Z32ひと筋30年というマニアの生態に迫る!
日本中がバブル景気に湧いた1989年に登場し、先進的なフォルムで一斉を風靡したZ32フェアレディZ。グランドツアラーとしての色を濃くしたラグジュアリースポーツは、オシャレな若者たちを魅了した。
その一方で、アンダーグラウンドな世界でも存在感を発揮。カリカリにイジリ倒したフルチューンで最高速に駆り出す本気組も多かった。カタログ値で280psを発揮するV6・3.0Lツインターボエンジンはもちろん、空気抵抗の少ない流麗なフォルムも大きな武器となった。
「Z32は2シーターと2by2がありますが、自分のは全て2by2です。実は2by2はホイールベースが120mmも長くて、高速域での安定性に優れているんです」と話すのはオーナーの大沢さん。さらに言えば、3台所有するZ32の全てがツインターボ仕様なのだとか。
祖父が自動車整備工場を営んでいた影響もあり、物心ついた時からクルマ好きだったという大沢さん。免許を取得してすぐにサバンナRX-3を手に入れて以来、240Zやソアラ、スープラ、そしてR32GT-Rまで様々な走り系のクルマを乗り継いできた。
「昔はゼロヨンや湾岸が盛り上がっていましたから、色々なクルマをイジリ倒しました。Z32はかれこれ7〜8台乗ったかな。やっぱりスポーツカーといったらZ。サーキットでの速さで言えばGT-Rの方が上なのかもしれないけど、電子デバイスの支配下にあり誰でもタイムが出るのが好みじゃないんですよね。古い人間だからアナログな感覚が好きというか、やっぱりクルマは自分でコントロールしたいんですよ」と続ける。
Z32ライフにどっぷり浸かる大沢さんが、30年乗り続けているパールホワイトの前期型。パッと見はノーマル風にも見えるが、実は細部まで手が入ったフルチューンだ。「シンプルなデザインのエアロを選んだり、純正交換タイプのインタークーラーにするなど、さり気ないカスタマイズを意識しています」と言う。
エンジン本体はバランス取りや重量合わせなどをキッチリした上で、ニスモタービン改をドッキング。フルコンのLINKで制御し、最大ブースト圧1.2キロ時に約500psを発揮する仕様…だったが現在はタービンブロー中。その修理も兼ねてニューエンジンを製作している。3.1L化やGTIII-RSタービンの導入を検討しているが、600ps以内に抑える予定とか。
Defiの追加メーターがズラリと並んだコクピットが、ただ者ならぬ雰囲気。快適性も重視し、エアコンもリフレッシュ済み。真夏でもばっちり冷える。
絶対的な容量不足というZ32の純正ブレーキは、ブレンボキャリパー導入によりしっかり対策。ホイールはリム付きが欲しくて選んだ、ワークエモーションT7R 2Pの18インチだ。
スティレンのリヤバンパーから覗くのは、左右出しのヴェイルサイド製マフラー。アルティメイトのリヤウイングもセットする。
同じホワイトでも、こちらの個体はR35GT-Rエゴイストに純正採用されたアルティメイトオパールホワイト。見る角度により色が変化する色気のあるカラーだ。チューンドらしい仕上がりをみせるこの中期型は、10年ほど前に仲間から譲り受けたものなのだとか。
元々、調子を崩していたこともあり、機関系のフルリメイクに着手。1号機のエンジン製作で培ったノウハウを注入しつつ、ヘッド周りを改良。同じニスモタービン改のツインターボ仕様ながら、ブースト圧を1.4キロまで高め、最高出力は550㎰をマークする。
「あまりパワーを追求しても活かせる場所はないし、エンジンの発熱量も増えてしまいます。エアコンも効いて快適にクルージングできる仕様にするなら500〜600㎰くらいがちょうど良いと思っています」と大沢さん。
エンジン制御はF-CON Vプロ3.3が担当。以前は3.1だったのをバージョンアップした。アクセルをガバッと踏み込んだ瞬間の反応など、LINKと比べて初めて分かるフィーリングの良さがあるという。
こちらもヴェイルサイドのマフラーをセット。排気効率の良さはもちろん、ジェントルながら重低音が効いた独特のサウンドもお気に入り。
ブレーキは友人から譲り受けたというアルコン4ポットに、324φローターを組み合わせる。18インチホイールは当時物のボルクレーシングGr.Cを履く。
サイトウロ-ルケージの7点式ロールケージをセット。1号機はクロモリ製だが、こちらはスチール製と敢えて違う材質を選ぶ。エアコン完動状態としているのも、1号機と同じ。
エンジン製作まで自分でこなす敏腕プライベーターのSAWAさん。秘密の倉庫には純正パーツなどを豊富にストック。今となっては貴重なアイテムも数多く揃えられていた。
「15年くらい前、水溜まりに入ってウォーターハンマーでエンジンを壊してしまい、もう降りようかと思いましたが、乗り続けなきゃダメだと仲間が修復に協力してくれました。そのZ32が1号機です。思いが詰まっているだけに愛着もひと一倍ですね」。
一時はZ32だけで5台以上を所有していたという大沢さん。様々な車種を乗り継いできた彼を満たせるマシンは、Z32以外無かったわけだ。