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コンディションの良い個体を探すのはもはや困難!
リフレッシュ前提の“妥協的”中古車選びが正解か
RX-7に憧れるクルマ好きは多いだろう。ピュアスポーツらしい流麗なフォルム、唯一無二のロータリーエンジン、優れたコーナリング性能など、その魅力は一言では言い表すことは出来ない。しかし一方で、壊れやすいなどといったマイナスイメージを持つ人も少なくない。
「確かにそういったイメージを持たれている人は多いですが、きちんとメンテナンスや対策を施してやれば、別段トラブルが多いクルマではないですよ」と、語るのはロータリーチューンの老舗“パンスピード”の佐藤工場長だ。
同氏いわく、中古でFD3Sを探す場合は、中期の4型がベストだという。5型以降の後期はコンディションの割に高額なものが多く、逆に3型以前の前期は程度の悪いものが多い、というのがその理由。加えて、ECUも4型から16ビットになり、テールランプも後期同様の丸型になるなど、性能や外見においてもお買い得感が高い。
「中古車の“程度”や“走行距離”に、あまり惑わされない方が良いです。ロータリーの場合、その辺はアテにならないので。あらかじめ、リフレッシュの予算も考えておきたいですね。総予算が400万円なら、車両代を300万円に抑えて100万円はリフレッシュに回す…というイメージです」と続ける。
リフレッシュポイントは挙げればキリがないが、ここでは機関系を中心に話を進める。最優先はやはり心臓部だ。13B-REWは、オイルやプラグのメンテ頻度などで状態が大きく変わる。佐藤工場長の言葉を借りるなら、“ロータリーは弱いのではなく、デリケートなエンジン”なのである。
パンスピードでは、コンプレッション測定とセンサーチェックの他、目視による点検でトラブルを早期に発見できる“愛車診断”をメニュー化している。中古車購入後に一度チェックしてもらって、コンディションを把握しておくと良いだろう。
コンプレッションは、7.5以下がエンジンオーバーホールの目安。パンスピードでは独自の精密オーバーホールも展開しており、新品インナーパーツに加えてシール類まで含んで驚異の33万5500円(ハウジングやローター等を再利用する場合/エンジン脱着込み:46万2000円)を実現しているので、万が一の際も安心だ。
ちなみに、FD3Sは吸気温度が上がりやすく、対策せずにパワーチューンを進めるとノッキングを誘発してエンジンに深刻なダメージを与えてしまう恐れがある。そのため、パンスピードでは早い段階から大容量インタークーラーの導入を推奨している。
足回りでは、サスアームが注意ポイント。とくにリヤのアッパーアーム、トーコントロールリンク、ロワアームは純正でピロが使われており、劣化してくるとガタが出て異音を生む。走行中に後ろからゴトゴト音が聞こえたら危険信号だ。
パンスピードでは、サスアーム全てのブッシュを独自のウレタンブッシュで打ち替える独自のメニューを開発。これは足回りの脱着からブッシュの打ち替え、アームのサンドブラスト処理、アライメントまで全て含めたもので、価格は27万5000円という設定だ。
効果は絶大で、ピロのようにボディに振動が伝わりにくいため快適性も高く、ゴムブッシュよりもヨレが少ないのであらゆるシチュエーションでしっかりとした接地感が生まれる。
同様にサスペンションがヘタっていたのでは、走りを存分に楽しむことはできない。そこでパンスピードは「一般ユーザーがストリートで本当に良いと感じる足」を求め、レーシングドライバー木下みつひろ氏監修の元、完全オリジナルの車高調を2019年に作り上げた。
スプリングはベステックスで、レートは前後標準16キロ(撮影時、フロントは試験的にスウィフトを採用していた)と硬めだが「ダンパーオイルって種類やグレードが沢山あるんですけど、ウチは本当に良いもの(高い)を使って、バルブ形状も木下さんと相談しながら拘った。このレートでも不快な突き上げ感はないですよ」とのこと。
一方、ボディに関しては「プロじゃない限りボディの状態を判断することは難しいですが、ストラットタワー周辺やドア開口部に不自然な修復跡がないかを確認してみてください。修復歴は気にせず、どこをどう直したかの方が重要です」とのこと。
また、近年増えてきているのが、燃料タンク内に点付けされた仕切板の溶接部分が剥がれてしまうトラブル。満タン時には聞こえないが、ガソリン量が少なくなった時にカタカタと異音が聞こえたら疑うべき箇所だ。そのまま放置していると、最悪の場合フューエルポンプを壊してしまったり、ホースを切断する恐れもあるそうだ。
「その他、雨漏りや各モーターの劣化、ドアノブの固着など色々ありますが、それらは割とお金をかけずに直せます。でも、燃料タンクなどは面倒ですからね。あ、 ヒーターコアのパンクも面倒なトラブルの一つです」。
佐藤工場長が指摘するヒーターコアは、樹脂タンクがカシメで固定されているため、経年劣化等でクラックが入っているケースも多い。ダッシュボード裏に設置されているため状態把握は難しいが、室内からクーラントの匂いがする場合は要注意。パンクすると、助手席に熱いクーラントが飛び散るという最悪の事態に陥ることになる。
「補修部品も今ならまだほとんどの物が手に入りますし、もちろんチューニングパーツも豊富です。だから“ボディさえしっかりしていれば何とかなる”と割り切って中古車を選んだ方が良いかも知れませんね」と、話を締めくくる佐藤工場長。
程度でベース車両を探すよりも、“それなりの個体”を購入して、パンスピードのようなショップと二人三脚でコツコツとリフレッシュしていくスタイルが、現代の正しいFD3Sとの付き合い方なのかもしれない。
●取材協力:パンスピード 埼玉県蓮田市関山2-7-8 TEL:048-764-2040
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