車体番号3桁の超初期モデル!
「当時、中古車価格が500万円前後だったBMW M3(E30)やポルシェ944も検討しましたけど、“速い4WD”に乗りたくて16年ぶりに復活したGT-Rを新車で購入しました」というオーナー。ナンバー管轄エリアの納車第一号として、発売月の1989年8月にはすでに走り始めていた。
ノーマルで乗ると決めた1年が過ぎる頃、雑誌でオーテックツカダの存在を知り、初めて訪問。排気系と純正ECUチューンを施し、パワーチェックも行なった。これがオーナーにとって今へと続くBNR32チューンの第一歩となったのだ。
しかし3年後、雨が降る高速道路でクラッシュ。ホワイトボディで作り直すことも考えたが、ダメージを受けたのはリヤ周りだけだったため、元のボディを修復することにした。
クラッシュからの復活後、チューニングは徐々に加速。エンジンは現在3基目で、最初は2.6L+ニスモタービンのATTKD Vプロエアフロレス仕様だった。
その後10数万kmを走り、オーバーホールのタイミングで載せ換えられたのがオーテックツカダのデモカー用スペアエンジン。コスワース製鍛造ピストンで排気量を2.7Lに拡大し、オリジナル超レスポンスタービンを組んでいたが、高速道路を走行中にエンジンブロー。そこで新たに製作した2.8L+GT-SSツイン仕様が今のエンジンになる。ピークパワーよりも、低中速域のトルク特性とアクセル操作に対する鋭いピックアップを優先するのが、オーテックツカダのポリシーだ。
「お客さんのクルマは550psから、出しても600ps。ウチのデモカー(BNR34)だって650~700psだからね。サーキット仕様としては控え目なパワーでしょ?」と塚田さんは言う。
トランクルームに装着された燃料コレクタータンク。流量確保のためにリターンパイプも送り側として使い、余剰分はレギュレーターで逃がす。「BNR34に比べてパイプ径が細く、セッティングを詰めるとポン付けタービンでも燃料が不足する。だから、この方式に改めたわけ」と塚田さん。ポンプはニスモ製とボッシュ製の2基、インジェクターは600ccを使用。
排気系は、タービンアウトレットからマフラーまでATTKD美響チタンで統一。冷却フィンを持つ前期型用デフカバーはクラックが入ってしまったため後期型用に交換し、放熱効果の向上を狙ってヒートシンクを追加する。LSDはATS製カーボンを装着。リヤロワアームはニスモ製に交換される。スーパーHICASはキャンセル済み。
足回りはサーキット走行も見据え、オリジナル車高調を軸にアーム類やブッシュ類も交換した仙脚サスペンションシステムのフルキット仕様。ブレーキはフロント6ポット、リヤ4ポットキャリパーと大径ローターを組み合わせたエンドレス製キットで強化される。また、パッドは富士スピードウェイに合わせたATTKDオリジナル“136”を装着。
ホイールはエンケイGTC01RRの18インチ。10Jオフセット+22で、265/35サイズのミシュランパイロットスポーツ4Sが組み合わされる。サイドミラーはガナドール製、リヤリップスポイラーはハセミスポーツ製を装着する。
また、以前は1年を通して乗っていたが、最近は錆の原因となる融雪剤の影響を避けるため、11月から4月一杯は“冬眠”に入る。それでもサーキット走行を含めコンスタントに年間数千kmを走り、オドメーターには24万kmが刻まれる。
オーナーいわく、「フェンダーは錆で何度か交換してます。ゴムや樹脂パーツ類は純正品をかなりストックしているので今のところ問題ありませんが、今後のことを考えると、シリンダーブロックとアテーサ系の部品供給に不安が残りますね」。
BCNR33後期型のパールホワイトに心が揺れ、BNR34にも食指が動きかけたが、乗り替えるまでには至らなかった。20代で乗り始め、還暦近くなったオーナーにとって、BNR32こそが最高の相棒なのだ。
●取材協力:オーテックツカダ 長野県長野市大豆島5862-1 TEL:026-221-3086
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