「86＆BRZでレースを戦うプロショップの教え」先代モデルのウィークポイントとメンテナンスを徹底解説！

公開日 2024/06/12
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著者 weboption

メンテ次第でZN6＆ZC6はまだまだ戦える！

高精度のエンジン＆ミッションオーバーホールも見どころ

「S耐に参戦する理由は、メカニックの育成が目的。過酷なレースを通じてメカニックの技術を高め、お客様のメンテナンスに活かすために参戦を決めました」と熱く語るのは、“HMR”の石川代表。

HMRは、ユードドカー販売ショップでありながら、チューニング&メンテナンスにも精通する実力派チューナーだ。近年では歴代86&BRZに力を注いでおり、ベース車両の長所や弱点を探るために選んだステージがスーパー耐久レースだったというわけだ。

今回はそんなHMRのS耐シリーズ参戦車両（ZN6）をサンプルに、ウィークポイントを見ていく。S耐は改造範囲が限られているため、エンジン本体はノーマルをキープ。HKS製EXマニ＆純正交換タイプエアクリーナー/オートファクトリー製マフラー/ARC製オイルクーラー/テイン製スーパーレーシング車高調などを備える。

まず、最初にウィークポイントとして挙げられるのがスパークプラグとイグニッションコイル。使用状況にもよるが、早ければ7万km、平均的に10万km前後で劣化によるパワーダウンが発生。レースでは1戦ごとに交換しているそうで、症状が出ていなくても早めの交換を推奨している。

ガソリンを噴射するインジェクターも経年劣化が起こりやすく、エンジンのバラつきや加速不良といった症状が出る。また、サーキット走行などで酷使した車両は、シールが劣化しガソリン漏れの原因にもなる。シール交換だけであれば費用も安価なので早めの対策を心掛けたい。

走行距離が10万kmを超える個体の場合、フロントのタイロッドやロワアーム、アームとナックルを接続しているジョイントブーツは要チェックポイント。その他、ロワアームのボールジョイントにもガタが出やすいので、セットでの交換をお勧めしている。

デフマウントブッシュは液封式で、劣化するとオイル漏れを起こす。足回りや駆動系のメンテをするなら同時交換しておきたい。HMRでは、デフマウントの他、エンジン＆トランスミッションマウント交換をセットにしたメニューも用意している。

さらに、HMRではエンジン＆ミッションのオーバーホールメニューを新たにスタート。作業は、S耐車両のメンテナンスを行なっている自社レースメカが担当する。

エンジンオーバーホールで交換する部品は、ワンオフヘッドガスケット、ピストンリング、親/子メタル、シール＆パッキン一式、油脂類が基本メニュー。ピストン、コンロッド、カム、バルブ類は再利用。これが基本プラン（脱着工賃込み55万円〜）だ。「S耐スペック」では、オプションとしてエンジン内部のバリ取りやバランス取り等のメニューを追加できる。

オーバーホール時には、ヘッド面研も実施。面研の量に合わせて0.48mm／0.6mm／0.75mmという3種のHMR製ヘッドガスケットを使い分ける。純正や一般的なアフター品が、86φのボアに対して86.3φと大きくなっているが、HMR製は高回転域でのデトネーションを抑えるため、ボアと同寸としている。

エンジンオーバーホールメニューの「S耐スペック」では、レース車両と同様にクランクプーリー装着状態でのダイナミックバランスも実施。これにより、ノーマルとは別次元の回転フィールを実現するのだ。

一方、ミッションオーバーホール（脱着工賃込み29万7000円〜）では、1～6速の各ギヤシンクロ、ベアリング、オイルシールを交換。メインシャフト（アウトプットシャフト）とカウンターシャフト、ミッションケースは問題が無ければ再利用となる。

S耐マシンでは、3-4速クラッチハブのギヤが欠けたり、3-4速のメインシャフトとカウンターシャフトギヤが破損するトラブルも経験。ハードに走るのであれば3-4速を中心にギヤ、シンクロ、クラッチハブなどへWPCやDLC加工を施すプランも用意されている。

シフトガイドブッシュやレリーズベアリング等もトラブル箇所として挙げられる。レリーズベアリングなどはクラッチ交換とセットで行ないたい。その他、GRからリリースされている強化4速ギヤを組み込むプランなども用意されている。

「弊社ではS耐参戦での経験を活かし、より楽しく安心して走れる86／BRZのメンテナンス＆リフレッシュを提案しています。チューニングも楽しいですが、まずはノーマル+αで走ってもらうことをお勧めしています。またS耐参戦については、2シーズンに渡ってZN6で戦ってきましたが、来シーズンはGR86を投入予定なのでお楽しみに！」とはHMRの邑松メカ。