「B110サニーを愛し続ける男の数奇な人生」釣りのプロから直線番長に変身!?

トップチューナーに変態と言われるB110マニア

A型エンジンの可能性を独自理論で徹底追求!

今回紹介するのは、ドラッグレース系チューナー“ブラックライン”鈴木代表をして「30年以上の付き合いになる先輩なんだけど、良い意味で究極の変態プライベーター。プロ顔負けの知識量だし、とにかく凝り性なのよ」と言わしめる、B110型サニー乗りの中村さんだ。

技術を学ぼうと地方の自動車専門学校に通い、卒業後は日産ディーラーに就職。その時点ですでに3台のB310サニーを乗り継いでおり、働く理由も「サニーのため」だったという筋金入りだ。ブラックライン鈴木代表と出会ったのもその頃で、仲間たちと夜な夜なストリートゼロヨンスポットに出向いてはバトルを繰り広げていたそう。

普通に考えれば、そのまま楽しいチューニングカーライフを満喫…となるのだろうが、中村さんは違った。何を血迷ったか、ある日突然バスフィッシングの世界に没入。何事も頂点を極めなくては満足できない性格だったため、勢いのままにクルマを降り、仕事まで変えてしまったのである。

「とにかくですね、バスフィッシングを極めて頂点に立てば、卒業して再びサニーに戻れると思ったんですよ…!?」。

思考回路が凡人とは少々異なる気もするが、中村さんの言葉に嘘偽りは一切なかった。本当に頂点まで登り詰めたのだ。

「国内で21人しか出られない大会で優勝しました。自分以外はガチのプロ。あ、僕も周囲からプロって呼ばれたりしてましたけど、普通に仕事は続けていましたし、卒業してサニーに戻る日を楽しみにしてましたし…」。

そして、釣り関係のスポンサーが付いてプロとして食っていけるレベルに達した瞬間、予定通りバスフィッシングを引退。道具も全て手放し、再びB110サニーを購入したのである。あまりに突然の幕引きだったため、釣り界隈では「あの人どこに消えたの!?」と話題になったそうだ。

以降はサニーのチューニングに徹底注力。もちろん、中村さんの“あの”性格はジャンルが変わっても貫かれ、2011年に仙台ハイランドで行われたクラス分け無しの200mドラッグトーナメントで見事準優勝。その後も着実に戦果を挙げ続け、ドラッグレースの世界ではちょっとした有名人になっている。

ちなみに一時体重が100kgを超えていたそうだが、サニー&ドラッグレースのために40kg以上のダイエットを敢行。「おかげで100分の2秒くらい速くなった(笑)」と中村さんは笑う。

現在の相棒は、サニー/A型エンジンの中では珍しいインジェクションのフルチューン仕様。視認はできないが、ブラックラインにオーダーしたピストンと超際どいハイカムが自慢とのこと。シェイブドベイ&ワイヤータックで仕上げられたエンジンベイも見事だ。制御はF-CON Vプロで、セッティングももちろん自分で行っている。

ヘッドは水穴を埋めて、ポート位置を上部ギリギリまでオフセット。また、動弁系(とくにロッカーアーム周り)はワンオフパーツのオンパレードとなっており、セット長やステムトップ、コッターなどは中村さんが考えた位置にセットアップ済みだ。

スロットル径は50φ。インジェクション化する場合、L型やA型はデスビ位置にブラケットを製作してクランク角センサーを取り付ける事が多いが、この車両はフロントカバーをワンオフし、カムシャフト先端に半月のシャフトを取り付けられるように加工。フロントで信号を取っている。

ベースボディは1972年式だが、一切の劣化を感じさせないミントコンディションの室内。120φのシフトランプ付きオートメーターがドラッグ仕様を物語る。ミッションはAE86のシンクロ付き5速を流用している。

ホイールはRSワタナベのエイトスポークで、ブレーキにはウィルウッドのシステムを投入。「先輩の拘りでドラッグ用の太いタイヤやシーケンシャルを使わないんだよね」とは、ブラックライン鈴木代表。

物置小屋には、A型のシリンダーブロックがずらり…。恐らく一生部分のストックがあるとのこと。その他は防犯上の理由で非公開。

シリンダーヘッドは様々な形状をテストしながら理想を追求。中村さんが手に持っているのは、貴重な日産スポーツオプションヘッド。バルブが落ちて燃焼室を破壊してしまったが、修理して使いたいと思っているそうだ。

何事にも全力で挑戦し、遊びを楽しみ尽くす。「サニーをイジるために生きているようなものですね。素材メーカーの営業職なんですけど、自動車メーカーの方々から技術論とか聞けて勉強になるんです」。このオーナーの言葉に心から敬服したい。

●取材協力:ブラックライン 埼玉県川越市下広谷690-1 TEL:049-239-6667

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【関連リンク】
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http://www.blackline-racing.com

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