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ディレチャレ2連覇を達成した美しきシルビア
ラジアル最速を目指すナンバー付きサーキットスペシャル
ホンダ車チューンのオーソリティとしても名を轟かす“トップフューエル”。高度なパワーチューンのノウハウが要求されるドラッグレースでの活躍はもちろん、近年ではチューニングカー初の鈴鹿サーキット2分切りをはじめ、各地の国際サーキットでFR最速タイムを叩き出したS2000RRの話題も記憶に新しいだろう。
ここで紹介するシルビアは、そんなトップフューエルが製作した1台だ。車種こそオーソドックスではあるが、その作り込みは非常に手が込んでいて興味深いもの。それもそのはず、オーナーはS2000RRの担当メカニックも務める中川さんで、この車両はミニサーキット最速を目指し、持てる技術やノウハウ、アイディアを投入。それだけでなく、休日はほぼ返上して車両の製作やサーキットでの走り込みに費やすなど、情熱を注いで仕上げたものだ。
エンジンは、HKSの2.2Lキットをスリーブ入りブロックで組み上げ、純正形状(ポン付け)EXマニに装着できるボルグワーナーのEFR6758タービンをセット。このタービンはセンターカートリッジがアルミ製で軽量、またハウジングに組み込まれたブローオフバルブや軽量なガンマチタンのブレードの効果も高く、ブースト圧の立ち上がりが非常に良いそうだ。ちなみに、コンパクトなタービンながら489ps/61.7kgmを実測するほどの風量を持っている。
サスペンションには、アームズの車高調をセット。その理由は…と中川メカに尋ねたところ、サーキットで一緒になった時に、その走りを見て「この足はイケる」と感じたからだという。アーム類によるジオメトリーの調整やスタビによるロール剛性の強化もしているが、ベースとなる車高調の性能は大きなウエイトを占めているのは言うまでもない。
また、ブレーキはフロントにF50用ブレンボ、リヤにBNR34用ブレンボを使用するが、バランサーを使ってバランスを大きくリヤに振っている。リヤがロックせず、ブレーキパッドが前後同じバランスで減っていくような配分だ。
ホイールはボルクレーシングのTE37RT。10.5JにディレッツァZIIスタースペック(295/30-18)を前後通しで装着する。タイヤ幅はそのままコーナリングフォースに繋がる大切な要素だ。大径化によって重量増が伴うが、軽量なTE37RTがその重量増を最低限に抑えてくれるわけだ。
サイドバーまで装備した14点式ロールケージに囲まれたコクピットは意外とシンプルな構成だが、ドライビングポジションはトコトン追求している。ミッションは6速、ファイナルはコースによって4.1と4.3ファイナルと使い分けているそうだ。
ボディ補強のメインは、ロールケージとリベット補強によるもの。スポット増しの方が重量面で有利だが、ボディに熱を入れると錆の原因となることが嫌でリベット補強を選択したという。
外観はヴェルテックスのエッジフルキットでワイドボディ化。これはもちろん幅広のタイヤを投入するための選択だ。また、ルーフはFRP製、ウインドウはアクリル製に変更するなど軽量化を進め、車重は約1050kgというからナンバー付きのシルビアとしては究極に近い。
大型のウイングはさらに効率良く聞かせるため後方にオフセットしたマウント。フロントバンパー下面にも前方に貼り出したオリジナルのアンダーボードを装備している。
ちなみに、カラーリングに関しては知人のカスタムペイントショップにお任せして仕上げてもらったものだというが、ルーフのダイアモンドクロス柄はもちろん、キャンディを中心にボディのレッド系は濃淡のある3色で塗り分け、ダクト周辺にはアクセントとしてシャドウが入れられるなど相当手が込んでいる。
そうしてプロのメカニックとして妥協無いメイキングを重ねた結果、2013年、2014年と、超ハイレベルなディレッツァチャレンジ全国大会で2連覇を達成。最強シルビアとしてその名を轟かせたのである。
中川メカに言わせると、個人車両ゆえに予算や費やせる時間の限界があるが、その中で最大の成果を挙げられるマシンに仕上げたつもりとのこと。これらの経験や情熱は、トップフューエルの今後のチャレンジや、ユーザーカー製作に確実にフィードバックされるものになることだろう。
●取材協力:トップフューエル 三重県松阪市中道町500-1 TEL:0598-56-5880
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