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よく回るエンジンと800kg台前半の車重、独特なポジションを築いたオープンカー!
3分割ハードトノカバーの秀逸な完成度
舘ひろしを起用した初代のシブ系路線から一転、軽いノリの『カルタス、千里走る。』というキャッチコピーで、当時大人気のシンガーソングライター、大江千里がCMに出ていた2代目カルタス。1988年9月に発売、1992年2月にコンバーチブルが追加された。
エンジンは1.3L直4のG13B型。SOHCながら吸気2、排気2の4バルブヘッドを持つ。カムカバーに入った“16valve”の文字が誇らしげだ。燃料供給はシングルポイントインジェクションが担当する。エンジン特性は低速域で扱いやすいのはもちろん、中高回転域でのパワー感や伸びも気持ち良く、カタログスペックからは読み取れない楽しさがある。
1992年といえば、世の中的にはまだバブル景気の余韻に浸っていた頃だから、おそらくスズキにも勢いがあったのだろう。ゆえに、コンパクトな2人乗りのオープンカーにどれだけ需要があるのか? それを確実に読み誤ってしまったことは否めない。
ともあれ、世に放たれたカルタスコンバーチブル。ユーザー層を極めて限定してしまう2シーターでの展開に加え、ボディカラーは取材車両のサンジェルマンレッドとトリトンブルーメタリックの2色のみ!というのもなかなかの強気。その辺、シティカブリオレでは全12色を揃えていたホンダとは大違いだ。
そんな強気な姿勢とバブル景気崩壊という時代的背景が大きく関係し、カルタスコンバーチブルは発売わずか2年後の1994年に生産中止となってしまう。考えてみれば、当時もそれ以降も実車を見かけた記憶なし。それくらい売れなかったクルマだから、取材車両を探すのには凄まじく苦労した。
東海地方に梅雨明け宣言が出て夏本番となった翌日、灼熱の岐阜県(各務原)でカルタスコンバーチブルとご対面。第一印象は「ボディが小さい!」だったが、全長3.7m、全幅1.6mと知って納得した。
見た記憶がないためイメージもできなかったが、いざ実車を前にするとカルタスコンバーチブルはオープン状態がカッコ良い。その一番の理由はトノカバーの盛り上がりが小さく、リヤが伸びやかに見えるから。それには2シーターと割り切ったことが大きく関係しているのだろう。これがもし後席がある4シーターだったら、ソフトトップ後端=トノカバーが後ろに追いやられ、結果的にキャビン部が長く、リヤが寸詰まるため、こういうスタイルには絶対ならないのだ。
曲面が多用されたダッシュボードのデザイン。バブル期の設計で素材の質感も高いので、コンパクトカーにありがちなチープな印象は受けない。メーターは、スピード&タコメーターを中心として右に水温計、左手には燃料計が並ぶ。タコメーターのレッドゾーンは6500rpmからだ。
センターコンソールは上からエアコン吹き出し口、エアコン操作パネル、2DINオーディオスペース、シガーライター&灰皿が並ぶ。ちなみに、SCVT車はエアコンが標準装備だが、5速MT車ではオプション設定だった。
取材車両は、CVTに対して信頼性や耐久性の面で大きなアドバンテージを持つ5速MT。ギヤ比は1速から3.416、1.894、1.280、0.914、0.757で、ファイナル比は4.105。
別体式ヘッドレストを持つ前席。快適な座り心地で、見た目以上にサポート性も良い。また、オープン時に不意に雨が降っても良いように、シート表皮には水を弾く撥水加工が施されている。
前席後方には小型スーツケースを置いておけるくらいのスペースがある。また、リヤボードにはスピーカーが内蔵され、その下はトランクスルーとして機能する。2人乗りと割り切れば、実用面で不満が出ることはなさそうだ。
ソフトトップ固定用のロックは通常左右2ヵ所に設けられているが、カルタスは中央の1ヵ所だけ。右のボタンを押しながらレバーを手前に引けば、簡単にロックが外れる。
ソフトトップを格納した状態。左右のハードトノカバーが前方を軸にして、内側に回転しているのが分かるだろうか?
その後、左右のカバーを戻してセンターカバーを被せればオープン状態が完成する。ハードトノカバーはホックで留めるなどのわずらわしさがなく、見た目にも美しいのが素晴らしい。
ソフトトップを閉めた状態。2人乗りでキャビンが小さいからリヤクォータースクリーンが存在せず、その分、横からの眺めはスッキリしている。
運転席に収まって試乗に出る。走り出してより強く実感するのはクルマの小ささだ。G13B型エンジンはカタログスペックこそ大したことはないが、オープンボディでありながら830kgに抑えられた車重によって走りは軽快。3000rpm付近までは少し線の細さを感じながらも、それ以上の回転域ではタコメーターの針の上昇に合わせてパワーも付いてくる。
また、シングルカムにも関わらず中高回転域で元気が良いのも特徴的。正直、エンジンには期待してなかったので、良い意味で裏切られたし、そんなフィーリングだからこそ5速MTで走るのが楽しいのだ。
そしてハンドリング。絶対的に車重が軽いことに加え、足回りはスポーティグレードGTiと同じように前後スタビライザーや60扁平タイヤなどを装備しながら、コンバーチブル専用にチューニング。快適な乗り心地と、ペースを上げて走った時の安定感…そのバランスが抜群に良い!
やっと見つけて取材&試乗が叶ったカルタスコンバーチブル。こんなにも楽しくて魅力的なクルマだということを、初めて知った。
■SPECIFICATIONS
車両型式:AK34S
全長×全幅×全高:3745×1590×1340mm
ホイールベース:2265mm
トレッド(F/R):1365/1340mm
車両重量:830kg
エンジン型式:G13B
エンジン形式:直4SOHC
ボア×ストローク:φ74.0×75.5mm
排気量:1298cc 圧縮比:9.5:1
最高出力:82ps/6500rpm
最大トルク:10.6kgm/4000rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式:FRストラット
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ドラム
タイヤサイズ:FR175/60R14
TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)
●取材協力:スパジーノ 岐阜県各務原市上戸町3-384 TEL:058-371-7287
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