「驚異的な美しさを放つマニア保有のCR-Xを捕獲!」進めたのはチューニングではなく純正への復旧作業!?

キミは本当のコンパクトハッチを知ってるか!

FFスポーツを切り開いた偉大なる先駆者

スペース効率の追求と構成パーツを減らすことによるコストダウンという両面から、各メーカーがFFという駆動方式をこぞって採用することになった1980年代。とくに、限られたボディサイズの中で最大限の居住空間やラゲッジスペースを確保したい効率重視のコンパクトカーは、軒並みFF化の格好のターゲットとなった。

そんな中、1983年に登場したのが初代バラードスポーツCR-X。当初1.3L/1.5LSOHCエンジンでの展開で、車重わずか760~800kg。軽さの秘密は外装に使われる樹脂製パーツにあり、前後バンパーはポリプロピレン製、フロントフェンダーやドアパネルにはABS樹脂とポリカーボネートを主とした複合材が採用される。

また、ホイールベースは2200mmと短く、トルクステアやタックインなどFF車特有の癖は見られたが、従来のFF車では望めなかった高いコーナリング性能を披露。FFライトウエイトスポーツというジャンルの第一人者となったのだ。

翌年1.6L・DOHCのZC型を載せる真打ちSiが登場。取材車両は、ヘッドライトがセミリトラから固定式に改められた1985年式の後期型Siだ。車重増加は避けられなかったものの、それでも890kgに留まる。

それまでの1.3L・キャブ仕様EV型(80ps&11.3kgm)、1.5L・PGM-FI仕様EW型(110ps&13.8kgm)に対し、Siに搭載されたZC型はDOHC化が図られていた。ボア×ストロークは75.0φ×90.0mm。カタログスペックは130ps&15.5kgmだ。なお、取材車両はカムカバーをオリジナルに忠実な色で再塗装している。

「バラードスポーツCR-Xやワンダーシビックには中学生の頃から憧れていました。個人売買での出物を見付け、購入したのが10年前です。イベントなど、ここぞという時にしか乗らないので、10年で1万kmくらいしか走ってませんね」とオーナーの伊藤さんが言う。

購入してから伊藤さんが行なったのはノーマルへの復旧作業がメインだ。ステアリングホイールやマフラーを純正品に戻し、樹脂製ゆえの劣化を見せていたフロントフェンダーやサイドステップも修復された。

ホイールは当時の無限製CF48に交換されているが、伊藤さんいわく、「純正アルミホイールも持ってます」とのこと。また、足回りは前オーナーによってKYBニューSRダンパーにダウンサスが組まれているが、それ以外はオリジナル状態を保っている。

ダッシュボードは手前を一段低くすることで前席に開放感をプラス。メインメーターは右から燃料計、スピード、タコメーター、水温計となる。タコメーターは8000rpmフルスケールで7000rpmからがレッドゾーン。メータークラスター左側に設けられたエアコン操作パネルが独特だ。

前席は大きなサイドサポートを持つスポーツシートを装着。着座位置が低く、足を前に投げ出すポジションはスポーツカーのそれだ。

一方、1マイルシートと呼ばれた後席はあくまでも緊急用。背もたれを前倒しすることでラゲッジスペースを拡大できる。

「時々エンジンが掛からなくなるので燃料ポンプのリレー不良を疑ってます。年式を考えると電装系はやり直したいですね。他にも、ボディのあちこちからキシミ音が出てたりしますけど、ずっと憧れていたクルマなので、どんなことでも我慢できます」と、にこやかに話す伊藤さん。

国産車初と言える本格的FFスポーツカーの魅力は、登場から40年が経つ今だからこそ、さらに輝きを増すのだ。

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