メカドック
http://www.mecha-doc.com