目次
かつてカスタムカーフリーク達を熱狂させた「VIP杉村セルジデント(JG50)」の登場だ。今回紹介するのは東京オートサロン2011年バージョン。センターハンドル化&水槽搭載で、世間を騒がせた伝説の仕様である。(OPTION誌2011年4月号より抜粋)
生粋のレース屋まで開発に加わった究極系ショーカー
センターハンドルに水槽…構造は意外とシンプル!?
2004年の東京オートサロンで初登場して以来、尾林ファクトリーのブースに毎年展示されているクルマが“VIP杉村セルジデント/日音競”。
そのカスタムっぷりは圧倒的で、跳ね上げ式のガルウイングや宇宙船のようなコクピット、そして室内やトランクに鎮座する水槽など、もはやクルマという枠組みでは推し量れない芸術品となっている。“究極のショーカー”の細部を見ていこう。
ド派手なインテリアはMDF(中密度繊維板)という素材で製作。加工面が非常になめらかになるところがポイントだ。ステアリングはMOMO製をブッタ切って、宇宙戦艦風にアレンジしたそうだ。
ちなみに、コクピットのセンター化はカローラ・アクシオなどのGTマシン製作を手がける“apr”の手によるもので「できるかどうか半信半疑だったのですが、あっさりOKしてくれましたね」とはオーナーの杉村さん。恐ろしい事に、生粋のレース屋がメイキングを手がけているのである。
そのままシートを中央に持ってくるとセンタートンネルの上に座ることになり、普通の体格だと頭が当たってしまう。そこで、センタートンネルの上部を削り、さらにミッションの搭載位置を下げることで着座スペースを確保している。
ミッションはオートマで、アクセルとブレーキのペダルはノーマル同様の位置関係で配置。その2つのペダルの間からステアリングシャフトを伸ばしている。意外にもバルクヘッドのエンジンルーム側は無加工で、パワステ機構やブレーキシリンダーの位置は変わらない。
座席の左右に整然と配置されたアンプは、全てアルパイン製PDX。トランクにも2機装着されており、こちらは同じアルパインのF♯1ステータス。計8機のアンプのおかげで、どんなに大きな音を出しても音割れはありえない。シートはレーシングカート用を加工してインストールしている。
ウインカーやヘッドライトなどの灯火類や、ガルウイングのポップアップスイッチは本来サンバイザーがある位置に集約。よく見ると“Jump!”や“Jet engine”などが含まれているが、残念ながら数合わせのフェイクとのこと。
シフトゲートはイチから作り直してステアリング脇に移植。その隣にはACCスイッチとイグニッション、そしてエンジンスターターがメカニカルに並ぶ。このクルマに、エンジンキーは存在しない。
究極のインパクトを求めて、運転席の背後には厚さ3cmの大型水槽を設置。内部にエアレーションを仕込んでいるが、水位を水平に保たないと泡が綺麗に吹き出さないため、ボルドワールドの4輪独立エアサスで車高を緻密にコントロールしている。
トランク内にも水槽が…。その奥にはアンプとコンデンサーが確認できるが、もちろん水没しているのではなく、オーディオシステムの上にアクリルの仕切りを設け、そこに薄型の水槽を設置しているのだ。
リヤトランクの水槽の右端には水を入れるためのバルブがある。反対側にも同じようなバルブが存在し、こちらは水を入れる際に空気を抜くための穴となっている。
エアレーション用のコンプレッサーは別体式でかなり大型。イベント時には上手くクルマの下に隠しているという。
「センターハンドルも水槽も、実はそれほど深い意味はないんですよ(笑)。でも、それがショーカーの真髄。こういうクルマは、作り手がどれだけバカになれるかって部分が重要だと思います」。そんな杉村さんのコメントに、セルジデントの全てが集約されているように思えた。
●取材協力:尾林ファクトリー東京都青梅市今井3-2-6 TEL:0428-78-2652
【関連リンク】
尾林ファクトリー
http://obayashi-f.jp/