「バブルが生み出したマツダ入魂の1台?」兄弟車なのにファミリアとはまるで異なるボディを持つ3代目フォード・レーザーセダン

5つのボディバリエーションで幅広く展開!

フォードの哲学“ベスト・イン・クラス”が息づく質感

初代から5代目まで、一貫してファミリアのOEM車というスタンスが変わらなかったレーザー。ここで紹介するのは3代目BG型で、バブル景気真っただ中の1989年4月に発売された。

BG型レーザーは4ドアセダンと、ノッチ付きリヤゲートを持つ3ドアクーペで展開。まず注目したいのは、ボディパネルがベースのファミリアとは全くの別物とされ、3ドアクーペに至っては専用設計のボディ(モノコック)が与えられていることだ。

ちなみに、初代~2代目、4~5代目はボディパネルがファミリアと共用。つまり、歴代レーザーで最もコストをかけて開発されたのが、この3代目BG型ということになる。

レーザーセダンのグレードは、基本的に上からGHIA(ギア)、GL-X、LXの3つ。ただし、GHIAには1.6L直4DOHCのB6型(130ps/14.0kgm)に加え、1.5L直4DOHC(110ps/12.9kgm)と同SOHC(91ps/12.4kgm)となる2種類のB5型を搭載。

また、GL-XにはSOHC版B5型、LXには1.3L直4SOHCのB3型(76ps/10.3kgm)と1.7Lディーゼル直4SOHCのPN型(58ps/10.7kgm)、計5種類のエンジンが用意されたから、実質的には6グレード構成と言えた。ミッションは5速MTまたは4速ATで、B3型搭載のLXのみ4速MTまたは3速ATが組み合わされた。

取材車両は、SOHC版B5型を載せる1500GHIAの4速ATモデル。ほぼスクエアストロークで、SOHCながら4バルブヘッドが与えられたエンジンを搭載。カムカバーにはフォードの刻印が入り、ファミリアとの差別化が図られる。燃料供給は電子制御キャブレターが担当。同じB5型でもDOHC仕様は電子制御噴射装置(EGI)になるのが大きな違いだ。

角が取れて全体的に丸みを帯びたスタイリングを眺めつつ、細部を見ていく。

強くスラントしたフロントマスクや前後バンパーとサイドモールに加えられたメッキモール、ブラックアウト処理されたCピラー、フラット化が図られたリヤホイールアーチ上端、水平基調のリヤコンビネーションランプ…など、ファミリアがベースであるとは思わせないほど、レーザーセダン独自のスタイルを構築。こうなると、「1.6Lクラスの大衆セダンなのに、よくもここまで作り分けたな」と感心するしかない。

一方、車内空間は、全長4.3m弱の5ナンバーセダンとしてやたらとゆとりがある。運転操作機能とメーター類を最適な位置に集中させ、ドライバーの目や動きを考慮してデザインされたダッシュボード。ウレタン製2本スポークステアリングホイールはGHIAシリーズ専用装備で、GL-X以下はPVC製3本スポークタイプとなる。メーターは、スピードメーターを中心として右側にタコメーター、左側に水温計と燃料計が並ぶ。

センターコンソールは上からデジタル式時計とリヤデフォッガースイッチ、エアコン吹き出し口、エアコン操作パネル、2DINオーディオ、シガーライター&灰皿。オーディオは標準AM/FM電子チューナー+2スピーカーに対して、取材車両はオプションのカセット付きAM/FM電子チューナー+CDプレイヤーを装着。ちなみに4ドアセダンはアルパイン製、3ドアクーペはパイオニア製となる。

GHIAシリーズの前席はサポート性を高めたバケットタイプ。運転席にはシートリフターが備わり、シートベルトショルダーアンカーも高さ調整式となる。

後席にはセンターアームレストが備わり、廉価グレードのLXを除いて背もたれは60:40分割可倒式でトランクスルーが可能。なんでも身長180cmの大人5名が快適に乗れることを目指したとのこと。実際、身長175cmの人間が後席に座ると前後、天地方向ともに余裕があって、カタログにうたわれた“国際水準の居住空間”という言葉にも偽りなしだ。

オーディオとセットオプションだったと思われるリヤスピーカー。アルパインのロゴの下に小さくフォードのロゴも入る。

SAE規格で368Lの容量を誇るラゲッジルーム。凹凸を極力なくしたフラットなスペースで、バンパー直上から幅いっぱいに開くフルオープンタイプのトランクリッドを採用。荷物の積み降ろしがしやすく、使い勝手の良さを高めている。

純正13インチスチールホイールにフルキャップを装着。タイヤは標準175/70R13サイズのエナセーブEC202が組み合わされる。また、フロントフェンダー後端にはGHIAと1.5 16バルブのエンブレムが取り付けられる。

運転席に移動して試乗に出る。SOHC仕様のB5型エンジンはトルク特性が低中速域に大きく振られ、さらに1010kgという車重もあって、排気量1.5Lにしてはゼロ発進から力強く前に出る。

電子制御式4速ATも完成度が高く、変速ショックが抑えられていることに加え、オーバードライブに入る50~60km/h以上の静粛性や快適性も抜群に良い。

もうひとつ、直進時はピタリと安定した走りを見せながら、ステアリングを切り込むとノーズが気持ち良くターンインし始める。ここでも車重の軽さを実感。

さらに、4輪ストラット式サスペンションと175幅のタイヤによってクルマの動きは軽快だし、少しペースを上げてワインディングを走るくらいなら路面追従性も悪くなく、コーナリング時の姿勢だって安定している。加えて、サイドウォールが高い13インチの70扁平タイヤは、路面の継ぎ目や段差を越えた時の衝撃吸収性にも優れているなど、タウンユースでストレスを感じないのが素晴らしい。

ベーシックカーとしての実力は申し分なし。そこに、少しお洒落な雰囲気と軽快な走りがプラスされているなら、これ以上何を求めよう。当時、同じクラスにはカローラ/スプリンター、サニー、シビック、ランサー/ミラージュとビッグネームが名を連ねていたが、中でもレーザーセダンは個性的な1台だったと思う。皮肉なのは、その良さが今になって分かったことだ。

■SPECIFICATIONS
車両型式:BG5PF
全長×全幅×全高:4270×1695×1375mm
ホイールベース:2500mm
トレッド(F/R):1430/1435mm
車両重量:1010kg
エンジン型式:B5
エンジン形式:直4SOHC
ボア×ストローク:φ78.0×78.4mm
排気量:1498cc 圧縮比:9.6:1
最高出力:91ps/6500rpm
最大トルク:12.4kgm/4000rpm
トランスミッション:4速AT
サスペンション形式:FRストラット
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ドラム
タイヤサイズ:FR175/70R13

TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

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