「RX-7以外のアンフィニ!?」カペラC2とファミリアにも存在した激レアモデルを乗り比べ!

マツダは全車種でアンフィニの展開を目論んでいた!?

カペラC2は300台、ファミリアは1000台の限定モデル

アンフィニと言えば真っ先にRX-7が思い付くが、マニア目線で考えるとそれよりも先に取り上げなければならない車種がある。そう、GDES型カペラC2とBG8P型ファミリアセダンの“アンフィニ”である。それぞれを改めて見ていこう。

カペラC2アンフィニを徹底チェック!

先に登場したのは、ハンドリング性能を究極的に突き詰めた300台限定のカペラC2アンフィニで1988年6月発売。

搭載エンジンは型式こそC2GT-Xのそれと同じ2.0L直4のFEだが、全域でのパワー&トルクアップのため圧縮比を高めると同時にハイオクガソリン仕様に変更。最高出力で10ps、最大トルクで1.3kgmを上乗せした150ps/18.8kgmを発揮する。

さらに、最高出力の発生回転数を高めながら(6000→6500rpm)、最大トルクの発生回転数は低下(5000→4500rpm)。扱いやすく、しかも速いエンジンに仕上げられているのだ。

ブラック基調でスポーティ感を演出したインテリア。ホーンボタンにアンフィニマークが入ったMOMOコブラIIステアリングやシフトノブ&ブーツはアンフィニ専用品。さらに、ステアリングとシフトノブには共通の本革を使うことで、同じ感触を得られるようにしてるのがマツダの拘りだ。

メーターパネルには、スピードメーターと7000rpmからレッドゾーンが始まるタコメーターを中心に、右側に水温計が、左側に燃料計が配置される。

無段階リクライニング機構を持つバケットタイプの前席。チルトステアリングを合わせてベストなドライビングポジションを取れる。表皮は後席やドアトリムを含め、アンフィニ専用ファブリックが採用される。

大人2名が乗れるスペースを確保した後席は背もたれが60:40分割可倒式でトランクスルー機能を持つ。また、左右トリムはアームレスト形状とされている。

アンフィニの真骨頂と言えるのがシャシーチューニング。究極のハンドリングを実現するため、「フロントグリップの強化」「ロールの低減」「リニアな応答性と安定感の両立」に力が注がれた。

そこで、車高15mmダウンを実現した専用ダンパーとスプリングの採用に加え、フロントクロスメンバー/リヤパフォーマンスロッド&ストラットタワーバーの追加、フロントロワアームおよびリヤトレーリングブッシュの硬度アップ、リヤホイールベアリングのサイズアップなど、手を加えた箇所は多岐に渡る。

内装と同じく、外装もブラック基調でまとめられる。専用フロントグリルは輸出モデルと共通。バンパーやウインドウモール、サイドモールに至るまでフルブラック化が図られ、精悍なルックスを演出する。

アンフィニでは、標準モデルだとメッキモールが使われるリヤコンビネーションランプ周りもブラックアウト。リヤ周りの印象は大きく変わる。カタログにはそれに関する記述がなく、オーナーからの口コミ情報だ。

ホイールは純正装着されたBBS製15インチ鍛造。センターキャップにはアンフィニマークが入る。当時の標準装着タイヤはハイグリップの代名詞的存在だったポテンザRE71で、サイズは195/60R15。取材車両には205/60R15サイズのアドバンネオバが組み合わされていた。

さらに、カペラC2アンフィニは、トランクオープナーや間欠ワイパーの時間調整機能などを省き、ドアトリムも薄型に交換することで、ベース車GT-Xに対して10kgの軽量化を達成。エンジンパワーの向上と併せてパワーウエイトレシオが8.1kg/psから7.5kg/psに低下し、0-100km/h加速ではコンマ5秒もの短縮を実現している。

そんなカペラC2アンフィニから試乗。オーナーは、実は165ps仕様のFE-ZE型エンジンに換装したカペラC2サーキット仕様も所有する、GDカペラの超絶マニアだ。

まず驚いたのは30年も前のクルマなのにボディがしっかりしていてステアリングの剛性感があり、わずかな操作にも忠実なハンドリングを見せてくれたこと。「ダンパーが抜け気味なので標準車と大差ないと思いますけど」とオーナーは謙遜するが、もし年式や走行距離が近い標準車に乗ったとしても、ハンドリングがこれほど正確だとは到底思えない。

ダンピングがしっかりしていて、不快なピッチングや必要以上のロールを抑えた張りのある乗り心地も同様。これで劣化しているなら、新車時の完成度はどれほどだったのか? 気になって仕方なかった。

エンジンは中速域のトルクが厚く、アクセルペダルを踏む右足に力を込めると豪快に吹け上がっていく。5000rpmを超えたところで可変吸気システムが高速側に切り替わりサウンドが変化。タコメーターの針は動きを鈍らせることなく7000rpmに到達した。

■SPECIFICATIONS
車両型式:GDES
全長×全幅×全高:4450×1690×1345mm
ホイールベース:2515mm
トレッド(F/R):1455/1465mm
車両重量:1130kg
エンジン型式:FR
エンジン形式:直4DOHC
ボア×ストローク:φ86.0×86.0mm
排気量:1998cc 圧縮比:10.0:1
最高出力:150ps/6500rpm
最大トルク:18.8kgm/4500rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式(FR):ストラット
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ(FR):195/60R15

ファミリアセダンアンフィニを徹底チェック!

一方のファミリアセダンアンフィニは、マツダ創立70周年記念限定車シリーズとして、1990年2月に限定1000台という触れ込みで登場。

BGファミリアで1.8LのBP型NAエンジンを搭載するのはアンフィニだけ。カタログモデルにも1.8Lモデルはあったが、それはGT-XやGT-A、GT-Rなどの4WD車でターボエンジンだった。

NAのBP型エンジンが選ばれた理由は、吹け上がりや伸び、音質といったドライバーの完成に直結する、パワーユニットとしての洗練度を重視したから。そのため、5500rpmでインマニ長を切り替えて充填効率を高めるVICSを始めとしたデバイスが採用される。

ダッシュボード周りでアンフィニ専用となるのはGDカペラ同様、本革巻き3本スポークのモモコブラIIステアリングとブーツまで本革を採用したシフトノブ。ホーンボタンにアンフィニマークが入るのも同じだ。

スピードメーターとタコメーターはGDカペラよりも目盛りが粗く、見た目にスッキリした印象。洗練度重視で搭載されたBP型エンジンだけど、7250rpmから始まるレッドゾーンが、その素性を物語るというもの。

前席はサイドサポート、ニーサポートともに張り出したバケットタイプを装着。後席と合わせてシート生地にはアンフィニ専用のエクセーヌが採用される。感触がよく、ハードな走行でも身体が滑らないのがメリット。

後席はヘッドレスト一体型のハイバックタイプで、60:40分割による前倒しでトランクスルーも使える。

足回りチューニングで目指したのは、「ニュートラルステアに近い弱アンダーのセッティング」と「乗り心地まで含めたクルマ全体の洗練度のグレードアップ」という2点。

フロントクロスメンバーにリヤパフォーマンスロッド、前後ストラットタワーバーなどでシャシー&ボディ剛性を高め、微低速域の減衰力がリニアに立ち上がる低圧ガス封入式ダンパーを採用。バンプストッパーもラバー製からウレタン製に変更される。また、ギヤ比を17→15.5としたクイックレシオのステアリングギヤボックスも装備。

外装では、ヘッドライトが3ドアハッチバック用に交換され、それに合わせてボンネットとフロントグリルも専用品を装着するのがアンフィニの特徴。専用ボディ色ジェイドグリーンメタリックやリヤスポイラーを含め、外観上の特徴になっている。

GDカペラと同じく、BBS製15インチ鍛造アルミホイールを標準装備。当時、組み合わされたタイヤは、アンフィニへのマッチングを図って専用設計されたトランピオだった。取材車両には、標準同サイズとなる195/50R15のファルケンジークスZE912が装着されていた。

マフラーはリヤビューにスポーティさをプラスするフィニッシャー付きのデュアルテールタイプ。サイレンサーにチューニングを施すことで、耳に心地良いエキゾーストサウンドを作り出している。

試乗してみると、カペラC2より車重が100kg軽いことで全ての動きが機敏。足回りセッティングの方向性はカペラC2アンフィニと同じで、大雑把に言えばドイツ車的だ。直進時はピタリと路面に張り付くような安定感を見せながら、ステアリング操作に対してはレスポンス良くクルマが向きを変えてくれる。

エンジンの印象は豪快というよりも軽快で、車重1030kgに対してパワーも十分。排気量は小さいが、これなら直線加速でも、2.0LのカペラC2アンフィニと互角に勝負できそうだ。

以前、マツダ車の開発に深く携わっていた某氏から、「当時のマツダ車すべてにアンフィニモデルを用意する計画があった」と言う話を聞いたことがある。

結局、それは実現しなかったわけだが、カペラC2とファミリアセダン、RX-7の3車種だけでもカタチになってオーナーの手元に渡ったことは、創業100年を超えたマツダの歴史の中で、間違いなく大きな功績のひとつに数えられると思う。

■SPECIFICATIONS
車両型式:BG8P
全長×全幅×全高:4250×1675×1375mm
ホイールベース:2500mm
トレッド(F/R):1430/1435mm
車両重量:1030kg
エンジン型式:BP
エンジン形式:直4DOHC
ボア×ストローク:φ83.0×85.0mm
排気量:1839cc 圧縮比:9.0:1
最高出力:135ps/7000rpm
最大トルク:16.0kgm/4500rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式(FR):ストラット
ブレーキ(FR):ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(FR):195/50R15

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