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パンデムのキットで究極のワイド&ローフォルムを実現
ハンドメイドで完成させた370馬力のV8仕様!
クルマ趣味のカタチは人それぞれ。何台ものクルマを乗り継ぐ人もいれば、1台のクルマを所有し続ける人もいる。
カリフォルニア州サンディエゴに住むアルフレード・フェリックスは、後者の部類に入るカーガイだ。自宅のガレージで何でもやってしまうプライベート・ビルダーで、愛車のホンダS2000を自らの手でイジり倒している。
エクステリアは、パンデムのフロントバンパー、M&Mホンダのワイドフェンダー、ASMのリヤバンパーとジャパンブランドをフュージョン。フロントバンパーとフロントフェンダーを合わせるカスタムワークも取り入れている。
ジュエルアイを内蔵するヘッドライトはアルフレードの自作。リヤにはStreet Functionのシャーシマウントウイング、Viva Garageのダックビルトランクフードを装備する。
ペイントや内装のカスタマイズなどはプロの手を借りるが、溶接やボディの切開など作業のほとんどを自分でこなすアルフレード。愛車のS2000に施した最初の大手術は、なんと左ハンドルから右ハンドルへのコンバージョンだった。
「日本から右ハンドル仕様のフロントクリップ(ダッシュボードなども含めた車体の前方部分)を輸入して、必要な部品を手に入れてから移植していったんだ。なぜそんなことしたかって? う〜ん、それがカリフォルニアで合法的に右ハンドルに乗る、ほとんど唯一の方法だったからかな」と、こともなげに言うアルフレード。
人と違ったことをしたくて行動に移した人に対しては“Why?”という問いかけは、いつだって愚問になってしまう。
右ハンドル化は日本仕様のダッシュボードを使って実施。当初のダッシュボードは黒だったが、後に赤内装へと変更された。ステアリングは環状ストリートレーサーのNo Good Racingオリジナル商品、シフトノブはVMS Racing製を使用。NRGのチルト式ショートハブも備わる。
レカロSP-Gのカラーも赤で統一し、ドアトリムやアームレスト、純正ハードトップのルーフライナーはSOS Customzによってダイヤモンドステッチが施されている。
右ハンへのコンバージョンが完了した後も、アルフレードのビルダー魂は加速。ホイールのリバレルやワイドボディ化を行ったかと思えば、F20C型直4エンジンにはComptech製スーパーチャージャーをインストールするなど、次々とカスタマイズを実行。
ボディ色も元の黒から一度はレッドにオールペンし、現在はBMWのサファイアメタリックブラックで再び黒へとリペイント。目にする度に仕様が変化するので、地元のクルマ仲間も驚きを隠せないという。
まるでフェイズ1、フェイズ2といった感じで、目まぐるしい変化を遂げてきたアルフレードのS2000。極めつけとなる大きなステップが、LS1型V8エンジンへのモータースワップだった。
「ある日、スーパーチャージャーを載せたF20Cがブローしちゃったんだ。また同じ費用で同じパワーを出すなら、V8に載せ換えた方が手っ取り早かったんだよね」と、これまたサラリと説明するアルフレード。F20Cを降ろしてV8を積む作業も、もちろん自らの手で行った。
V8スワップが定番化しているアメリカでは、便利なスワップキットが商品化されていることが多い。アルフレードは、エンジンやステアリングラックを固定するマウント類がセットになったImport Muscle製スワップキットを活用した。トランスミッションはTremec製のT56をチョイス。
エンジンルームを覗くと、アルフレード自身の手で右ハンドルへとコンバージョンされているため、ブレーキのマスターバッグとマスターシリンダーも右側に移設されていることが分かる。
インテークとEXマニ、エキゾーストパイプはカスタムメイドを採用し、エンジンの取り付けスペースを確保できるSchmuck Builtのタックドラジエターも装備する。GMの純正ECUをチューニングすることでパワーは370ps、トルクは52.5kgmを実現している。
一方のサスペンションは、Air Lift Performanceのエアサスを搭載し、同社の3Pマネージメントを使用。ライドハイトとスラムドスタイルを自在にコントロールすることができる。
ホイールは、17インチのワークVS-XXをカスタムメイドのステップリムを使って18インチへとリバレル。パウダーコートを使用してディスクはマットブラック、リムはグロスブラックで塗り分け、超絶な深リムをアピールする。ブレーキはR1コンセプトの鍛造キャリパーを使用したビッグブレーキキットを組む。
地元カリフォルニアのカーショーでは、常連かつアワードゲッターとして名を馳せるアルフレードのS2000。2018年にはアメリカ最大のカスタムカーショーであるSEMAにも参加し、大きな話題となった。
「自分にとってクルマは趣味のひとつ。仕事にしようとは思わないけど、SEMAに出ることができたのは素晴らしい経験になったよ」と当時の喜びを語るアルフレード。今後もマイペースでクルマ作りを楽しんでいくに違いない。
PHOTO:Akio HIRANO/TEXT:Hideo KOBAYASHI
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